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タイトル決定に伴い、さりげなく【どくだみ】をリスペクトする話しをする回

お茶を作るには、お茶っぱをもみし抱くようにしながら乾煎りする。


オレも“どくだみ茶”をそうやって作っているから大丈夫だ。

そのお茶っぱをピリパリと揉みスーパーで売ってるバジルの粉程度の細かさのどくだみの粉を作る。


花が咲いてるシーズンに、どくだみの花と一緒にお茶っ葉を作り置きしとくとちょっとハイカラな事をした気分になれます。


ダシを取った鰹節をカラカラに乾燥させ、どくだみ茶の粉と乾燥させた鰹節に塩を少々加え乾煎りしたら“ふりかけ”の完成。


ダシをとってしまった後の鰹節とは言えどなめてもらっては困ります。

なんと、このふりかけはお湯にとかせば、お吸い物に早変わり。


どくだみは“毒痛み”数ある草の中でも屈指の毒消し効果があるので体に良いのだよ。


故に、どくだみだけでテーブルを制圧しても害はない。


どくだみの天ぷら、ザリガニとどくだみの油炒め、どくだみのコンソメスープ。


「そして、新作“みんなが大好きどくだみのふりかけ”でございます」


厨房からふりかけを持って戻って来たらだれも箸をつけないで待っていた。

“先に食べてていいよ”と、いっておいたのにね。


食堂は、外の喧騒が嘘のように静まり返ってる。

雅美ちゃんが健に顔を寄せ「…これは、報復かもしれません」と、小声で耳打ちしているのが良く聞こえた。


実際そのつもりである。


ザリガニ依頼に苦労したのは、身内の仕業だった。


宿に帰った時には一匹残らず調理された後で、ザリガニの殻に至ってはエビ油ならぬ《ザリ油》になっていて原型を留めているザリガニはどこにも居なかった。


そして《ザリガニパーティー》は普通にうまかった。


そして今日、外でザリガニ探しで半ば泣きそうな気分になってきたときに“どくだみ”がやたらと目について“そうだ復讐をしよう”と、思いついてしまった。


まぁ、川縁や湿気たような場所によく生えてし、目に入って当たり前っちゃ当たり前。


追い詰められた人間の考える事なんか似たりよったりなんだろうけど、異世界に来てからオレをここまで追い詰めてみせたのはザリガニが初めて、つまりザリガニは第一級危険生物に勝るとも劣らない驚異の生き物に違いない。


なんと恐ろしい。根絶やしになるまでザリフライを食べなければ…。


それはともかく、なんにしてもまずい物は許せんかったからちゃんとした、どくだみ料理を仕上げて出したオレの努力よ報われよ。


「どくだみのエキスパートとはオレの事、いただきます」


「「「「いただきます」」」


「嫌な前置きしましたね。いただきます」


一人だけ別の事をくちにした気がするが、その場に居合わせた者は例外なく神へ贖罪を求める愚者のように両手を合わせ箸をとる。


まぁ、いただきますに込めるのは、贖罪じゃなくて感謝の気持ちだから“食材への贖罪”と言うネタが使えないのが難しい所だの。


中にはホントにお祈りしている者も居たかも知れないし、飯前のいただきますは、ほとんど習慣だから、正直な話オレはいただきますの時にはなにも考えてないよ。


「あ、意外においしい」


影丞の美味しい復讐は静かに幕を開けた。


―意外にとは失礼だな。



「…味は悪くないと思うんだけど?」


「比較的ウマいと“思え”るけど、山盛りのどくだみ料理ってのはないと思うのよ…」


そう答えるハルカさんは、早々食事を終えて食後の“普通のお茶”に移っている。


雅美ちゃんに言わせれば「匂いが無理」らしいんだけど、味は悪くないと思うんだけどなぁ。

まぁ、葬式か通夜みたいだったのも最初だけで、みんな普通に食べてくれているお陰で食べ残しの心配はしなくて良さそうだ。

「みんなが言うほどまずいとは思わないですけど、美味いとも言えないのがなんとも…」


常駐組の一人である《安井かな》黒髪のツーテールで、ウチのグループに数少ない可愛い女の子なのだが、かなちゃんのツーテールもなんとなく“へにょ”っとしている。


女子の方が食べ物には五月蝿いから、どくだみパーティーには思うところあるのかもしれないし、まずないと言うことがない訳がないのだろう。


どうやら、復讐のつもりだった行動は両刃の剣だったようで、、作っといてなんだけど同じ匂いしかしないとかでオレ自身も食べ飽きた。


健と真一が普通に食べてるのは、普通に料理されてるからかな?


茹でただけのどくだみを山盛りにして出されただけなら怒るだろうけど、昔から食べ慣れてるから文句を言うほどでもないんだろうね。


いや、この二人だと茹でただけのどくだみを《おやつ》として間食にしてたから、文句も言わないで食べるだけ?


まぁ、ネコジャラシの穂先の種を採取してゴマの代わりにする事を考え(実行)たりもしたしな。


植物で手をだしてない種類は、この辺りに生えてないと言う理由でアロエとかサボテンみたいな多肉植物くらいかね?


アロエは小麦粉と練って布でくるんで首回りに巻けば、熱さまシートみたいな役割してくれるんだよね。


それだっても、店にはカラフルなバージョンが普通に売られてるから、必要になったら買えばいいだけなんだけど。


あるなら便利なんだけど、わざわざ買うほどまでは欲しくないって感じ?


ギルドの掲示板に出してある高額報酬依頼の野菜類に関しては、是非とも欲しいレベルだから出してるんだけど見つからないねぇ。


でも、そこらに生えてるような草で腹が満たされるならそれでいいじゃん?


オレどくだみ好きだよ?


デザートに草餅ドクダミが控えている事を、まだ彼等は知らないのだ

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