【season1】どくだみの地へ埋まれ修正版
「それじゃ行ってくるっ!」
「行ってらっしゃい!」
気合いの入った親友達がたくさんの冒険者や騎士団と一緒に山道を歩き出す。
今日は野営地にテントの設置をしているので、オレは森の手前の草原で支援部隊と一緒に荷物番として残る事になった。
ちなみに、オレの服装は白い仮面に黒いローブで、フードをしっかり被ってるから見た目が黒いテルテル坊主、はたまた邪教徒。
夜中に街を出歩けば現代日本なら職質必至の姿だね。
普通の冒険者が狩りに行くときは、荷物運びのサポーターが必要になる。
うちは三人だけだけど、インベントリ持ちがいるので本来は荷物持ちがいらないのさ。
でも、狩りや採集の帰り道とかさに手ぶらってのは、良くも悪くも目立つんよ。少ない手荷物をかき集めオレが荷物背負ってその役割しているのだけど、その姿を見かけた外部冒険者がギルドに鬼畜グループがいると通報したり、まことしやかに噂されたりさらには絡まれたりする事もしばしばあるのだとか。
でも、オレ自身は狩りに参加できないから荷物持ちみたいな行動くらいはしとかないとニート冒険者一直線なんだよね。
でも、結局は意味ないから荷物持ちのコスプレにしかなんないんけどさ…。
狩った獲物は、野営地に戻らずとも森の中の拠点で、ギルドの保管庫持ちの役員が買取をしてくれるらしいから荷物持ちもいらないとの話だよ。
オレ達は魔物討伐に向かう騎士団に随行する強制依頼にまきこまれた形で参加している初級冒険者。
三人で、草原の薬草採集をしていたら、団体さんがゾロゾロ歩いてきて知らんぷりしてたら、団体の中からギルド員やらベテランさんがいい顔で歩いてきてくれたさ。若いうちに経験しとけって事で好意で無理矢理に参加させてくれたけど、ありがた迷惑だ。
一応、部隊に同行した神坂真一とリーダーの草薙健の二人と木ノ下影丞を加えた三人で行動して、“素材屋さん”と呼ばれるようにはなったけど、こんな生々しい経験はマジで要らない。
したくない。
普通に上を目指して冒険する冒険者達は、六人から七人くらいでグループを組んで大口の依頼を受けたりしてるけど、ウチは其処まで冒険してくつもりもないので、ソロで出来ること依頼を受けて三人で行動するパターンが多い。
しかも、情けない話ではあるが諸事情によりオレが居る時は採集系依頼ばかりになるんだけどのー。それでも、グループ申請だけはしてあれば、地元グループの冒険者って扱いになるから、他グループからの強引な引き込みなんかあった時にギルドが保護しやすいんだそうですな。
見目麗しい女性を力で脅して無理やりメンバーにを加えるグループも中にはあるのだとか。
多分オレがアバ体みたいな娘様になってなけりゃこんな話もなく三人でTUEEEしてる。
今からだって、魔の森の深淵まで散歩に行けちゃう、でもオレ団体行動に参加すると迷子多発するから参加表明出来ず。
討伐隊が捜索隊に…、いや、さすがに魔の森で行方不明じゃ捜索隊にはならないよね。
夜には死亡者一名を追加で報告されるだけですか。
それに、少人数で足りる理由としてはイベントリタイプの大容量のアイテムボックスを利用した素材集めを中心に行動しているというのがありますが、未だに他人(異世界人)が信用できない人見知りの日本人気質からくるものが最大の理由です。
だって平和な日本で生きてきた三人だもの、怪我は痛いし人じゃないにしても流血沙汰は怖いよ。
戦闘や狩りが主体の冒険者としてどうだろうと思われるけど、なんとか採集系依頼を頼りに静かに生きてます。
言い訳がましいけど、この世界に迷い込んだ時にオレたちも三人のルールを決めたんだよ。
色恋も狩りも他人に迷惑をかけない。
賭博禁止。
土地のルール遵守。
危険を冒さない。
しかも、危険を冒さないの意味が冒険をしないに等しいレベルだったりする。
そんな縛りプレイをするような連中が、“なんで冒険者なんぞになった?”なんて声もありそうなんだけど、その答えは凄く簡単さ、持ち金がなくて、手っ取り早く金が手に入りそうなのが冒険者だから“仕方なく”なってしまったのだから仕方ないよな…。
なにしろ、無一文でこの世界に跳ばされたのだから、先立つものがなにもなかったんだよね。
因みに、何のために来てしまったのか未だにわからない。
よくある白い空間や女神なんかのイベントも経験してないから、転生か転移か召喚なのかすらわからない。
え?普通は冒険をしてそれを調べるってか?
正直そんなのくそワロ太鼓。今更冒険したくない。
話変えようか、当時オレ達はゲーム内部で好んで使用していたような装備で街の中にいた訳さ。顔は、本人らしき(多少美化有り)物だったから見分けがついたものの、別人になってたとかだったら今頃三人で行動していなかった可能性は高いよ。
いや、そもそもオレが男のまま来てたんだったらここまで三人で行動してないかもなぁ。
で、原因たるオレは昔から女キャラクターを優先的に使用する傾向がありキャラクターは嫁ならぬ娘様。
いや、別に普通に格ゲーでもなんでも女キャラばっかり使う人って特殊じゃないよね!?
