高所恐怖症?いや無理でしょ
影丞がオチた。
健が高く飛び上がった後、物凄い悲鳴を上げながら気絶した。
普通のヒロイン目ならを瞑って健にしがみつき“きゃー”って叫ぶと思うんけど、そこはやはり女の子ではない影丞は“ぴょおおおおっ!?”ってヒヨコが雄叫びをあげたらこんな感じなのかなって言う悲鳴を上げた。
着地した健は背中に垂れ下がってバンザイしてる影丞の足を離みながら地面に落ろした。
目を見開いて口は“お”の形のたままの影丞は、“百年の恋も冷める”ってこんな感じかと思える壮絶な表情で気絶していた。
「…惰弱な」
健がなんだがものっそい蔑んだ目で影丞を見てるけど、確実にお前のせいだから。
俺らなんかは自力のジャンブに慣れたからあの高さ大丈夫だけど、影丞は大気圏突入した隕石みたいな石が蒸発する投擲が出来る変なん特技あるけど、身体能力は一般人より劣る影丞にいきなりあの高さ無理だよ。
最初から高いところにいればそれなりに覚悟も出来るだろうけど、予告なしであの高さまで飛び上がったらどうなるかぐらいわかるよね。
若干ながら滞空してる間に、見る見るうちに顔色変わっていったのが遠目でもわかったくらいだし、相当な恐怖を味わったのだと容易に想像できる。
たしか、失神とか気絶するのは、恐怖とかで精神が壊れるのを防ぐために脳がブレーカーを落とす現象だっててテレビでやってたし、肩に乗っかってた影丞は健より目線も高くなってたし仕方ないよ。
「せめて垂直じゃなくて山なりに跳んでやればいいのに…」
「…いや、意外と喜ぶかなと思ったんだよ」
眉を八の字にした健が溜め息をつきながら「やりすぎたかな?」と呟いた。
「明らかに“人の”限度超えてるから、次は手加減してやろうな?」
健ならオーガやゴーレム相手にマッスルバ〇ターか“桃太〇ストライク3”とかみたいな必殺技投げで楽々粉砕に出来るよ。
「妙に力が入ってさ加減が難しいんだよ」
「まだ体に馴れてないって事か?」
健が思ってたより高く跳びすぎただけって事?俺も健もやたらと身体能力高くなったから感覚が追いつかないのはわからなくはない。
「いや、どっちかてーと親戚の子供がいる時みたいな…」
「年上らしい良いとこ見せたい…と」
「そう、それっ!!」
いやまぁ、やたら頑張ってリフティングする親戚の兄さんの感覚とかわからなくはないけど。
「…そんなもんを影丞に仕掛けてどうすんの」
「いや、なんかこう負けたくないとか…」
張り切るってるのはいいけど、健はムキになって遊んであげてる最中に泣かせるタイプか…。
「適度に抑えて負けてやるくらいの優しさがないと、その内影丞に“も”嫌われるよ?」
「…なんで嫌われてるってわかった?正月に来る度に遊んであげてた子なんか逃げてくようになったし」
経験談は要らないよ?
「ちゃんと加減しろ、マジ喧嘩したら影丞じゃ勝てないんだからな」
まぁ、影丞なら殴りかかるより、口利かなくなるとか子供みたいな反抗するのだろうけどね。
「おれは、あの投擲があればおれも世界も滅ぼせると思うけどな」
ああ、確かに音速じゃ投げた瞬間に小石も蒸発しないもんね。第二宇宙並みの速度で発生した衝撃波が大地を抉るとか鬼過ぎるよ。
「影丞ならやらないわ」
性格的に“軽く”でも人に向かって投げたりとかしないだろ。
消しゴム借りたりでも、お前なら目の前からでも消しゴムを投げて寄越すけど、影丞だと机に置いてくからな。
ただ、“ありがとう”っていいながら差し出した手をスルーして必ず机に“ガッチリ置く”なんか「こうすれば落としたりしないから」とか言って絶対に手に渡さないのが謎だけどさ。
石橋を叩いて渡るって言葉あるけど、影丞なら、橋を叩いて調べてる人がいたら、“壊れてる”と断定し橋を迂回して余所へ行くだろうね。
そして二度とその橋に近寄らない。
三人でテレビ一緒に観てた時に、で昔の子供達が滝に飛び込む遊びなんかしてたりしてて、影丞にやりたいか聞いた時なんか、「滝ツボの中を調べて岩とかないのを確認しても“深いなら絶対やりたくない”って言い出す始末。
いくら低い滝でも滝壺は結構深いとはいうけど、“溺れる”“怖い”“怪我したくない”どれか一つあればもうやりたがらないから影丞は分かり易くていい。
健だと一度は無理やりにでも落とすだろうけど、影丞のその精神はコッチにいなら大事だと思うよ?
どこかの誰かは影丞を少しは見習え。
◇
目を覚ました影丞は、俺に抱きついたまま離れなかった。
震えてたり泣いたりはしなかったけど、かなり怖かったみたいだった。
案の定というかなんというか、3日ほど健とは口をきこうともしなかった。
だが、健が近寄ると“フシャー”威嚇したり、髪の毛がバッサンバッサン威嚇する尻尾みたいに揺れ動くのは如何なものか?
影丞の髪の毛にちょっとではない変化が現れた気がする。