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リカヤー生活・修正版

黎明のなんちゃらだったか、夜明け前が行軍に適していると言ういみだったか、まだ白み始める前の紫色の空。


こちらでは、世界が目を覚ますとされる時間で、向こうの世界では決して知ることはなかった世界の濃さを感じられる。


「…秘薬を三本たのむ」


「まいど」


息を殺し忍び寄る客にオレは静かに酔い醒ましの薬を手渡す。

拠点の真ん中付近にポツンと配置された荷車の周りは遠巻きにしてる人がチラホラ。


騎士らしき人も何人かいるみたいですが、みんな二日酔いの仲間の為に栄養剤を買いにきた大事なお客さんです。

万能薬に勝るとも劣らない即効性など言う口コミのおかげで、いつのまにか秘薬とまで呼ばれるようになってしまったが、ウコ〇の力は断じて怪しい薬ではない。


そして、右肩上がりの売上はオレだけの物ではなく、三人でさらなる香辛料を探す資金になるんだよ。


500ギリ(500円相当)で限定20本の販売にあるにもかかわらずほぼ毎日完売するのには理由がある。


まず、薬湯にまぜてあるウコンが極めて少量であり、製造コストが非常に安い事と、連日繰り広げられる宴会のおかげだ。


冒険者ギルドは、遠征中に食料品を街から運んでくるのだけど、支援一貫だと言って毎日無料・・で酒まで配っている。

オレは一口も飲ませてもらえないから聞きかじりだけど、健によるとその酒はアルコールが高いくせに非常に飲みやすいらしいのだとか。


焚き火の周りで、踊り子や武勇伝を肴に酒を飲み交わし、翌日になると地獄の苦しみ(二日酔い)を与える。

飲ませて二日酔いになるまで仕上げ、ギルドは冒険者を上げて落として何したいんでしょうか?


ドエスなんですか?


そして飲む側はドエムなんですね?


健と真一も初めての遠征で飲みに行って翌朝苦しんでたんよ。

オレは、ギルド員からも飲む事も近付く事も許されなかった。


他の人にも追い払われたし、四面楚歌とはあんな感じなんだろうか…。



カレー用に集めた香辛料の中にターメリック(ウコン)があったから苦しむ二人に試したのがポーション作りの始まりで、作った薬をさらに改良したのが秘薬だ。


希望する団体さんには、レシピを配ってみたんだけど、ターメリックみたいな匂いの強い香辛料を持歩く冒険者なんかやたらいないんだとさ。

そのおかげでウチの独占販売になってるけど毎日作るの面倒い。


でも、作っとかないと二日酔いの人が、朝テント付近を徘徊して怖い事になるから作る。


数が足りなくても徘徊されるんだよ、ゾンビ映画みたいでチョーコワいから勘弁して?



―そして、辛くなるまで飲まないでと言わせてください。


客もハケ(・・)て本格的に、空が明け始めてきた頃リヤカーから真一が顔を出してきた。


「真一おはよー」


さて、シ〇ゴママならぬ影丞ママのお時間です。朝の献立は燻した狼肉を焼いたのと赤米と麦を炊いた“ご飯”ほんとは白米がいいんだけどジャポニカ米所か白い米がないんだよ。


マヨネーズも一応あるけど、チューブじゃないからマヨチュチュは出来ません。


もち米みたいな赤米はあるんだけど、精米の概念そのものがなく、粉製品主体の食文化みたいみたいだから仕方ないのかな?

それより、問題は昨日作った肉の燻製。

一晩中薫してたから大丈夫だと思うんだけど、肉肉しい赤が眩しいです。


生より生々しいのは何故ですか?


一応、串に刺してバーベキューみたいにして焼いたのに、くんしたした時とあんまり見た目がかわらなかったんだよねー。


まさかと思うがこの肉の塊には防御力でもあって、オレが起こした火では狼肉の防御力を貫通出来なかったから生々しいままだと言うことなのだろか?


