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魚群#20

収穫のないまま浜辺に戻ると、健はインベントリから巨大魚を取り出し「焼いといて」と、皮鎧についた血を洗い流しに海辺に向かった。


エラから下しかない巨大魚はタラとブリの合いの子みたいな感じでキモい。


「うあ゛あ゛あ゛あ゛…」


「影丞、ゾンビみたいな声出して解体しないでよ」


これだけでかいと、内臓が生々しいから泣きそうな気持ちになりながら三枚におろしていく。

「気持ちわるぃひぃぃぃ」


「聞こえてないね」


サンマとかならまだしも、ブリ以上の大きさになると取り出した内臓が…内臓が…。


しっとりツヤツヤ、プりゅプりゅしてるのをバケツに入れると、ブルルルンとコチラ側に溢れ出てきェええええっ!?


「ひゅごいた!?」


ズザザザと後ずさると「動かないから、落ち着こうね?」と真一はオレの肩を抑えて笑う。


不幸中の幸いか、巨大魚はブリとかトンボマグロみたいな身で、鯨とかみたいなほ乳類な肉でないから耐えられた。

異世界に来て初めて解体をしたけど、ミイラの関節みたいなヒレとか気持ちワルいよ…。


なんとか捌いて、ぶつ切りにした身で串焼きを始めると健が走って戻ってきた。



「真一、囲まれてるから影丞隠して」


「は?」


健の言葉に、オレの喉から素っ頓狂な声が漏れたが「そうなると思ったよ」と呟く真一はそう驚いていないらしい。


「ああ、さっきから浜辺に集まって来てるとは感じてたけど、こっちにくるかな?」


二人がオレを背中に隠すようにインベントリが出した剣を構えた。


モグラみたいに砂の中を移動している個体がいるのか、波打ち際からモコモコと砂が隆起していく。


そういや解体した魚は鎖骨はなかったけどヒレの付け根にこぶが出来てがやたらと肩(?)が発達してましたね。


海から直接陸に上がってくる個体はパクパクと口を動かしながら近づいてくる。


大腿筋あたりまでヒレでゴリラみたいに胸ビレをつきながら、ナックルウォークしながら此方にゆっくり進んでくる。

普通なら退路になりそうな森を振り返ると、魚の目玉が爛々と藪から突き出ていた。


隠れ切れてないっつーか無駄にキモい。


「魚にしかみえないけど、回り込んだり役割分担してるし知能はあったりするのかな」


「いや、サメだってなんだって群で移動するなら襲い方くらいあるだろ」


真一と健がボソボソと小声で話をしている間にも包囲が狭まっていく。

ヒラメやら待ち伏せするし群のサメはクジラも襲うから知能というより本能だけでも十分集団での狩りはできるだろうね。


「もし、亜人とか半魚人だったらどうしよう」


「そんなの、いちいち考えてられるかよ。ありゃどう考えても人にゃみえねぇよ。」



ライオンだってなんだって肉食系なら人並みの知能はなくてもやり方くらい伝わってるだろうし、人の定義の場合は知能より“知性”だろうね。


「ギルドで、浜辺にはナントカギンって魔物の縄張りがあるから気をつけろって話してたからな」


「…サハギンじゃなかったかな」


サハギン(下等魚人)群で移動するが知性はなく陸に上がれる魚と分類されている。

危険度は少ない。


ハイサハギン(上等魚人)になると腕と足があり、モリや骨で武装し危険生物に指定されている。


「まだ魚みたいだし食えなかないだろ」



魔物だから大丈夫なのか人でないから大丈夫なのかわかんないけど、さっきの無意識カウンターがオレたちの初の“殺人”でないことを祈るよ。


とは言え、異様に盛り上がった砂浜と浜辺に打ち寄せられるように増えていくサハギンに、オレですら手を出したほうが良くないかと思い始めた頃健が、「慎重になりすぎてヤバす」とか呟いた。もうあれだ、待ちすぎて敵が集まり過ぎてにっちもさっちも行かない状態だよ。

一斉に飛びかかってきたらやばいね。


「魚を食べたくて海に来て、魚に食われて死ぬとか最悪」




「海ん中でサメとかシャチに囲まれてるよかましだから大丈夫だ」


大丈夫って、比較対照おかしくないですか?見えてる連中が“ガチガチガチガチ”歯を打ち鳴らして始めてるからかなり怖いんだけど…。


「日本ならまだしも、今のおれらにゃただの魚とかわらないって事だよっ!」


飛び交ってきたサハギンに健が剣を振ると、サハギンの直線上にあった砂浜が爆ぜて隠れていたサハギン達が空高く打ち上がった。


えぇぇっ!?何だそれっ!?


「…おぉ?ギルドの“初級剣術”も思ったより派手な技だったな」


「そこは地力が違うからだと思うよ」


真一はフォンフォンフォンフォン槍を振り回し、その衝撃波でサハギンが無差別に爆発していく。


いやちょっと、二人のこのチートぶりは何ですか?



「影丞、ぼさっとしてないで石を拾って海の幸に投擲しろ」


「え、あ、はい」


健に促され石を探して砂浜に這い蹲る。


砂を掘り返して探すが拳大の重い石か貝殻しかみつからない。

「石あったー!」


数分探して手頃なサイズの石を発見したら「…終わったからもう良いぞ」と二人に肩を叩かれる。


戦闘は砂浜を掘り返してる間に終わったいた。


悔し紛れに海に投擲。

ジュッと熱したフライパンに水を落とした時みたいな音がして辺り一帯濃い霧に包まれた。


霧の中食料を回収し飢えたまま眠りにつく。


海水が蒸発したのか岩場に大量の塩がこびり付いていた。


―これが噂の岩塩に違いない。

ブルゴーニュの岩塩が有名ですね。


ハカタの塩はアルゼンチンとかチリ産などと言う眉唾物の噂がありますが…。


―オレは信じない

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