ネトゲーで女を演じてたらネカマになるのかも知れないけど、作れるなら女キャラも普通につくって遊んでも、そんなにおかしい話じゃないかと思うんだ。
いや、だからってオナベでもないからな!?
可愛いいキャラは可愛いいから使ってるで構わないっすよね?
テルテル坊主の中の容姿は長い黒髪に大きな黒い瞳、昔(日本にいたとき)の面影はあるものの大幅にクラスアップした美女一歩手前の美少女が今のオレだ。
幸いにも女性にあるべき周期がないので、男のまま女キャラをプレイしている気分でいられてるし、女言葉が難しいから、普段は顔を隠して無口にジェスチャーですませてます。
あと、髪の毛も短く切りたいのだけど幻のような物らしく切ることが出来ない困ったちゃんでなぁ。かなり目立つ容姿をしているから、それを隠すのに性別もわからないようなフード付きローブと仮面をピッチリ縛って着る始末。
―こんな娘が日本にいたらオレなら惚れる(爆)
そんな外見が怪しいのが荷物番として徘徊しているのに、一団からは文句を言われない不思議な環境なんだよね。
都会ではありふれた格好だとかいわれたら笑うしかないね。
そんなわきゃないだろうから、普通に近寄りたくない人認定されてるんだろうな。
因みに異世界でも、ステータス一覧みたいな能力はごく限られた人間しか持たない。
そして、オレにもそんな便利な機能は付いていなかった。
健たちはイベントリもどきみたいなものがあるようなのだが、どう見えてるかわからん。
因みに、ギルドで有料でステータスを測定してくれる“測定会”が存在する。
魔法器具使わないで、体力測定みたいに決まった距離を走ったり飛んだりはねたり、基礎体力を計るアナログなタイプです。
ゲームみたいな物と違い体温計みたいな器具で測る棒グラフ形式もあるらしいが、大きな街にしかないらしく地方での主流はアナログらしいですよ?
上を目指す連中はマメに測定しているらしいけど、無駄に疲れる気がするから、オレはギルド登録時に測定してもらって以来測っていないよ。
うん、一応平均女子の能力は超えたから大丈夫。攻撃力とかは、筋力や体力と違い計る方法がないそうで、箔をつけたい人は道場とかにも通ったりするらしい。
でも、岩が割れるからどうしたって話になってしまうんだろうか?
それはそれで切ないな。
因みに、初期冒険者登録に関するモノはタダで出来る。
街の外は魔物だらけだから、一定数以上の冒険者を確保しておきたい冒険者ギルドが考えた対策らしいのだ。
そして、お金のせいで冒険者になることをあきらめないように無料登録+中古武器支給と言う形をとることにしたらしい。
死亡率が高過ぎて、スラム街育ちだろうがなんだろうが受け入れる為の対策なんだと。ギルドが中古の初級武器防具の配布や最初の測定までタダにする理由としては、それまでの支援をしたくなるほどに戦闘や狩りに使える冒険者が足りないんだそうだ。
すいません、オレこの地域の役立たず筆頭です。
まぁ、ギルドがどれだけ後方から手を尽くしても、魔物自体の危険度は下がらないので初心者の死亡は後をたたないそうだ。冒険者登録した人の死亡率は、街で生きている人に比べて何倍も高くなるから、生き延びられるようにするため、支援とかの配慮をしているみたいです。
チュートリアルとかスタートダッシュキャンペーンみたいなもんだと思えば間違いないよ。
他にも戦闘訓練やら無償でやれる分はギルド負担で受講させしてくれているらしいのだ。
キャンペーンの中にポーション無料配布みたいなのはないんだけどね。
初心者がギルドで買えば大幅割引されてはいるけど、ギルドは元々割高だって話だからねぇ。
わからんわ~。
◇
夕方、討伐部隊が野営地に帰ってきて出迎えの声で周りは一気に騒がしくなった。
た。
「腹へった~、ご飯出来てる?」
「おかえり、出来てるよ。」
火を落とした鍋の前で二人を待つ事しばらく、手荷物をぶらさげながら二人が歩いてきた。
健がオレに話かけたが、その後ろの真一に元気がない。
―どした?
タケルは短髪でスポーツマンタイプ。身長が175くらいで冒険者としてありふれた高さ。
平均的な武器片手剣とカイトシールドを装備する戦士をしている。
軽そうに見えてストイックなリーダー。一人称はおれ。
真一は昔はメガネをした勤勉なタイプだったんだけど、現在は視力が良くなり裸眼、見た目からして秀才タイプなのに極めて不健全な性癖があったりするのが玉にきず。身長は170でテクニカル重視の槍戦士をしている。
一人称俺。
ちゃんと日本人らしく三人とも黒髪黒眼だよ。
2人とも土産に肉を持ち帰ってきたが、腹へったと言った健はオレの作った鍋に視線が注がれている。
だが、かすかに香る言い難い臭みに眉間にしわが寄るのを感じた。
「…なにか貰ってきた?」
「デカいハスキー犬みたいな奴の肉が配られちゃった」
真一が力無く答える。
「どおりで…。」
肉食動物の肉は食べられなくはないが独特の臭みがあるので好みが別れる。
因みにオレはこのニホイが臭いから好きではないのだけど、真一は犬が大好きだったから抵抗感パネェらしい、調理さえしちゃえば大丈夫らしいけどね。
でも、向こう(日本)にいたなら普通に食われねーわ。
ようは諦めって奴だの?
