表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
256の世界とメビウスのロジック  作者: YK from エル
第七章 オフライン
18/32

hack 18

 ※


腐食した都市の弱点だ。


都市に脆弱は多くある。 

信号、ATM、自動ドア、踏切、数えたらキリがない。 

唯一、侵入不可能――と言っても、技術的や予算の問題が殆どだが、

簡単に侵入出来ない建物も存在しているには、しているが

大抵のインフラ設備にはハッキングが可能だ。


最近は無線LANの設備が増えている。

これこそ、ウィルスの種を植え付ける鉢植えみたいなものだ。


例えば、何処か駅の無線LANにハッキングを仕掛け、

ウィルスを潜り込ませる。 そこから無線LANを使用した人のパソコンは

ウィルスに感染し、拡大は止められない。


言葉で表せば簡単で、実際はそう簡単にはいかないが、

出来なくはないと言うことだ。


インターネットが使えない――。


時折、プロバイダーのメンテナンスや、ルーターなどの不調で

ネットに接続出来なくなる時がある。 


恐らく誰もが一度は経験しているはずだ。


重要なネット会議の時や、オークションの落札寸前の場面など、

もし人がそうした環境に陥った時の反応は目に見て分かる。


ただ、焦る。


なぜ、焦るのか? 


答えは簡単だ。 


目に見えない繋がり――それが既に日常と化しているからだ。


そんな日常を根本から書き換える――。


この世全ての電子ネットを初期化する――メビウス計画。


大げさで現実味がないとも思う。

誰も成功するとは言わない。


だがそれを実行出来るのは、セキュリティ認識の甘い今だけなのだ。


スーパーコンピューターも、量子コンピューターも必要としない、

手作業の計画。 スマートフォンの普及が捗る、だからこそ脆弱は

何処にでも存在する――。


メールを受信した。

タイトルはRe無題だが、書いてある内容は深刻を帯びていた。


 『ちょっと予想外のことが起きてる。 お前の妹が拉致られたぞ』


寧音が拉致された?


メールでのやり取りより、電話を掛ける。


相手は待ってました、と言わんばかりにすぐに応答した。


 「どういうこと?」

 「都市のカメラをハッキングして監視してたら、

何時かの女が寄ってきて、そのまま寧音を連れて行った」

 「場所は?」

 「今、追ってるけど、このコースじゃ都市の外に出るな」


電話越しにカチャカチャとマウスやキーボードを

操作する音が聞こえてくる。


 「都市の外?」

 「姉さんの計画が裏目に出たな」


確かにまずい事になった。 

寧音は今、携帯を持っていない。 

助けを呼ぶ手段の選択が一つ消滅する。 


寧音の身に何か起きたら、この計画は水の泡になる。


 「どうして拉致られてるのよ、あの子は?」


普段冷静で無感性な彼女は珍しく取り乱す。


 「多分あれだ、恨みでも買ったんだろう。 

元から仲も良くなったみたいだし」


前に学校で、寧音が三人グループに殴られている件があった。

あの子はまた何かやったのだろうか――?


