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黒の影丞

投稿済みの絶賛 黒Tを結合し新話追加してあります。

女物のズボンはほつれて当たり前。


針子さんによると、この世界にはそんなご無体な法則が存在するらしい。


どんなに堅い素材を組み合わせても、願いが叶った時に壊れるとされるミサンガみたいに、履いた女性に“転機”が訪れると解れるんだそうだ。


事の始まりは、今はもうない宗教の聖人のズボンが解れたり破れるたびに身近な女性に《奇跡》が起こったという迷信から来ているらしい。


だから、暗黙の了解でもともと縫製も甘くしてあり壊れるっと。


―めっさ重要なモンで現担ぎしてんじゃねぇよ!?



真一は宿屋に連れ帰りました。


「わかるか真一。真一が下着にかまけている間に健がいなければオレはパン1だったと言うのになに満足そうに下着広げてんだよ!」


「いやさ、話したいことはわかるんだけど俺はブラ作ってただけで影丞のズボン弄ったわけじゃないし何もしてないよ?」


正論を言うとはなげかわしい。


宿に帰宅した途端、持ち帰った下着並べて真剣な顔でデザインの話始めちゃってくれたりするから単なるオレの八つ当たりだよ!?


「いや八つ当たりの影丞はともかく。さすがにテーブルに女物の下着を広げられてもおれらとしても困るんだ」


んなもん基本的にマジマジと見る機会ありませんからのー?


「でもな。これ作ったばっかりで誰かが着たわけでもないし、コッチじゃ無いって話だから別に気にしなくてもよくない?」

ちょっと困った風に言う健に向かって恥ずかしげもなく堂々とブラを掲げる真一は“なんで気にしてんの?”と不思議そうにしているのがオレらにはわからない。


そもそも、そこのブラの存在に反応しているオレらはそんなにおかしいのか?


いや、ブラ作成するとか意味分かりません。


「宿にまで持ち帰ってなんに使う気だよ。影丞の下着姿なんか見たくないぞ?」


いや健さんや。気を使ってオレをチラ見したりなんかしてるけど軽く被弾してるからな?


“影丞なんか”とはなんだなんかとは、アバ体が可愛くない訳がないとおもうんだ。


だからって反応されても困るから敢えていわないけどさ。


「いや、二人にも見せてこれからどうしたらいいか聞こうかと思ってさ」


何を期待してるかわからないけどお前(真一)ろくでもないな?“これからどうしようか?”とそうだんされても何をどうしろと言うのだね?


「いや、いくら作ってみてもなんか物足りなくてさ」


真一は真剣に悩んでいるが、こんな姿を見せられたオレらの方はマジで困る。


「いや、真面目にブラとパンツ作られた方が困るわ」


「けど、下着畑に侵入してもヒモパンしかない方が寂しいじゃないか」


「侵入するな」


「でも、秘宝探すよりロマンが…」


「ごめん。おれそんなの考えた事もなかったわ」


それ、ロマンじゃなくてただの変態じゃないか?


「…とにかく、下着は一回仕舞おうよ」


健が巻き込まれる前にオレが口を挟んで話を止めさせる。


「お前はともかくこっちは下着があるだけで恥ずかしって事を理解して?」


「そんなもんなのかなぁ」


本来のお年頃ならそんなもんなんだよ。えぇデザイナーさんよ。

ぱっと見十分ブラとパンツしてるだけに何がやりたいのかさっぱり分からん。


もはや手に取る事も憚られるよ。


「で、何が一番の問題なんだ?」


「試作品の材料は自由に使って良いって言われたから色々試したんだけどフリルとか可愛い飾り上手く作れなくてさ」「フリルより何よりアテ布は?」


手にしたパンツを裏表に裏返し健が呟いた。


「…そうかアテ布か。それは考えてもなかった。」


「男もんにはないけど女子にはあのガーゼみたいな部分が必要らしいじゃん?」


「なるほど、布一枚で完結してたから足りない感じがしてたんだ。ありがとう助かったよ健。」


アテ布ってなんだ!?意味分からんがなんかエロくないですか?


「いや、礼はいいから早くしまえや」


「でもせっかく…」


「せっかくじゃなくて、そこにシャイボーイがいるんだからやめてやれ」


言いながら健がオレを指差す。

「…さっきからずっと影丞の顔真っ赤なんだからな」


「ぅあ、影丞ゴメン」


いそいそと真一がブラとパンツを仕舞い始める。


「そんなにオレの顔赤くなってる?」


「自覚ないだろうけどさっきから超モジモジしてる」


―それは自覚してなかった。


てか、そんな行動してたんかオレ。


いや、健が指摘した意味もわかんねえけど、真っ赤とか言われても訳わかんねぇ。


「…とりあえず、わかんないけど顔洗ってくる」


「うん、そうしとけ」


まぁまぁ恥ずかしいけど、なんで健はコッチを全く見ようとしないのだろうね?


