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帰らない

朝、下に行くと言ったきり影丞が戻らない。


相変わらず下着作りに夢中になっている真一はさして気にもとめていないようだが、リアル(日本)で明るい内に帰ってた影丞が戻らないのはちょっとおかしい。


「…なぁ」


「ん?帰って来るんじゃないかな」


「そうか?」


真一は、おれの言いたいことを先回りして答え小さな声で「まぁ、門限なんかきめてないしね」と真一は付け加た。手元は相変わらずチクチクと動かしている。


確かに門限は決めていない。リアルでも影丞から門限の話は聞いた試しがない。

そもそも影丞は雨が降りそうだと帰るし、雨が降っていると家から出ない。

万年引きこもりになれる奴が暗くなっても帰らない。ガタタ…


治安は悪くないと聞いてはいるが異世界の治安レベルなんか日本の繁華街より低そうだし、なんか事件とか巻き込まれたり…。

…浚われたり。


ガタタ…ダダダダダ…


物思いにふけっていると家具が揺れ始めた。


「…地震か?」


「違うよ。貧乏揺すりで家屋崩壊とか洒落にならないからやめてくんないかな?」



真一が床に散らばった裁縫道具を拾い集めている。


おれの癖(貧乏揺すり)のせいで散らばったと言いたい様なんだが流石に家屋崩壊とかあり得ないだろう。


「ピカ〇ュウ、ぴかっぴ…危なすっ!!」


不穏な空気に身をよじる。


“カカカカ”


背後の壁に数本のマチ針が突き刺さった。「地震がナマズで電気ウナギかなら電気ネズミのピカ後で言い訳とか分かりにくいからやめてくれ」


「殺す気か?!」


頭の辺りに投げられた待ち針は根元まで突き刺さっていた。


いくら何でもコレ死ぬぞ?


「まさか“刺さる”とは思わなかったんだよ」


「いやお前、物理重視で鍛えた奴が何いってんだ。

遠距離特化じゃなくてもそれだけ筋力があれば自力だけでささるだろ」


遠距離の影丞も似たような事が出来るかも知れないが、筋力がないからあたっても壁板に刺さらないかもしれない。


「腕力だけで針が刺さるとは恐れ入った」


抜けなくなった針を眺めながら真一は笑う


…ダチ殺し掛けて他人事とかお前は人間か。


「それに防御特化の健なら、こんな針なんか刺さらないよ」


「いや、頭は無理だろ」


おれが盾役で真一が遊撃影丞砲台が基本のカタチだったけど、さすがにコレは無理だろ。


頭貫通するわ。


「…冗談でも影丞にはやるなよ?」


「あはは、流石に影丞が近くにいたらやらなって、アイツ装甲紙だし試す気にもならないよ」


基本的にノーコンなんだからマジで勘弁してくれ。


「…それに、影丞が部屋にいたら針が跳弾して影丞に刺さりかねなくて怖すぐる」


「MPKとか勘弁な?」


「わかってるよ。MPKもそうだけど盗賊とか相手でも人を殺のだけは考えたくないよ。それよかフラグだけは嫌だからそうゆう話はやめてくんないかな」


「まぁそうだけどさ…」


真一が神妙な面持ちで話し出すが、とりあえずブラから手を離してから話ししてくれ。


殺人なぁ…。考えれば考えるだけこっちっの常識が無茶苦茶だ。


だいたい、冒険者ランクB以上になる為に盗賊討伐が必須だっていうだもんな。

別に討伐ってのが殺人とは限らないが言外に含まれててもおかしくない。


ただ、この町は騎士団の拠点があるおかげで近隣の街道に盗賊がいない。

Aの力があってもCで止まっているのが普通なのでCランクでほぼすべての依頼が受けられるようにしていると話していた。

ランクBになると下手な貴族よりも優遇される代わりに国家間の移動は困難になる。


監視役の騎士がサポートの名目で派遣されてるグループはいくつも存在し、派遣されたグループは戦争へ強制的に参加させられると話していた。


異世界だろうと人を殺す戦力にだけは数えられたくない。


冒険者の上に部隊の指揮官が立ち命令を聞かざるを得ないなら、ランクなんかあげないほうがいい。


「Fのまんま昇格試験なんか突っぱねて草刈りだけしてりゃいいんじゃないか?」


討伐なんか出来なくても地域に貢献してりゃ“冒険者”をやってられるって話だったからな。

「…異世界来て何をしてるとか言われそうだけどこんな所で死ぬのなんかまっぴらだよ。」


「とりあえず後の事は影丞来てから決めようぜ」


「ラジャー」


そうして、真一は再び針仕事に戻る。


話をしてる間に本格的に日が暮れて秋でもないのに夕焼けのように空が赤くなっている。


「とりあえず、下に影丞が居るか見てくるよ」


部屋に戻りにくくて食堂にいるだけったりするかもしれないしな。


「下に行くなら俺も行くよ。万が一って事もあるし、町のはずれのほうだけ雨ふってきてるから気になる」


「雨か影丞が戻る前に本降りにならなきゃいいけどな」


夕焼けを遮るように厚い雲が山から流れてきているのを確認し木戸に閂を嵌める。


基本的にカギなんか無くてほとんどが閂で止められてるらしい。


「健いけるよ」


話してる間に真一は裁縫道具を仕舞い終わっていた。


「ん、ちょっと早いけどメシにするか」


パフパフしてきてケンカしただけだから機嫌治ってないかなと思いながら二人で階段を降りる。



「影丞いないね」


「マジか…」



無人の食堂を見わたしてアテが外れた事に落胆を覚える。


「ちょっと近くから探してみるか、真っ暗くなったら戻ってるかもだけど」


「う~ん、暗くなる前だけ二手に別れて暗くなったら宿に帰るって方がよくない?」


「それでも、戻ってなかったらギルドにマジで頼んでみるか…」


いつも厨房にいる大将もいない。このタイミングで頼りになりそうな大将まで居ないとかなんなんだ。



まだまだ工事中

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