色に染まる
竹を一抱えほど集め、身の丈程の長さに切りそろえた物を、土間にある台所の梁にロープで吊す。
渓流釣りの竹竿を作るための工程に必要な事で、まともに良い物を作る為にはこれから数ヶ月単位で燻す必要がある。
枯らしただけの竹と燻された竹では粘りも張りも雲泥の差がある。
この釣り竿を買うために歩き回ったのだが、タモや網はあるものの竿は探しても見つからないので自作すると言う話になった訳だ。
まぁ、現状ではニスやニカワを塗りたくり木綿糸を巻きつけて簡単な釣り竿を作ったけど文句あるか?
限界張力は解らないが三キロくらいの物なら難なく持ち上げられた。
リールは円筒の糸巻きに取っ手をつけ針金を通しただけ。
一キロの魚なんで釣れただけでも大したもんさ。
500のペットボトルサイズなんてなかなか釣れないし、キスやハゼなんて100とかしかないもんね。
大物がかかったらまず折れる前提で複数本用意して海に備える。
ついでに竹の先に釘を日本糸を巻きつけニカワで固めた銛も作ったさ。
ゴムないから投げて当てるつもりらしいけど刺さるのかな?
まぁ、オレと違って二人の身体能力は大分向上してるみたいだから当たりさえすれば大丈夫なんだろうけどさ。
遠距離と回復にステ振りしてなきゃオレTUEEEEEとかなってたのかな…。
弓は領主に許可を取らないと鏃さえ買えないらしいし、それすらも人数制限が上限になってるからあかない限り無理だって話されたから、弓は当分使えない。
腕力的にナイフとか短刀くらいしか使える武器が全くないからちょっと残念。
…ナイフ投げればいいのか?とか考えてた事もあるけど、普通のナイフですら一本五千円相当だからな~。
試しに一度投げたら、抜くときに根元からパッキリ折れて投げナイフ禁止されちゃったからの。
鉄の強度的な問題はないらしいし斜めに刺さってたらしから投げ方に問題あるらしっす。
この辺りで鉄製品に使用されてる鉄は良質な部類で悪いものじゃないって話だから遠距離攻撃の補正と投擲はまた別々みたいだし、なれる前に破産しそうだ貴重品での投擲は止めた方が無難。
気休めに石拾ってポケット入れて歩いてるが、本気で投げると手元で石が灼熱して三メートル先で消えて遅れて後方から衝撃波が発生する謎仕様なんだが…。
水切りなら川が割れたりロクすっぽ飛ばなかったり、力加減が100か0かしかないみたいなバグ発生中。
健達は、腕力で拳大の石が二百メートルは飛ばせるけど、オレはある程度軽くないと投げる事すら出来んから、遠距離・近距離の違いでマイナス補正がかかっとるみたいだ。
でも、三人ともステータスとか見れないのはなんでだ。
異世界補正ならステータスは基本の筈なのになんでそう言うのないんだ。
やっぱ、神様に会わなきゃ便利機能は手に入んないのかね?
それでも、健達はインベントリらしき空間が使えるんだけどねえー。
ま、インベントリがありさえすれば半年や一年間くらいの魚を釣り上げて生のままでもくさらずに保存出来るわけね。
基本的に商人とかは腐敗有りのアイテムボックスで、海の幸が此方に来ることは稀。
基本的に海に面した街まで半日かかるから生魚は川魚オンリー。
もともと、肥沃な大地に恵まれていてアイテムボックスとか便利機能があるから、保存が効く干物とか発酵食品の利便性が無いみたいね。
…う~ん、豆アジとかボラで一年分とかでも寂しいね。
カラスミも作り方わかんないし、ソーダ鰹とか、サバとか釣れてくんないかな…。
お刺身食べたいなー。
焼き魚も無いみたいだけど、皮が焼けたとか、斑尾の色がぼやけただけで魚の商品価値が落ちるとかシビア過ぎ。
基本料理が湯通しされた川魚とかだからあの紫色の汁が落ちないわけであって、川魚の模様は色毎に切り分けて煮詰める事で染色の材料にもされてるんだそうだ。
そんな、染色に使われるくらい色落ちする魚はやっぱ怖いわ。
染められた布は数ヶ月かけて臭いが抜かれるそうで、反物とかは加工されてない綿の黄ばんだ白色以外の製品は値段が高いのだそうだ。
まぁ、全部が全部皮で染めてる訳じゃないらしいけど、鮮やかな紫色は聖職者なんかに好まれる色であるらしくかなり高値で取り引きしてるらしいらしいよ?
―この生臭さ共めっ!?
まだ続く