うむ・修正版
作業中に帰ってきた健が、本当に鬱そうな顔をしながらテーブルについたので理由を聞いてみた。
「ギルド行ったら、オーガの上腕筋わたされちまった」
人間の…。いや、オレの腰回り程もある太さに鋼が如し黒光りする皮膚この世界の人はどうしてコレが食い物であると判断したのであろう。
魔狼のような臭みを含んだ脂もない。
魔物の中でオーガの腕は極上の肉質…………らしい。
名前はオーガ、姿形はやはりオーガ。
ただ、この世界のオーガは知性の高い鬼人系ではなくて、豚から派生した鬼種になるらしく珍妙な顔をしていたはず。
「持ち帰る前に売っちゃえよ」
真一が此方をチラチラ見ながら言葉を口にする。
豚系でも二足歩行の生き物だ。口にする前に味わえるのは強烈な忌避感と猛烈な吐き気、日本で言えばいきなりお猿さんの肉を渡されたイメージとなんらかわらない。いやもう本当にまんま人型なのは勘弁してほしい。
それを口に出来るのは異世界の人だからこそだね。
日本人に人型だったモノの肉はホント無理よ?
ブタそのもののオークならまだしも類鬼豚のオーガなんて見たくもない。
だって睾丸やらアレも含めて切り分けられるんだぞ?
猟奇過ぎて、思い出したら気持ち悪くなってきた。
サスサス…
「落ちつけ落ちつけ」
真一が気を使って、優しく背中をさすってくれた。善意なのはわかるけどもそれ余計に吐きそうになるからやめて。
「健…」
「オレもさわりたくないから直でインベントリに入れたんだよ?!」
「ついさっき、影丞がクマの内臓で気持ち悪くなってたみたいなんだよ」
「…あ~、なるほどなー」
「クマは夕飯に料理されちゃうみたいだけど…」
真一と健の二人は内臓に慣れたみたいだけどね。
もうやぁよ?
せめて持ち帰らないで肉屋に安価でいいからあげてこいよ。
「いや、欲しい人はそれなりの値段だすらしいからどうせなら高く売りたい。」
と、至極真面目な顔で健は言ってのける。
ちくしょう、商売人めー。
「少人数で動くなら金になりそうなもんは何でも金にしときゃ間違いないからな」
それは確かだけどそれでもさぁ…。
「一生口にしたくない…」
「…おれアレ知らずに食べたから手遅れだ」
「影丞に同じく、健が食べた肉はもうウンコだろうし水に流して忘れなよ」
「下水に流したしな…」
宿のトイレは、汲み取りじゃなくて下水道に流す水洗だからねぇ…。
魔の森に居る時に、オーガとも会敵して討伐したけど苦悶の表情してたから放置してきたって話してたな。
あと、ゴブリン肉だ。
街の露天で売られている美味しい肉製品の何割かはゴブリンだと聞いて、露天で買い食いする勇気がなくなった。
魔力はアミノ酸みたいな効果が働くらしいから魔力が高い魔物ほど素材の旨味が増すらしいよ。
でも、宿屋の大将に人型だけはやめてと懇願した事は記憶に新しいね。
いろいろ試すまでもなくどこかが人型である時点で許容できないと理解した。
知的生命体も含め嫌って事になるな。
魚人はマグロに鰭の手足だったから刺身にして食べたけど…。
「それで、これが今回の必要経費を引いた三等分の報酬な」
「ありがとう」
「さんきゅ」
さすがに一週間の稼ぎだけにそれなりに銀貨と銅貨が入った袋を渡してくれた。
家賃や食費は健が管理してくれているのだが、たまに健が自分自身を酷評する事があるが、一般の冒険者からみたらかなり誠実で真面目な部類に入る。
若い神官ですら夜の街を嗜むのだから、へたな神官よりよほど禁欲的に生きている。
敢えて言わせてもらうなら自信を持て健。
股の巨塔は誰に見せても恥ずかしくないぞ?
「これで〇回は戦える…」
真一がポツリとは呟いた。
今夜はマリーさんとこにいくんだろなーと生暖かい目で眺めていたり。
いいんだ。別に真一が真面目じゃない訳じゃないし、ガス抜きしてくるくらい構わないんだ。
―でもね?
「今夜は健もつれてk…。」
そう口にした途端にゴスッという音とともに頭に衝撃が走る。
「わざわざ二人で同じ店なんかいかねぇわ。もし、いくなら別々にで行くに決まってんだろ」
まぁ壁の向こうから知り合いのギシアンが聞こえるのは落ち着かないとは聞きましたな。
「その昔、二人で肩組んで帰ってきたのは誰と誰かな?」
オレは薬草を仕舞いながらあるエピソードを思い出しながら口にする。昔と言えど、そんなに古い話じゃない。
飲んだくれて残念なテンションで帰ってきた二人を見て羨ましいより先にああはやるまいと幻滅した覚えがある。
「それはそれでw、一人なら一晩とかも行けるだろ。」
「お泊まりなら一声かけてな。」
扉には外の錠前か内側の閂しかないから一々夜中に起こされるのは面倒くさい。
帰らないとわかれば宿屋の部屋を借りて寝ることも出来るんだからねぇ。
このあたりは日本ほど治安がよくないんだからなー。




