仮面がわりのカラ
差し込み追加中
市場を探すことしばらくしてオレは一つの手掛かりを手に入れた。
「二股のスカート履いた子ならウチでローブ買った後、アッチの旧市街地がある方に向かったみたいだったけど…」
旧市街地は老朽化で廃棄された地区で市場のハズレにあり、そちらでは住民がフリーマーケットを開いたり出来る。
たまに入り口からフリーマーケットが続くと曲がり角の先は迷路のように改築されているらしい。
子どもが迷い込んだりしたら大変なので入り口は此処だけしかなく中まで入り込んでしまうと大人でも迷ってしまう。
魔物なんかが迷い込んだりしないよう巡回をしているが夜は明かりもなく真っ暗になるのでもしかしたらそこに入り込んだ可能性がある。
旧市街地の家屋の内側のほとんどが土で埋められている。
雨風を凌げる軒先も少ないのですぐ見つかるだろうと話していた。
「夜は市場の役人と警備隊に声かけないと入れないからね?」
「なるほど、ありがとう。」
「暗くなっても市場は開いてるからな、次に来たときは周りに声掛けといてやるよ」
「まだ帰ってなかったらお願いします」
それだけ彼に告げて宿屋に戻ると入口で真一が待っていた。
「市場も近所も声かけてみたけどダメだったよ」
「そうか、手掛かりと言えるかわからないが真一の方で旧市街地の話は気いたか?」
「旧市街地?」
「市場の先にあって一度裏道に入り込むと迷路みたいになっててたまに子どもが迷い込んだりするらしいんだ」
「それって…」
うん、フラフラ歩く影丞だ。
そんな場所があるんならもう確定したようなもんじゃないか。
ポツポツと雨が降り始めた。
人気のない場所で雨宿りする美少女とかでっかいフラグ建立してくれたな。
影丞が男に惚れるとも思えないけど、偶然通りかかった奴と一晩だなんてシャレにならないからマジで勘弁してくれよ?
◇
「…ローブって侮れない」暗闇の中に響くのは激しさを増していく雨音だけ。
幸い羽織ったローブが飛沫まじりの風を遮断してくれるので助かっている。
本革製品って日本で着てた安物のナイロンのハーフコートとはまったく違うね。
手触りもさることながら、魔物の皮や毛は染みたり濡れたりす気配がない。
さすが冒険者装備のオールラウンダー。
―だがしかし
「…微妙に尻が濡れてます」
体育座りして気がついたらケツが濡れてた。
下に巻き込まなかったから壁から伝わった水が浸食てた。
びしょ濡れじゃないからその内乾くと思うけどちべたい。
「なんでこうなるんだろうな~」
今はローブの裾を膝裏に巻き込んでるからきっと大丈夫。
まぁ、梅雨くらいの季節だから…いや、さすがに野晒しに違い状態だと風邪引くかもしんないな。
それよりも、此処は一体何処なんだろうな?
拠点の街と同じく西洋的な街並みが続いている。けど街の中から移動はしてない筈だし誰も住んでいないような廃墟にしか見えないのはどう考えてもおかしくないかい?
たしかに、ゲーム世界の街なら確かに限られた所にしか人(NPC)が配置されてない。
普通の街だと歩く人もいないとかあり得ないんだよな。
それとも、スラム街とかみたいな場所で治安的な問題で誰も出て来ないとか?
つまり「私は悪人ではありません」とか叫べば大丈夫か?
三〇の子豚の狼みたいな事までして他人の家に入りたくないなー。
ゴウッ!
いきなりの突風が飛沫を巻き上げながら通り過ぎた。
「わぽっ!?べ…しゅなはいった…うぇぇ」
ダラーと口から唾が垂れた。
フードが捲られ剥き出しになった口ん中に砂と雨水という大自然のカクテル。
なんてもんをプレゼントしてくれたんだ。
…砂利砂利する。風吹きすさぶ砂浜でオニギリ食べさせた小学校の春の遠足を思い出す。
今考えてみるとよく下痢起こさなかったよな。
てか、砂浜で食べさせないで防波堤の上くらいで昼食にしたらよかったんじゃないですかね?
「…ぷっ、べっ、きったねぇ」
むき出しになってるのが不味かったんだろう。
唾と一緒に砂を吐き捨て口を拭うとローブの袖にも砂ついてた。
―二次災害勃発。
どうにかするにも、サラシの布と卵のカラしかないが、ホッケーマスクより穴が小さいけど呼吸はなんとか出来そうだし。
サラシの布の端をケバケバに捌いて二股のコヨリ作ってからカラの端の穴を通してに結んでみる。サラシでグルグルお面とフードに巻きつける。
上記の作業より、服の上からサラシ抜き取るの結構大変だった。
何回か爪で乳首つついて地味にいたかったい。
まっ平らならこんな痛み無かったんだろが、娘様をキョニュウにしたのが間違いだったかな…。
とりあえず、頭に巻き付けたからもう当分は大丈夫なはず…。
次回 闇の中に白い仮面が怪しく浮かび上がる