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256の世界とメビウスのロジック  作者: YK from エル
第九章 インフラストラクチャー
25/32

hack 25

 ※


翌朝――。


テレビのワイドショーは再び、次の話題で持ちきりだった。


テレビに映される光景は、昨日のそれを越えるほどの、

衝撃的な映像だった。


昨夜帰宅ラッシュを過ぎた23時頃――。


電車――。 

下り、上りの電車同士が衝突事故を起こし、

勢いで傾いた車両は脱線を引き起こし、二両の車両は高架線から

落下し、地面の元で黒い煙を吐き出す鉄くずとなり得ていた。


下敷きになり、潰された車が数台――。


負傷者及び、死者の数は合わせて現在確認出来る範囲で

400名を超えると、テロップに出ている――。


記者会見では昨日から続く、

インフラ系統のトラブルとの関連性に基づき、

線路変更の異常動作が行われ、事故が引き起こされた。


そしてこれらは何者かの乗っ取りにより、引き起こされたのでは、

と発表されている。


他のチャンネルでは、テロと確定付けた報道までされていた。


尚、鉄道会社及び、政府機関は、詳しい情報は未だ調査中としている。


寧音は絶句した。

これも 『管理者』 彼らの仕業だ。

停電を引き起こす――自分はそれだけを聞いていた。


幾ら何でもこんな大惨事を引き起こして良いはずがない。

こんな事まで知っていたら、協力なんてしなかった。

後遺症も何もかも、そのままの日常を送っていたかった。


普段は動かない、寧音の心も今だけは、

言葉にし難い感情へと震えていた。


早速、 『管理者』 へメールを送る。


何時もなら大体すぐ返信が届くのに、今日に限って届かない。


 「アナ、ログ、いる?」

アプリを起動する。

 「あいよ」

 「なにかご用でございましょうか」


世間の様子など微塵も知らぬ、腑の抜け切ったプログラム。


 「あなたの生みの親と連絡が付かない」

 「今のマスターは、岩瀬寧音、あなた様でございますわ」


AI如きでは話にならない。

賢いのか馬鹿なのか――。 今はその丁寧な口調も、

自分も周りを暢気に飛び回る鱗粉も、苛立ちの要素しか与えない。


パソコンの前に座り、自分のブログを確認する。

スパムのコメントが何件か付けられているだけで、

『管理者』 からの連絡は当然のようにない。


『管理者』 との最初のやり取りは自分のブログだった。 

メールの返信がないのなら、更に望みは薄いかもしれないが――

寧音は自分のブログに 『管理者』 宛ての

メッセージを残し、投稿した。


次にこんな状況でも、くららのブログの確認は欠かさない。


更新されている。


 『世界は巡り巡った、その代償を支払う時が来た』

 『有から無へ』

 『宇宙にすら終わりがあり、そして再生メビウスを繰り返す』

 『幾多の犠牲の果てに、今、全ての有に制裁を』


 「くらら……?」


くららが何を書いているのか意味が分からなかった。

けれど、心の何処かでは聞き覚えのある単語。

頭が混乱して、記憶を操作出来ない。


 ※


 「実験大成功」

死滅した都市を徹夜で歩き帰って来た青木が言った。


 「お帰り、そしてお疲れ様」

 「はぁぁ、にしても疲れた。15キロ近く歩くハメに。 

やっぱ原付、使うべきだったかー? けど、それ以上に楽しかったぜ」


 「あなたのおかげで完全に、世間の目はそちらへ向いたわ」

 「ここまでやると最後の方はテロリストって意識が芽生えて、

流石に気分良かった。 またやりてぇなぁ」


そんな余裕を含んだ言葉を口にする靑木。

やはり彼の本性は異常サイコだ。

任せて正解だった。


 「それじゃ、次は私たちの番ね。 靑木くんがテロリストなら

私たちは、サイバーテロリストになるのかしら」

 「テロリスト兼サイバーテロ? こりゃハリウッドも大受けだな」


 「そうそう、俺、こいつに名前付けたんだ」


青木は思い出したように、

スマートフォンのアプリを明里に見せ付けた。


 「ロジカ……?」

 「そう、んでもって、俺らもついにテロデビューしちゃった訳ですし、

そろそろ名前が必要なんじゃないかと思いましてね」

 「名前なんてただの記号よ。 サークルで良いじゃない」

 「いやいや、名前があるからこそ、気合も入るってもんですよ」

 「……一応、訊いておくけど、どんな名前を付けたいの?」

青木は自信満々な顔をして、


 「サイバーテロリスト、アノニマス」


 「既に幾つも存在してる」

 「あはは、冗談ですよ」


こほんと、咳払いをして、青木が言い直す。


 「こいつがロジカなら、俺らはロジカライズ――」


青木は、その意味を説明する。


logicalロジカル――つまり倫理、と、analyzeアナライズ――分析、

その二つを合わせた造語。


 「ロジカライズ――あなたにはしては珍しく面白いわね」

 「本当っすか?」


明里は無表情ながら頷いた。


 「それじゃ、行きましょうか――最初で最後のハッキング。  

“ロジカライズ” 、この世界の本性を現しに――

そしてその全てを初期化する――」

九章 インフラストラクチャー

完結

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