「ご飯食べてから、燻製にしとくよ」
「そうしてくれ」
「…頼むよ」
幸い2人も同じ意見のようだから大丈夫、冒険者曰わく酒に合うらしいのだが、生憎オレたちは酒を飲まない。
口にするのはほとんどが日本茶と同じ方法で煎じた葉っぱを薬缶で煮だしたお茶。
こちらでは薬湯なんて呼ばれる。椿や柿の葉っぱやらを混ぜたものだから体に悪いと言うことはないから茶葉を纏めて作り出し毎日口にしている。
健康的だと思う?でもそうしないと他に飲む物がないんだよ。
そもそも、こちらの酒はアルコール度数が高すぎて飲めないし、紅茶のようなteaは高すぎて手が出せない。
甘い物が飲みたい時は村で買ったミルクに砂糖を入れて飲むくらいだね。
砂糖とミルクは個人でアイテムボックスに保管しているから勝手に飲むのさ。
ミルクを購入したのはひと月は前になるのだけど二人のインベントリの中にあれば腐敗腐食劣化をしないので、手持ちがなくなったら新鮮なのをわけてもらうのだよ。
インベントリって便利だね。
さぁさ、とりあえずご飯にしよか。
◇
鍋に小麦と野菜をぶちこんだだけの簡単おじやがこっちに来てからの主食、腹が減ってるのか大概夕飯は無言の行を行う事になる。
時間はあるから、夕飯をしっかり食べてから話をすればいいからねぇ。
「ご馳走様。」
「いただきました。」
「お粗末様でした。」
食事を済ませたら各自で洗い物を水桶にいれてもらう。
そしたら、すぐにオレは器を水で洗い流して、布でふいてから空にした水桶ごとアイテムボックスにしまうんだよ。
戦闘は二人に任せにしてこういった雑用での支援に徹しているのが現状なのだけど、二人から不満を言われないのが救いではあるよ。
というか、なんか知らんがオレが同行すると魔物に遭遇しない、遭遇出来ない。
マジ理由はわからないが、魔物的にオレはクサい(・・)らしくてオレの周囲から逃げてく。
二人もなんだかオレを戦闘に参加するのを良しとしていないし、装備も軽いレザーアマーと刃渡り四十センチの草刈り用のナタくらいしか渡されてない。
後は、出刃包丁。
最初の頃は普通に戦闘に参加しようとしていたんだけど、あきらめて食事のや二人の身の回りの支度をする方向で行くことになった。
そのおかげで、ウチはギルドでは二人のコンビ扱い。オレは二人の庇護下にいると思われているようなのだよ。
まぁ、クレクレやハイエナ扱いされてるんでなければいいや。
女子力だけ(・・)は、ピコピコ音を立てて上がってきているのは間違いないような気がする。
◇
「それでは一晩適当に燻しまーす。」
「「おー。」」
叩いたりつついたりして硬さを出来るだけ少なくした肉をスパイスや香草で包み、泥から固めて作った燻製窯に吊して火をいれる。
一応焼くと燻すの違いは理解してます。
「それじゃ、おやすみ。」そう言うと二人はリヤカーの中に入って行った。
まず日暮れから寝るのは歩き回った二人。
コレはオレから提案した事で、三人の時でも、二人が起きるまで火の番人をして明け方近くに交代してできるだけ二人の疲れを残さない事にしている。
そう、オレは人目がなければ、背中におぶって運ばれる事に躊躇はない。
それにしても、暗くなったばかりなので周りは騒がしい。
酒盛りする集団に囲まれて踊りを披露する人なんてのもいる。
オレたちは、冒険者レベルや人数的問題から野営地の中心近くを与えられたから、騎士団のテントもそんなに離れていない。
外周を固めるのは経験の長いベテランが率いるグループや騎士がメインだ。
騒いでいるのは中心近くの中級者や若い連中ばかりだから、全員が酔いつぶれて夜襲に気づかないなんて事はそうそうおこらないだろう。
オレが居るだけでもこないけどよ。
では、周りが賑やかな間に他の作業もすませてしまうか。
アイテムボックスから取り出したのは、簡易ポーション作るための道具と薬草。
ぶっちゃけてしまえば滋養強壮剤だね。。
地球とちがい素材が含む魔力の影響でかなり即効性の高い物が出来上がる。
さらにウコンを混ぜると二日酔いにメチャクチャ効きます。
普段なら買わないのだろうけど、従軍中であるからか結構売れる。
二日酔いで苦しんでる人には悪いが、毎日廃人だらけで環境的には感謝したいところです。
一本逝っとく?