「顔を隠してけ。それから顔を洗う前にトイレの鏡を見て自覚しろ自覚を」


「いや、そんなつっけんどんに言わなくてもいきますがな…」

んな、言うほどみっともない顔してたんじゃ、健もコッチを見ませんわな。


とか思ってた時期がありましたが、トイレの鏡に映った自分の姿を見た時に、全く違う意味だった事に気がついた。


「ふ~ん?ほほ~ん?これはこれは…」


うん。


可愛い女の子がえっちい下着を前に赤い顔でモジモジしてたらみれないわ。



でも、ちょっと興味があるんだよ。


あの下着をつけたら多分なにかが終わる気がするが娘様にマトモな下着を着けさせたくもある訳で…。


でも、下着はキチンと仕舞われたし、ブラはブラでアレだし。

ちょっとだけならアリなんだろうか?


―悩む。


だが“悩むより行動”と言う言葉が世界にはある…。



「ただいま」


「おう、おきゃーり」


「おかえりー」

部屋に戻ると、二人が談笑するテーブル下に黒い物発見。

そう件のアレかも知れぬ。

椅子に座りながらさり気なく足で引き寄せる。


その間全く気を向けないんだけど、コレ罠だったりする?


いやいや、まさかそんな。



「や…っん?」


二人が寝静まった夜中。

一人ベッドの中でゴソゴソと着替える。


手探りで前後がよくわかんなかったけど多分着れた。


―ちょっとドキドキ。


床を這う様にして健のベッドの横に移動する。


「健、たーけーる。ちょっと起きてくんない?」


ゆさゆさと健の肩を揺らし起こす。


「ん…ぉ、なんだよこんな夜中に…」



「ちょっと見てもらいたいモンがあるんだけど…」


「ん~?部屋暗いし明日にしろよ」


もぞもぞと布団をかぶり治す健の肩を尚も揺すり続ける。


「いや、確かに真っ暗な中でなんも見えないけど昼間だと困る。何なら部屋の明かり付けてくれるだけで良いから」


「…ぅあ。なんか知らんが灯り点ければいいんだろ」


健が身を起こしてテーブル脇の魔石灯に触れるとぼんやりと光が灯る。


「んぁ。それで何を見せたいっ…て!?」


振り向いた健は口をあんぐりと開けたまま固まった。


「美少女の下着姿with影丞の感想は!?」


「…っ。なっにしてんだテメェはぁっ!?」


健はオレの頭を両手で掴んで一気に引き寄せると、ごづんっ☆と鈍い音が響き視界に星が散った。


「どゅぎゃうっ!?」


抵抗する間もなく健の頭に引き寄せられて、キスとか抱き寄せるとかでもなく、エロ要素0パーセントの超パチキ。


オレは額をを抑えもんどり打つ。


「なに騒いでんだよ二人とも…」


真一が起きた様だが変わりにオレの意識がオチた。



「気絶してないで着替えろ影丞!」


「…一てぇ!」


さらなる痛みに目を覚ますと二人からダメ出しをされた。


頭突きで気絶させて叩き起こされるって意味がわかんない。


「まず両方とも裏表が逆な時点で終わってる」


「ふへっ、ついでに下が前後ろ反対のTフロントになってたからねぇ」

「又のケも生えてない奴は黙って寝てろってとこだなぁ?」


畜生!てめえら鼻で笑いやがったな!?


「うるさーい?!なんだよっ!せっかく着てみたのに!!そんなに言うならこんなもん全部脱いだるわ!」


「「!?」」


下着に手を掛け一息にパンツをずりおろす。


次いでブラを壁へ向かって投げ捨てベッドの上で仁王立ち。


「これまでやったら文句ないだろ!」


さぁ見やがれ!汚名返上名誉挽回の為に恥を捨て去った起死回生の切り札!


「全裸の美少女with影丞だっ!」


―全裸の文句はオレに言えっ!


「キャー!痴女よっ!?」


「奴は危険だ逃げるぞ真一?!」


ドダダダダタっ!!と二人の姿がドアの向こうに消えていった。

シーツを手に慌てて階段まで二人を追いかけるも、オレが階段の手すりに手を掛けた時にはとっくに二人は街の何処かへ走り去った後だった。


「こっの甲斐性なしのアンポンターン!」


どこら変が甲斐性なしか問われても困るが、オレの叫びは虚しく夜空に吸い込まれ消えた。


下着姿を見せたのが間違いだったってだけだってんだろチクショウめっ!



