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256の世界とメビウスのロジック  作者: YK from エル
第九章 インフラストラクチャー
24/32

hack 24

 ※


青木は次の現場を探していた。

最後のポイントはもう決めてある。 

最後はド派手に大きな祭りを起こしてやろうと思う。 


今でさえ、大量のパトカーと救急車が行き交っているのに、

その 『祭り』 を起こしたら、どうなることやら。


世間の目は――否、世界は完全に 『それ』 に釘付けになる。


そして犠牲者の中には、ネット上を荒らしまわり、

人々を傷付けている奴もいるかもしれない。 

そうした連中をまとめて屠れるとは、考えただけ興奮が収まらない。


 「早く夜にならないかなぁ」


暇つぶしにATMでも試すか? 今なら大金を下ろし放題だ。 

だが、銀行関連は追跡されやすい。 

プランにない余計な危険は避けるべきだ。 


何より金を奪っても、相手の悲鳴は聞こえないじゃないか。


いいや、悲鳴が聞きたいわけじゃない。 

けど、ネットで怯えてる連中を見るのは、最高に楽しい。 

いいぞ、もっと怯えろ。 公害レベルの基地外共が!


スマホでネットを巡回して、人々の反応を楽しんでいると、

ふと目に入るものがあった。 


ファストフード店の中でノートPCを必死でタイプしている人間がいる。


次のターゲットは決まった。


残された猶予に、ちょっとしたプレゼントを贈ろう。


どうせ、最後には何の跡形もなく全ては消え去る。


今さら、感染経路なんて関係ないだろう?


青木は、ファストフード店へと入った。 

期間限定のハンバーガーとポテト、シェイクを注文する。


表の騒ぎの影響か、店内は混雑している。


建物に突っ込んだ車もあるらしく、ここも危険なのでは、

と窓際を避ける人間が多いらしく、一部の席だけやたらと空いていた。


 「もう、車なんて突っ込んでこねえよ、アホじゃねえの」


青木はラッキーと思いつつ、窓際に座った。


ハンバーガーをかじりながら、何処にでも居る普通の青年として、

足を組んでスマートフォンを操作する。 

誰も青木を不振な目で見たり、疑ったりしない。


早速、スマホのアプリでこの店内のWi-Fiにアクセスし、

ハッキングを仕掛けた。


そして、兵藤のお手製のウィルスを流し込む。


アップロード完了まで、20分と表示される。


 「ゆっくり待ちますかね」


青木はポテトをシェイクに浸し、世紀末の光景を想像しつつ、

時間を潰した。


ウィルスのアップロードが完了した。


これで、この店内からネットにアクセスした端末は、

時限爆弾に感染する。

店を出て、ネットワークが切断されると、

自動的にハードディスクの中身や

データが破壊される仕組みになっている。 


それも感染系なのでメールやメッセージアプリを通して繋がれば

感染は次第に拡大して行く。


人から人へ。 都市から都市へ。


手の付けられないウィルスが今後24時間蔓延する。 

24時間後には、ウィルスは自動消滅する仕組みになっているのが、

少々勿体ない気もするが、これも脆弱を確かめる検証テストの一環。

仕方が無い。


2000年に大流行したウィルス―― “LOVELETTER” 

電子メールを介してその流行を広げた大きなニュースがあった。


それを開発した人間の気持ちはどんなものだったのだろう。

感染が広がっていく様を見て、何を感じたのだろう。


そうだ、こいつにはまだ名前がない。


青木は、新しいハッキングプログラムに名前をつけた。


 「お前は今日から、logicaロジカと名づけよう――」


 ※


発作は治まったが動悸は治まらない。


都市で起こった信号トラブルによる事故は

一先ず落ち着きを取り戻したらしいものの、今だあちこちで

救急車やパトカーのサイレンが響いている。 


それだけ被害の大きさを物語って聞こえた。


発作に苦しんだ間、気付けば夜になっている。


寧音は深呼吸を繰り返し、冷静を取り戻す。


『管理者』 にメールをしよう。 

これが、計画の一端なのか、確かめる必要がある。 

否、必要なんかないのは分かっている。


それでも訊ねずにはいられなかった。


 『だから警告したはずだ。 不要な外出は避けるように、と』


これは自分が起こしたことなのか、訊ねた。


 『いいや、君のせいではない。 これは此方側の計画、下準備だ』 

 『君の果たした役割は最後の最後になってようやく、

実りを咲かせるだろう』


何をどう言われてもきっとこの心は落ち着かない。


自分が加担したメビウス計画――

それが、こんな大きな事件になるとは思ってもいなかった。


自分の脳には電磁波を長時間受け続けたことによる後遺症がある。 


都市を停電させ、電子機能を全て停止させれば、

この後遺症は行き場をなくし、新しく生まれる脳細胞により、

それは完治する。


そんな内容で、乗せられた始まり。


インターネットを初期化する、それだって今良く考えてみれば、

自分すらインターネットを利用出来なくなると言うことじゃないか。


ネット依存症の自分に耐えられるのか? 

正直、自信がない。 考えただけで禁断症状が出てきそう。 


そもそもどうしてもっと、最初の時点で計画について

詳しく聞かなかった? 何時から自分の日常はおかしくなった?


思い起こせば、奈々果の流出の件の辺りから――?


そうだ――まだこの案件は解決していないじゃないか。


奈々果の個人情報流出の真相が――。


 ※


 「今日は一日、こればかりか。 

ケーブルテレビでも引っ張れればなぁ」


デスクトップの椅子の背もたれに最大限寄りかかって、兵藤が言った。


 「ま、でもこれで世間の目は完全に、そちらに向いたわ」

 「ネットの話題もこればかりで、正直つまらない」

そう言いつつも、ブラウザのスクロールを繰り返す兵藤。


 「陰謀論だってさ、くだらない」

 「あら、いいじゃない。 そう言う方面に傾いたほうが

世間の興味もますます煽れるってものよ」


明里はスマートフォンを操作しながら言う。


兵藤は、サークルの中で一番の腕を誇るハッカーだ。

ウィルスのプログラム制作、クラッキングにに至るまで、

この手の類に関して随一を誇る。


天才的なハッカーは別に存在するかもしれないが、

今現在、日本国内にここまで攻撃的なハッカーは存在しないだろう。 


 「っと、青木からメールだ」

 「実行するのね」

 「そんじゃ、僕は一足先に基地アジトに戻ろうかな」

 「ええ。 それじゃ気をつけて。 健闘を祈るわ」

 「あはは、なんか戦場に赴く兵士みたいっすね」

 「この戦いが終わったら、また此処に戻ってきて

みんなで馬鹿しましょう」


 「岩瀬、それ死亡フラグ」

 「人ではなく、世界のね」


兵藤はノートパソコンや機材、自分の手荷物をリュックに詰め始めた。


明里もいよいよ計画の最終段階へ向けて、準備を開始した――。

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