「影丞、火はちゃんと通ってるみたい。ローストビーフみたいになってるから大丈夫だ」


真一は肉にかじりついた、味見ってより毒味に近いの。

そうこうしてたら、健が「おはよう」と言いのそのそと起きてきた。


「ほはよ」


「おはよぅ」


「真一、目が覚めてたんなら起こしてくれ…」

低血圧の人の寝起きらしくフラフラしながら言う健。

時間ギリギリの時もあるけど、ちゃんと起きてくるから放置してるんだよ。

…万が一寝過ごしたらその日はオレが狩りに行けるんじゃないかと期待してます。


「あっ、意外に美味いかも…」

「そう、真一は?」


串に食らいついた健が一言くれたが普段からなんでも美味いって言う健はあんましアテにしない方がいい。


「肉の臭みも抜けてるし、美味いよ?」


、塩漬け葉っぱを巻いた麦飯のお握りと、このお肉を持たせれば昼飯は大丈夫かな。



でも、飽食の時代から来たってのに、この一年で味覚も随分とかわったのな。


いつか牛丼食べたいと思いながら、自分も箸を取り食べ始める。

味はいい、独特の歯応えもあるからご飯のおかずとして十分だ。でも、今から寝るから腹八分。

肥る肥らないの話じゃなくて、腹一杯になると、なんでかわかんないけど“くしゃみ”を連発して寝れなくなってしまう体質なんだよ。


食べ過ぎた時にはすぐわかります、しかも下手すると喉の辺りまで食べた物が戻ることあるからドカ食いできないのさ。


…あんまり他にはいない体質なんだろうけど。



二人が狩りに出かけてしまい、まったり体を休めていたら騎士様がやってきた。


「法師さま騎士団のテントで休まれませんか?」


こちらを労る言葉をかけてくれたのだが、連日たくさんの人が体調不良(熱中症)で、騎士団のテントに担ぎ込まれてるのが原因なんだね。

噂では、騎士団のテントの中は氷だか冷気の魔法のお陰で、なかなかに快適な温度らしいんだけど、知らない人ばかり沢山いる所で休むのは絶対無理。


まず、心が休めない。


「…(フルフル)…」


ジェスチャー発動!分かり易く手と首を横に振ると、ついでに余分な山も揺れ動くが、オレは気にしないで全力で嫌をアピールする。


「お嫌ですか?しかし、法師さまだけは、横になられているのが倒れて横になっているのか本当に判断がつきませんし」



困った風に騎士さんが勧めてくれるけど、オレは一人でボヘッとしてたい。


まぁ、黒い照る照る坊主だから見ただけじゃわからないのはたしかだけど、涼しい場所を確保してるらしき騎士さんの顔色もそんなによくないんだよねぇ。

普段からエアコン効かせた部屋にいる人なんか、炎天下に出て体調おかしくするとか、そんな感じなのかな?


暑いのは暑い時なりの涼みかたしないと体おかしなるよ?


それから時には塩分も補給しないとね?

因みに、日本の我が家にはエアコンが存在しなかった。

その代わりとばかりに、小さな扇風機(各個人用)とドデカい工業用扇風機が一基配備されていた。


冬は現場事務所にでも置かれてそうなストーブが玄関に置かれ家全体を暖めていた。


近代化の波に乗り遅れた我が家でした。


「…(フルフル)…」



塩と砂糖が入った薬湯ポカリを取り出して飲めと渡す。


お茶漬けじゃないけど飲んだら帰って?

「なるほど、法師さまならよく効く薬湯の支度くらいしてありますか。」


「…(コクコク)…


でも、騎士や貴族が毒味もしないで口をつけたりするのはどうなんですか?


「…あの、なにか力が漲ってくるような気がするのですが本当になんなんですか?」


いやいや、みるみる溌剌としていく騎士さんだけど、ポカリ飲んだだけで漲るほど元気になるとかおかしいでしょ?

詰め寄られる前に塩と砂糖とレシピを書いた紙を騎士さんに押し付ける。


「もしかして、今の秘薬のレシピですか…」


騎士さんがマジマジと紙を見ている、スポーツドリンクの作り方と熱中症への対策を書いてあるだけだ。


なんでもかんでも魔法で熱中症を治せるから、塩分が足りなくって再発するんだよ。


「こんな病気があるなんて聞いた事もありません…」


とりあえず魔法より、塩を舐めさせろ、甘く感じたら塩分不足なんだからね!?

信じたくなければそれでいいから我が娘様に男が近寄るなっ!


「…(シッシッ)…」


そして、ひたすらあっち行けあっち行けと念をこめて払う仕草を繰り返す。


はっきり言って物凄い不気味だと思うんだ。


「…わかりました、また後で様子をみに伺います」


観念したのか、騎士さんが離れていく。

思わずバンザイ。


「…また、後できますから」


やべ、見られた。



騎士が離れたのを確認しリヤカーの下に掘ってある窪みに潜り込む。

このじきになると日中は熱いから、リヤカーそのものを断熱材代わりにして横になるんだよ。

これから寝るオレに出来る熱中症対策は、ポカリ飲んで涼しい場所で横になるくらい。


―その前に、まわりに塩でも撒いておこう。



「…塩っ辛れぇ」

影丞が熱中症対策弁当だと嬉しそうに言っていたお弁当はしおまみれだった。


「真一、いつもに増して塩が多くないか?」


食べれないほどではないが、塩漬けの菜っぱと塩握りの組み合わせは舌ベラに少なくない衝撃を与えてくれた。


夏場になってからというもの味付けがだんだん濃さを増していくのはどうにかならないだろうか。


「腐らないのは有り難いんだけどね…」


真一も水筒の水で口を濯いでいる。

残したりするつもりはないが、お茶漬けにしないと全部食べるのが厳しい。


周りの米外して干し飯にでもしといたらどうだろうか、このまま食べると二十歳を待たずして腎臓を悪くしてそうだ。


「ちょっと、腰を据えられるような場所にいってから食べたいね」


似たような考えらしくて蓋をしてイベントリにしまう真一に激しく同意。


「小分けにされた塩まで添えられてるし…」


真一と顔を見合わせる。


「明日、お弁当の様子を見てから追々考えよう」


「追々了解」


お互い渋い顔はしてるものの、食べられる範囲内と言う結果が弾き出されている以上塩を減らしてもらうしか手はないからな。


でも、影丞の考える熱中症対策とは、そこまでしょっぱい思いをしなければならないのだろうか?


影丞だって、三大成人病とかをニュースで聞いてるんだろうから、熱中症対策だけではなく長期的な健康管理も視野に入れて欲しい。

肥満はなくても、塩で肝臓悪くしそうで怖いな。


とりあえず、明日の影丞次第になるけど、多分増えてるハズ…。

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