翌朝。件の二人は肩を組んで青年達は帰ってきた。


男子三日会わざればじゃないが、たかが一晩されど一晩。


脱☆童貞の日が昇る。

真一は迷い込んだ色町で奇跡の出逢いを果たし、健はキョニウにパフパフされてきたそうだ。

そしてオレは一晩たってもオレのまま。


その日から、何を思い出しているのか不意にニヤニヤと笑い出す二人が至極気持ち悪かった。


前は内容をじっくり聞く予定でいたんだけど、悔しいし何をしてきたかなんて悔しいから追求をオレはしとない。


二人が自ら離す分には構わないが悔しいからオレからは聞いてやらん。


―オレはただ物語の姫様のような素敵な笑顔で笑ってやるだけだ。


取り残された感があるのは否めないが、スッキリしてるのに疲れてやがる彼らとの間にあるこの溝はしばらく埋まらないだろう。


だってオレだけ“未”なのは悔しいじゃん。


いつものように、食事を終えて三人で部屋に戻ったのだが普段は気にならないハズの階下の音がよく聞こえる。



いつもなら“食堂のガヤ”をBGMにまったりしながら今日の行動を話す時間なんだけど、部屋の中に三人揃っていながらこの静寂はなんなのだろう。


―クスッ


真一さん膨らんだズボンのポケットに手を入れて思い出し笑いとか怖いから止めて。


そのポケットになに仕込んでんすか?


―夢ですか?


それから、“女の匂い”がするね、気にしてみれば確かに良い匂いってのがあるんだけどなんだか知らんが鼻につく。


オレをほっぽりだして一晩いくらで美人と何発してきたよ。翌日もギンギンとか元気過ぎる。

二人ともご飯前は二日酔いで辛そうにしてたんだけど、いろんな意味で回復早すぎませんか?



「…はぁ、いいやもう。今日はちょっと休みにしよう。」


黙ってても始まらないのでオレから行動案を発言する。


「あ、うん」


「なんかスマン」


ビクビクしながら二人が返事を返してくる。


なんだその反応は、オレは特になんもしてないし二人に手を出されたかった訳じゃあないんだ。

娘様のwith影丞をほめてもらいたかったのが裏表前後の凡ミスでバッシングされたのが気に入らないだけだ。


オレは何も気にしてないっ!!(血涙)


「んじゃ、ちょっと下行ってくるよ」


二人の返事も聞かずに、オレは扉をゆっくり開けて、閉じる途中で“某冬彦の壁チラ”を二人に数分披露した後ゆっくりと扉を閉めた。


扉|・)じっ


  Σ(・_・;)(;・_・)


その間、二人は俯いたまま此方をみようともしなかった。


…どうしてかイライラが募る。


―けっ


なんか、部屋の中が静か過ぎてイライラするー。



「あれ、人居なくね?」


食堂に降りてくると、先ほどまでの賑やかさが嘘のように閑散としていた。


「誰かしら居るかと思ったのに…」


ガヤでも盗み聞きして暇つぶししようと考えていただけにガックリだよ。

諦めてイスに座ると厨房から顔を出した大将が苦笑している。


「あんだけ尋常じゃない空気纏ってたら誰も長居したか無いだろうよ」


…なんかありましたか?わかってはいますがオレなんもしてないですよ?


「…無実です」


「お前さんからしたらそうだろうが、あんまり兄貴達をイジメてやるなよ?」


実際にハチ※にされたのはオレの方なんですけどね。


※ハチ※

村八分=仲間外れ


断じて二人を責めていたわけじゃない。

道の途中まで肩を組んで帰ってきた二人が、入口脇で体躯座りしていたオレを見て“あ”と呟いた後、気まずそうに組んでいた肩を離した事なんて気にしていない。



実際に二人の体験談を聞かされた訳じゃないけど、どこで何をしてきたのか位は強めの残り香で予想がついた。


予想がつくだけにある我がコレである事が恨めしい。


「アイツら知らない女抱いてきた…殺したい」


何やら物騒な言葉が口から零れた。


「………」


背中を向けていた大将が身震いを一つして厨房の奥に姿を消した。


食器を洗う音もなくなり食堂に静寂が訪れた。


テーブルの上には食べ残した料理やパンが残されているのだが一向に大将の戻る気配がない。

暇で仕方がないので食器を集めてはカウンターに置きに行く作業を繰り返す。


厨房の壁にかけられた包丁を厳重に片付ける大将が見えたような気がしたのは多分気のせいだと思いたい。


包丁は料理人の魂だと言うし普段からそうしてるのかもしれないから気にしたらいけない。


窓から差し込む登ったばかりの太陽の光が眩しく朝の空気は清々しい美味しい、そしてなにより暇で仕方がない。


―異世界の何が楽しい。

次は噂のローブが?

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