暗闇より深きもの
世の中には、決して近づいてはいけないモノがある。
危険地帯は勿論だが闇に浮かぶ白い光=ウィル・オ・ウィブスはその最たる物だ。
みたモノに危険を誘う邪精霊であったり危険を知らせる精霊であるとも言われるが絶対に近づいてはいけない。
どちらであっても、ソコにあるモノが異常なのだ。
ウィル・オ・ウィブスが見えたならすぐさま元の道へ引き返せ。
誰もがそれを知っている。
だが、あれはなんだ。
闇の中にのっぺりとした仮面のようなモノがユラユラと小刻みに揺れ、その後ろ蠢くは闇よりも濃い漆黒。
「「「………」」」
後方に向かって指信号で撤退の合図を出す。
ギルドの依頼で旧市街の見回りをしていた冒険者は雨音に紛れもときた道を引き返していった。
◇
「へっくし」
尻が冷たーい。
お面の中がくしゃみのせいで、ネチョッポイのはどうにかなりませんかねー?
肌寒さと寂しさでブルブルしちゃうわ。
「せめて雨やんでくれないかな。」
コツコツと頭(仮面)を膝に打ちつける。
激しさを増す雨音の中、その怪しさ故に誰も近寄らないとは思いもしない影丞はそのまま静かに眠りについた。
◇
真一とおれの二人が、市場にもどると、露天商のオッサンが協力者を集めてくれていた。本人は行かないそうだが市場の暇な若者が雨具を着て集まっていた。
「…なんでこんな大事になってるんだ?」
「知らないよ。いまの影丞可愛い系だから結構気を使ってくれてんじゃない?」
「影丞って可愛い系かぁ?」
おれは真一の言葉に首を捻る。どっかってーと、ただ残念美人みたいな感じがしてあんまり実感ないんだが…。
「美人って言うにはチッコいし?」
なるほどそれで可愛い系か、それなら可愛い系って言い方もありっちゃありだな。
「素材屋さん、そろそろいいか?」
集団のまとめ役らしい茶髪の青年、名前はマイヤーといっていた人が、胸の辺りをトントンと叩きながら此方に歩いてきた。
そのジェスチャーにどんな意味だ?地球だったら時計はめた手首をトントン指差して時間を教えるようなもんか?
「なに心配なんかいらんさ、この人数が走りだせばすぐに妹さんも見つかるさ」
―いや、走るってなんだ。
「ああ、おれ達も行くがよろしく頼む」
「わかった、妹ちゃんはオレ達に任せとけ」
やや芝居がかった口調で話したマイヤーさんは皆の元へ走る。
「妹ちゃん(ハアハア)救出作戦始めるぞー」
「「「おー」」」
マイヤーさんの号令に野太い声が答えた。
若干、妹ちゃんのニュアンスがおかしかったような気がしないでもなかったが、悪い人ではなさそうなので、そのまま連中の纏め役をお願いする。
「ロリッコは誰が見つけても恨みっこなしだからな!総員、突撃ー―――っ!!走れ走れ走れーー!!」
―――――――は?ロリッコ??