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256の世界とメビウスのロジック  作者: YK from エル
第二章 メビウス計画
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hack 4

同日深夜――。


 「って、そりゃ、流石に中二と言うか、酔狂になりすぎ、

逆に胡散臭くないか?」

 「人に任せたのはそっちだろう? 創作性のない奴に言われたくないね」


都内のある居酒屋にて、青年同士が話している。


 「それに、ああ言うのは僕の趣味なんだよ。 なんか悪の

組織の黒幕の気分ってかさ」

 「黒幕の気分ねぇ。 それじゃ俺はコキ使われる下っ端って所か」

 「どっちかと言うと、君からはサイコ的な狂気を感じるけどね。 

あ、すいません、生もう一杯お願いします」


通りかかった店員に追加注文をする。


 「しっかし、大丈夫かねぇ、姉貴」

 「切羽詰ってるってか、このごろ、容赦ないって言うか」

 「あいつが居なくなってから、もう何ヶ月になるん……だ? 

ま、無理もないわな」


 「最後の連絡が確か……三ヶ月前、そこからだよ、

姉貴の様子が変わったのは」

 「まあ、あの人は前々から何を考えているのか分からない、

ちょっと不気味な所あったからな。 今回の計画にしたってそうだ」


 「青木は、自分の恋人が消息不明になったらどうする?」

 「さぁね。 とっとと次の女、探すんじゃね? 

最も俺は今ん所は姉貴オンリーだけど」


 ※


翌朝、寧音は学校へ登校しても心は上の空。 

昨日のメールにの件についてばかり、考えていた。 

一晩眠れば忘れられる、などと甘ったるい荒らし――

もとい、内容ではない。


 『――君の病を治す方法を知っている』


それが本当なら、どんなに楽な人生を送れるだろう。

そもそもどうやって、自分の病について知ったのだ? 


過去に掛かった医者が治療方法を見つけてくれたのだろうか? 

