沖縄 流(3)
『ダンスの練習や本番に対してやる気が起きず、私が居てもみんなに迷惑をかけるだけになると思われるので、今日から体育祭が終わる日まで暫く引き篭もります。よしなに』
ライトチームの初レッスンの翌日、蛍から届いたメール。
「…ぉ……ぉぉ」
いやもう絶句ですよ、絶句。
「マジか…あの野郎、また引き篭もりやがった…」
「お〜お〜、今日はライトチーム全滅だねぇ〜」
その日の放課後、体育館。
相変わらず梅雨明け間近ながら、ジメジメとした空気の中、今日も体育祭に向けてのダンスライブレッスン。
みんなしっかり体育着orジャージ姿で、まあイヤイヤながらこうして来ている訳だが、
「日野プロデューサ〜これどうなってるのかな?」
総監督、沖縄流の尋問タイム。
3チームからなるライブチームのうち、ライトチームの4人が何と誰も来ていない事実。
千葉ちゃんは浦安へ
蛍は引き篭もり
伊吹はどっかで寝てる
高知先輩はまた果たし状が来たらしく
日野プロデューサー、弁明の時。
「え、えーっと。その、あー…」
悲しいかな、弁明の論が浮かばず。
「日野プロデューサ〜?」
相変わらず満面の笑み、ながらも何処か黒いオーラをチラつかせ、目前まで迫る総監督。
「いいのかな? 日野プロデューサーがしっかりみんなをプロデュースしてくれないと、アレだよ? 粛清だよ?」
「しゅ、粛清…」
「うん粛清〜! 取り敢えず、手始めにこの写真をばら撒く」
と、この場で総監督のみ夏服の学校制服を着ている故に、スカートのポケットから1枚の写真を取り出した。
俺は視線を斜め下。爪先を見たまま顔を視線を上に向ける事が出来ず。
だって怖いんだもん。
しかし総監督、俺の視線の内に写真をそっと、そっと差し出す訳で。
何の写真だ…と、チラッと写真の方へ意識を向けt
「あああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
なああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?
「へへっ♪ どうかな? やる気出た?」
ニコっと笑う総監督。
その無垢たる純粋な笑み、状況が状況なら惚れるレベルのキュートさだ。
が、今は状況が状況なので恐怖にしか感じない。
「待って、総監督待って! この写真何処で? え!!? 何で!!? ウチに監視カメラでもあるの!!?」
「日野プロデューサー顔真っ赤だよ♪」
「いやいやいやいやいやいやッ!!?」
衝撃たるや、常人の理性を壊し、言語を奪い、焦りと恐怖と羞恥で脳がオーバーヒート。
世界が暗転。
震えが、震えが止まらない。
「…何の写真なんですか、ソレ?」
と、外野の山形さんが訝しげな顔で横からスルっと…
「待ってダメッ!!!」
北陸新幹線の最高時速並みの速さで総監督から写真を奪取。
「ああっ…ちょっとプロデューサー! 強引過ぎ〜!」
突然の事に不満を漏らす総監督は放置。
俺は写真を何重にも折りたたみ、体育着のハーフパンツのポケットにイン。
「…何の写真だったんですか?」
山形さんの目は若干引いていた。
「……何でも、ない」
プライベート。人権。
諸々の概念が、総監督には欠けていると思う。




