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256の世界とメビウスのロジック  作者: YK from エル
第十一章 シスターコンプレックス
31/32

hack 31(終)


メビウス計画なるものは失敗に終わった。 

以下の資料が今回のテロのまとめである。


獣数ページに渡って纏められた警察内部の資料。


目次1―― 『岩瀬寧音について』


岩瀬寧音――現在、都内の総合病院にて入院。

生死を彷徨い、集中治療室にて懸命な治療が行われているが、

昏睡状態からの回復は難しいのでは、と医師の判断――

以下略。


目次2―― 『岩瀬明里について』


○○大学に通う二年生。 犯罪経歴なし。

本件のテロの主犯の一人。 都市部の停電後、自ら出頭。

現在、取り調べ中――。

以下略。


目次3―― 「靑木圭輔について』


○○大学に通う二年生。

本件のテロの主犯の一人。 過去に傷害罪の経歴あり。

岩瀬明里から居場所を聞き出すも、現在は逃走中――。

以下略。


目次4―― 『兵藤貴光について』


○○大学に通う二年生。

本件のテロの主犯の一人。 犯罪経歴なし。

主にハッキングを担当。 信号機トラブル、鉄道衝突、大停電、

インフラ系統の侵入、及び不正操作。

都内の雑居ビルにて、ヘリコプターの墜落と同時に死亡を確認。

以下略。


目次5―― 『都市部、インフラ系統のテロに関して』


別途記載。 以下略。


目次6―― 『メビウス計画について』


今後も岩瀬明里から慎重に事情聴取。

以下略。



岩瀬明里は停電の復旧後、自分の犯した罪の重さに耐えかねて、

自ら警察へと出向いた。

何より、自分の腕の中で冷たくなる岩瀬寧音の命を早く助けたかった。


寧音さえ助かれば、自分の事はどうでもいい。

もう判断も決断も必要なく行動した。


現在は刑務所で、事情聴取を受けながら、

弁護士と会話し、刑が下るのを待つ日々。


恐らく終身刑だろう。 

弁護士も最善を尽くすと言っているが、テロリストに対する

社会的な目は冷たい。 希望は持たない方がいい。


もう、自分は元の日常に戻る事は一生出来ないのだと。


何度も同じ質問を受けるが、青木に関する情報は何も知らない。 

明里は青木のことも洗いざらい喋った。 

今現在、捜索中で近々同じく逮捕されるだろう――と思う。


兵藤に至っては、墜落したヘリコプターの巻き添えを食らい、

数日前まで身元不明の遺体として扱われていた。


彼がこのような自体に巻き込まれなければ――。

恐らく結末は変わった。

現実は無慈悲に容赦なく、想定外の事例を引き起こす。


置き場のない悲しみは、真夜中の独房で涙に変わる。


一部、今回の件に関わったマニュアル・コンプレックスの

メンバーである、彼女については黙秘した。 

彼女はサークルとは全く関係がない人物だ。

警察側も彼女の存在に気付いていないようだし、余計な事を

喋り、彼女まで巻き込みたくはない。


なお、これは後から聞いた話によるものだが、アンプを壊したあの日、

怪我を負ったギタリストの一人は、もう鼓膜の再生は難しいと医師に言われ、

聴力を完全に失ったらしい。


もし、この旨を警察に尋ねられたら、その時は素直に自白しよう。

自分の刑期を伸ばしてでも、此方は自分が責任を取る必要がある。


どうしてこうなった? そんな問いに意味はない。

なんでこんなことした? 私自身も取り憑かれていた。


今となっては、どんな問いにも意味がない。


ただ、東京を舞台に舞台にした物語が、失敗して終わっただけ。


死滅した街――今の東京はまさにその言葉が相応しかった。


地震さえ起きていないのに、死者や負傷者の数は2000を超えている――。


ただ、お姉ちゃんを助けたかった。

分かる? 妹である私が妹より先に成長して、

お姉ちゃんと呼ばれる度に、胸の奥が苦しくなる気持ちが。


ただ、彼氏の夢を叶えたかった。

叶うはずのない夢物語。 分かっていたけれど、

そこに取り憑かれていたのはむしろ自分なのかもしれない。

欲張りすぎてバチでも当たったのかな。


考えても意味がない。


そう言えば、と思い出す。


 「寧音の側にあった袋……あれ、精神安定剤よね……」


寧音に飲ませたあれはただのラムネ。 

もっと早くに気付いて、精神安定剤を飲ませていたら、

寧音の症状は軽くなったのだろうか。


悔やんでも仕方が無い。

そう、仕方が無い。

頭を働かせる度、苛まれる後悔と罪悪感とその他諸々の

行き場のない感情。


明里はふと、マニュアル・コンプレックスの曲のフレーズが

頭の中を過ぎった。


 『インターフェース』

全ての統一にして、唯一の存在。


ロジカ/ライズ――


もし、彼女が面会に来てくれたのなら、次のアルバムのタイトルは

それにしてもらおうかしら。


なんて冗談。


独房の中に閉じ籠もっているだけなのに今日はもう疲れた。


そんな頭に浮かんだメロディーを静かに鼻歌で奏でながら、今、病院で

眠っている寧音への思いを馳せて、目を閉じる。


インターネットを教えたのは――明里。


インターネットに依存したのは――寧音。


寧音に――お姉ちゃんに依存していた――私。


明日もまた朝は早い――。

だけど寧音に朝は来ない。


何時か、会いに行く事は出来るだろうか。

お互いに、ネットワークから隔絶され、世界からも隔離した

この冷たい施設内。


何時か、目を覚まし会いに来てくれるだろうか。

こんな自分を許してくれるだろうか。

何を話せば良いのだろう。


また、真夜中の泣き声が聞こえる。


自分の物か、それとも何処かの独房からか。


響く泣き声が子守歌に丁度良い。

こんな哀れな末路が自分には相応しい気がして、

明里の目は閉じられた。


十一章 シスターコンプレックス

完結

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