岡山 桃子(1)
「お団子を頂戴! そしたら勉強教えてあげる!!」
「いやいいよ。俺去年お前にテスト、全勝したし」
「むっ!!」
47の少女たち
第5話「せいぎのみかた」
始業式の日から数日。
早くも明日、休み明けの一斉テストがある。
教科は国語、数学、英語の3つだけだが、春休み中ずっと遊びほうけていた俺にとっては、大問題なのであって…
「なりけり、ってなに? なんの語尾? 萌え的な?」
「千葉、それ違う。なりけりってのはなりふり構わず、の親戚みたいなもので」
「…眠い」
……とりあえずテスト勉強をするために、図書室まで来て、
「もう分かんない! なんなの国語って! 日本語なんて日本人が勉強してどうなんのよ!! あんたもそう思うわよね埼玉!!」
「しょうがないよ。今回の国語の範囲、何故か古文の内容まで入ってるんだから…しょうがないよ(諦めの瞳)」
「すぴー…」
べ、勉強を…しているわけで…
「ああもういい!! 国語は捨てる! 狙うは英語よ!!」
「だいたい国語できない人は英語もできないよね」
「すぴー…」
……。
しゅ、集中できない…
千葉三葉、埼玉欅、滋賀伊吹。
図書室に行こうとしたら何故か彼女らに捕まり、なぜか彼女らも図書室で勉強しようとしていたみたいで、偶然にも図書室で同じ席に着いたので、まぁ…一緒に勉強する事にしたのだけれど、
「こ、こいつら低能過ぎる…」
何と言うか、こう…危機感と安心感がごっちゃごちゃ。
「はぁ…」
「ん? なにため息ついてんのよ本太郎? あれ? なりけりが分からないの?」
「違うよ千葉ちゃん。俺はお前らの学力が…」
「やっぱり古文は意味わかんないわよね? ほんと。紀貫之って何者?」
「…えっ? なんで紀貫之限定?」
千葉ちゃんは古文…ってか勉強そのものが苦手だ。
が、なぜかどうでもいいものは覚えていたりする。
「ね…こ…すぴー…」
「伊吹に至っては寝てるし…」
今日も彼女は裏のおんぼろ倉庫で寝ていた。
「もう…補習でいいや。帰ってゲームしよう(遠い目)」
「ケヤキ…諦めるなよ…」
「うん。だからケヤキって呼ぶなよ(まだ遠い目)」
「…こりゃ重症だな」
もうみんな、早くも限界を迎えているらしい。
「…はぁ」
そんな時…
「おやおや~? お困りかい本太郎?」
「…どっから湧いて出た?」
「ふっふっふ! 正義の味方は背後から現れるものさ!」
「…そうなん?」
「うわっ! 冷たい!!」
俺の背後に、1人の女子生徒が湧いて出た。
「なんかお困りなら、この正義の味方である岡山桃子がお団子1つでなんでも助けてあげるよ?」
「…別に、いいや」
「だから冷たい!!?」
また1人、めんどくさい奴が増えた…