いや、それだったらもっと直接的に伝えてくれても良いじゃないか。


宇宙企業に勤める人間は地球上の生物の情報を、

一つも漏らすことなく、全て覗く事が出来るのだろうか。 


だとしたら、宇宙――いや、この空は巨大な目だ。 


この空の下で生きている限り、個人は監視され、

プライバシーは無いにも等しい。


 「おっはよう、岩瀬さん」

 「あ、お、おはよう……」


友達との境界が曖昧なクラスメイト――

桐ヶ谷奈々きりがやななかが寧音の机まで挨拶しにくる。


曖昧とは、つい先日、ある話の内容に対してうまがあったからで、

寧音は基本的に学校では一人でいる。 


何時も携帯を弄り、近づき難い雰囲気を醸しているから

誰も相手にしないのだ。 つまり孤立していた。


寧音はそんな自分で作り出した空間を都合良く思っている。

リアルで友達や誰かと馴れ合うのは趣味じゃない。


 「ねね、頼んであれ、持ってきてくれた?」

 「……あれ?」


寧音は首を傾げると、奈々果は言った。


 「もう! あれよ、マニュコンの新譜、

コピーしてくれるって言ったじゃんさ」


そう言われて思い出した。


マニュコン――通称、マニュアル・コンプレックス。


文字に起こすと、説明不足マニュアル・コンプレックスと書くらしい。

最近、活躍が目立っているインディーズ系のロックバンドだ。 


女性のベースとキーボードが一人ずつ、

男性のギターとギターボーカルが一人ずつの四人バンド。


動画サイトにアップされた曲が評価され、

しかもその彼らの出身がこの学校の部活から誕生したことから、

今では学園内でマニュコン現象が起きている。


「あ……ごめん、忘れてた……」


昨日はそれ所ではなかった。 

完全に記憶から抜け落ちていた。


 「もー! まあ、そんな様子じゃあんまり期待してなかったけどさ」

 「ごめん、明日には必ず……」

 「うん、ま、何時でも良いよ、岩瀬さんの暇な時で。 まだ前作の

アルバム、全然聴き飽きてないし、カラオケの練習もまだまだだから」


屈託ない笑顔で奈々果は言った。


マニュコンは、数ヶ月に一回のペースでアルバムを出している。

それもライブハウス限定販売で。 


小さな会場なので、ライブのチケットもすぐに売り切れ、

オークションやチケット販売店でも高騰している。


寧音は最近、明里からそのチケットを譲り受け、

一ヶ月ほど前にライブを見に行った。 


普段なら、興味もなくスルーして自宅でネットをしていたい所だが、

せっかくなので試しに行ってみたら、その演奏に思わず、

ファンになってしまった。


何処のレコード会社にも付属せず、CDは一般的に流通しない。 

その時のライブ会場限定販売なので、

これもまたオークションなどで転売価格で値段が付いたりもしている。


このご時勢、余裕でネット上に流出などもしているから、

探せば簡単に手に入るのだが、そこら辺、奈々果は疎いらしく、

CDのコピーを健全に寧音に頼み込んできた訳だ。


勿論、寧音は過去4作品をネットで違法ダウンロードした。


5枚目は流石にライブ会場で購入した。 

全12曲、フルアルバムで500円はかなり安い。


 「それより、何か悩み事でもあるの?」

 「え、ああ、大丈夫……」

 「なんか顔色悪いみたいだけど。 ネットのやりすぎなんじゃない?」

 「そうかも。 少し寝る……」


寧音はそう残して机に伏せ、会話を打ち切った。


 1stアルバム―― 『0と1』 全9曲

 2ndアルバム―― 『プロトコル』 全11曲

 3rdアルバム―― 『データベース』 全10曲

 4thアルバム―― 『シリアルナンバー』 全7曲

 最新作5thアルバム―― 『インターフェース』 全12曲


これらがマニュコンの出した作品集だ。

どれもメッセージ的な歌詞ではなく、英詩曲も多い為、

何を歌っているのか意味は分からないが、曲の方は兎に角、

最高の一言に尽きる。


寧音は最新のアルバム 『インターフェース』 をMP3からではなく、

直接、CD-ROMにコピーした。 


これを明日、奈々果に渡せば彼女とのコミュニケーションも終了だろう。


それより、相変わらず頭を悩ませている例のメールの問題。


 『君の病を治す方法を知っている――』


この言葉ばかりが、頭の中で一日中堂々巡りしている。 


医師の線でなければ、家族の仕業? 

一体、何がどうして、誰か得する事でもあるのか?

こんな周りくどい事をせず、直接教えてくれるのが自然だ。

考えるだけ分からなくなる。


『管理者』とは、一体、何物なんだ――?


その日、寧音は考えすぎた頭が重くなり、ブログの更新を中止した。


翌朝――


寧音は学校で、奈々果にマニュコンの最新アルバム 『インターフェース』を焼いたCDを渡して約束を達成した。


 「ありがとう、何かあったらまたよろしくね」 


の一言を残されて、コミュニティは終了。


存外呆気ないものだ。 

恐らくこれ以降、彼女と関わる事もないだろう。 

また一人でネット依存に浸れる、ぼっちの学園生活が戻ってくる。


授業が始まる前に一度、ブログを更新しよう。 

昨日は普段より早めに眠ってしまい更新出来なかった。

くららのブログも久しぶりに更新されていたので、

コメントを残しておく。


あの日以来、『管理者』を名乗る人物からのメールもなく、

寧音は精神状態こそ未だ安定しないが、日常生活には支障もなく

普通な生活を送れていた。


ネットに浸れば浸るほど、深く考えないで済む。 

大抵の憂鬱は忘れてしまえる。

これが今の自分の日常なのだと言い聞かせ携帯のボタンを打ち続けた。


数日後――。 

今日は日曜で学校が休み。

明里は今日も帰宅していない。

父が揃い、家族同士の会話もなく、淡々とした朝食。


明里はもう二週間以上帰宅していない。 

両親も流石に呆れているらしく、もうあれこれ言わなくなった。 

まあ、明里が居て、一緒に食事をした所で家族の絆が深まる訳じゃない。


思い出せばそろそろ 『管理者』 が言うスマトラ島沖での地震が

発生する頃ではないだろうか。 


後遺症の件ばかりに気を取られ、今日まですっかり忘れていたが、

テレビでは何時もながらのくだらない事件が勢揃いした

ワイドショーが放送されている。


やっぱりただの悪趣味な悪戯だったんだ。 

日に日に精神も安定して、今日は何となく調子が良い。 


寧音は元から表情を表に出すタイプではないので、

他人からは分かりづらいが、

無口で根暗でメンヘラな女にも調子の良い日はある。


昼頃までくららとチャットをした。 

自称家事手伝い兼自宅警備員は、時間を持て余していたらしく、

三時間ぐらい語り合った。 

昼には出かけると言ってお開きになった。


夕方までネットに依存して、今日のブログ更新回数は15回を超えた。

ひたすらネットをして時間の感覚を忘れる。


一日中モニターと向かい合って、そろそろ眼精疲労も高まって来た。

一休みしようとベッドに横になろうとした所で――。


今日、昼過ぎ、六回目に更新したブログに、

悪意を感じるコメントが付けられていた。


マニュコンに関する記事に対して、アンチの書き込みだ。

これと言って炎上を招くような発言はしていないはずだが、

名無しの彼にはどうやら不快感を与えてしまったらしい。


寧音はただ新譜の歌詞について、自分なりの解釈を述べただけなのに。


≪ミーハー乙、お前は何も分かっていない。 

そもそも英語が分からないのに適当に翻訳してんじゃねえよ。 

馬鹿なの? 耳腐ってんの?≫


こうした、訳の分からない文句を付けてくる連中は何処にだっている。 

自分の主張が絶対的に正しい、自分の価値観こそ世界の全て、

そう考えて疑わない愚かな人間たち。


そんな思考を持つ人間は一人残らず消えれば良い――とさえ思えてくる。


ネット上だからと言って、匿名に頼っても今の時代、

IPアドレスを割り出せば、相手の住所ぐらい簡単に分かる。


簡単に相手のIPをチェックすると、大阪からの書き込みらしい。


相手にするだけ無駄。 

下手に相手して炎上を起こしても、後始末が面倒なので無視しよう。


寧音は自分の部屋に土足で上がられたような不快感を持ちつつ、

そのままベッドに横になり、

意識を無にして、眠りについた――。


 ※


現地時間 20時56分――。


緊急ニュース速報。


スマトラ島沖で、マグニチュード9.0を観測する地震が発生。 

被害の情報はまだ入っていませんが、津波警報が発令され、

住人たちは――。


チャンネルを変える。

今から凡そ十年前にも起きた、マグニチュード9.1を記録した地震の――。


チャンネルを変える。

――専門家の阿部教授にお話をお伺いしました。

今回の地震は何が原因なのでしょうか――


チャンネルを戻す。

この頻繁する地震活動。

今、地球上では何が起きているのでしょうか――?


 ※

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