滋賀 伊吹(2)
「また猫と一緒に昼寝か?」
「うん。今日はあったかくていい天気だし……」
「だからってさ、始業式サボってまで寝るなよ」
おんぼろ用具倉庫で寝ていたのは、滋賀伊吹という1人の少女。
本太郎の同級生である。
「……猫と寝るのはあったかくてもふもふで気持ちいい」
「だろうけどさ」
この用具倉庫は今や野良猫のたまり場と化している。
たくさんの野良猫が我が物顔で倉庫を占拠し、ゴロゴロと寝ていた。
「……猫はいい。なにをしても自由。ずっと寝ていてもいい」
「半分くらいはお前の願望だろ」
「私…猫になりたい」
「おう、分かったから早く教室へ戻ろうぜ」
「うー…眠い」
「寝るな! これからホームルームだぞ」
「……くぅ」
「寝た!!?」
「…っは!」
一瞬。
一瞬だけ、意識が飛んでいた。
本太郎はちゃんと回らない頭で辺りを見渡す。
「…え? ここ、用具倉庫?」
「…くぅ」
隣で寝ているのは滋賀伊吹。
「え…まさか、俺、寝ちゃってた!?」
とっさに思い立ち、制服のポケットから携帯を取り出す。
そして、時間を確認…
「あああああああ!!!!」
どうやら本太郎も寝てしまっていたらしい。
この用具倉庫で。
「え!? 俺、いつの間に寝てた!?」
全く記憶にない。
滋賀伊吹を呼び戻しにきて、でまた伊吹が寝てしまい…
「そっから先の記憶がない…」
足元には大量の野良猫が。
「マジか…はぁ」
本太郎はため息をついた。
「やっぱり伊吹といると気が抜けるっつーか…」
昔からそうだった。
伊吹といるといつも気が抜けて、こう…
「…まぁ、もういいか」
本太郎はその場に再び寝ころんだ。
「…寝てやる」
午後5時。
程よい気温の中、本太郎は目をつぶった。
「くぅ…」
そして伊吹は猫を枕にずーっと寝ていた。