 「あの三人の個人情報がネットで流失してる。 

多分、それに気づいての行動……いや復讐かな。 

問題はどうし寧音ちゃんがやったって気づいたのか――」

 「……まったく、余計なことを……」


余り詳しく知らないが、三人は正直、頭が優秀なタイプには見えない。 

計算や推理が得意とは到底思えなかった。 


偶然か? それとも内部に裏切り者が――。


いや、裏切り者の線は排除しよう。 

計画に携わる人間は明里を除けば2人しかいない。 

それぞれ、裏切る理由も見つからない。


 「多分あれだな」


電話の声の主が変わった。


 「寧音ちゃんの周りで不自然な流出が多すぎたんだ」

 「どういうこと?」

 「まず、始めにあの自殺しちゃった子、あれは正直、

俺らも想定外だったが、彼女は完全に寧音の仕業と思っていた」


明里は電話越しに相槌をうって続きを聞く。


 「次に、あの自殺しちゃった子の彼氏、彼の電話を

真っ白に初期化した。 まあ、これに関しては、

相手が寧音ちゃんの仕業に気づいているかは不明だが」


 「何より一番の件は、あの日、寧音ちゃんが三人に

ボコられた後に、彼女たち三人の情報が流出したことだ」


 「つまり、寧音に関わると何かしら情報が流失させられる?」


 「ネット依存が有名で孤立してるみたいだし、疑いの余地もない」


声の主が戻って言う。


 「自業自得じゃない……」


おもちゃを与えたばかりに、余計なことを……。


 「で、救出はどうする?」

 「ま、流石に殺されはしないだろう」

 「正直、もう少しデータは欲しい所だったけど、残りは

僕らでも十分可能だし、都市一つ落とすぐらいなら

頑張れば出来なくもないけど」


 「寧音を放っておくってこと?」


流石にそんな判断は出来ない。

寧音は計画に欠かせない重要な存在。

天文学的な確率で発生した後遺症と、彼の計画を叶える為の――。


それに何より寧音は自分の “妹” であり “家族” だ。 


 「助けるわ、それで場所は?」

 「だから、今調べてるけど、このまま都市の外に出たらお手上げ――」


電話に割り込む別の声。


 「でもないぞ。 三人の情報なら既にこちら側に転送されてるからな。 

そこから彼女らの携帯のIPを辿れば居場所は突き止められる」


おおそうか、と意外そうな声が聞こえた。


 「何分で出来る? 名前が分かれば3分もあれば余裕だろう

ウチのスパコンなめんな」


高スペックではあるが、別にスパコンではない。


 「人のクラスの名前なんて知らないわよ」

 「だったら調べて、また連絡してくれ」


一番手っ取り早いのは学校のデータベースにアクセスする事だが、

生憎、機材も何も揃っていない。

電話を掛け直して、大学サークル側で調べて貰う事も可能だが……


ここは役割を分担したほうが良い。


地道に手で探すしかないか。

一度、家に帰って寧音のクラス名簿を確認しよう――。


 ※


目隠しをされているので、ここが何処か分からない。 

両手を椅子の後ろに縛られ身動きも取れない。


ただ、吹き抜ける冷たい風と、反響する相手の声で大体の場所は掴める。


 「どんな気分?」

安達の声にうんざりしつつ、寧音は

 「別に」


また茶番劇に付き合わされるのかと思うとうんざりだ。 

それに今回は携帯もない。 

最悪、絶対絶命のピンチと言ったら少し過言すぎか。


 「お前の仕業だろう? 私らの個人情報流出」

 「……さあ、なんのことだか」


髪の毛を掴まれる。


 「とぼけても無駄。 分かってるんだよ。 

桐ヶ谷の個人情報を流出させて、今度は私らの個人情報を流出させた、

こんな短期間で同じ学校の人間の情報が流出なんて有り得るかよ」


 「有り得るよ」


寧音は答えてやった。


 「ウィルスって言うのは一人が感染したら、

それが相手に感染する事もある、そんなの常識でしょう?

風邪と同じ。 小学生でも分かる」


 「んなことは知ってる」

寧音の髪を掴む力が強くなる。

 「けど私らは桐ヶ谷とのやり取りなんてしていない。

アドレスすら知らない。 お前が桐ヶ谷にどんな

恨みを持っていたのか……も知らないし、興味もない。

別にそれを聞くつもりだってねえよ。 それでも岩瀬には、

私らに対する恨みなら十分持ってるはずだろ」


 「だから、私がやったと……?」


 「それ以外に考えられないっしょ」


今度は九条の声が聞こえる。 

二人居れば、三人目もきっと居るのだろう。


 「被害妄想もいい加減にしないと、病気よ」


挑発するつもりもなかったが、つい口にした。


寧音には自分に対する危機感と言うものが人より欠如している。  

こんな場面でも他人事だった。

無事に終わらせられたら、ブログの良いネタになる。


 「岩瀬さんの方が病気でしょう。 精神科通いも楽じゃないわよね」

 「差別なんて最低」

 「別に差別じゃないわ。 岩瀬さんこそ被害妄想」


結局のところ、何をしたいのか分からない。


自分は早く携帯を探しに戻りたいので、

何でもいいから早く開放してほしかった。


 「ネット依存……ネットに依存してる人間って

現実じゃ本当に何も出来ないのね。 軟弱するぎる――」


そう言って腕を嫌な方向に折られた。


 「痛いっ……」

 「軟弱だからこそ、痛みも強い。 分かる?」

 「別に軟弱だから、苦労もしてないど……」


骨を折られなかっただけましだ。 

しかし本当に痛かった。 

このまま何時ものように蹴られ、殴られ――いや、この場合はリンチか。


死なない程度に、暴行受けて、さっさとこの猿芝居を終わらせよう――。


 「お前は、今、リンチを受けると思っただろ?」

そんな寧音の心を見透かしたかのように、安達は言った。

 「お前が受けるのは、これだよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