秋田 小白(1)
日野家の両親は共働きである。
両親ともに朝8時には家を出て、ともに帰ってくるのは早くて夜19時頃。
残業が入れば21時過ぎもザラだ。
そんな家庭環境故に、1人息子の俺、日野本太郎の夕飯はだいたい買ってきたお惣菜をチンして1人で食べる事が多々。
もう昔からの事で、1人で夕飯をとる事に対し別に寂しさとかは全然感じていないのだが、
たまーに、本当たまーに、
たまには…温かい食事ってモノを食べてみたいな〜って思ったりなんなり。
47の少女たち
第11話「あたたかいごはん」
『こんばんは日野くん。もう今日のお夕飯は済ませてしまいましたか?
もしまだでしたら、これから山形さんと一緒に神奈川さんのお店にお夕飯を食べに行こうと思っているのですが、宜しければご一緒にいかがですか?』
とある初夏の日の晩。
相変わらず両親不在の自宅で夕飯どうしよう…と考えていた俺の所に、一通のメールが届いた。
差出人は、秋田小白。
俺と同じく都道府県学園に通う高校2年生。同級生だ。
「…なんでまた急に?」
と思った事を独り言で呟きつつも、絶賛夕飯にお困りだった身としては丁度良い誘い。
メールの返事は言うまでもない。
秋田さんとは親密…とまではいかないが、そこそこに仲良くやってるつもりだ。
流石にご飯誘われたのは今日が初だが(事実今俺めっちゃ緊張してる)学校ではたまに皆々と一緒にお弁当を食べたりしているくらいだ。
秋田小白…都道府県学園の高等部2年生の中では恐らく1番の美人。
小顔で肌も白くてモチモチ肌で…非の打ち所がないとよくケヤキが嘆いている程だ。
だから…学園内ならまだしも、こうして放課後にご飯行こうとお誘いを受けて…緊張がパナい。
「…落ち着け俺。変に思い上がるな俺。だって山形さんも一緒だし、何より食事場所が南の家だぞ。そんな気は無い事を今から察せ俺」
と、自己暗示よろしく儚い期待を振り払いながら、初夏故のジメッとした空気の夜道を歩き…目的地の、神奈川南の実家でもある『中華料理店 カナガワ』の前へ。
「……あっ、日野くん! こっちです!」
と、目前に見えた中華料理店の前でこちらに気付き手を振るあの乙女は、
「ごめん、ちょっと遅れました…」
別に集合時間にギリギリ遅れてはいないが、女子を待たせてしまった事に対しの気遣い&自己非難で遅れた程で謝る俺。
目の前にいる…秋田さんに対して。
「いや別に遅刻してませんよ。まだギリギリセーフです」
と、優しい口調の秋田さん。
「それに遅れたって私は怒りませんよ」
本当、朗らかな笑みで…まるで優しさの塊のような秋田さん。
美人で性格が女神で優しくて、本当に非の打ち所無し。
「…全く、女子を待たせておいたクセに、へらへらして」
と、大天使秋田さんのお隣にいる、ちっぽこ娘が口を出す。
「いやごめん…山形さん」
秋田さんとは逆に、明らかに不機嫌そうな態度を見せる…今回のご飯の同伴者、山形光。
年は俺の1個下、結ちゃんと同じく都道府県学園の高等部1年生。
「全く…小白先輩は慈悲でああ言ってるんです。本当だったら女子を待たすなんて、お説教モノですよ」
山形さんはプリプリ気味。
山形さんとは実はあんまり親しい中ではなく。
最近知り合ったばかりで、後輩ながら呼び方は山形「さん」だ。
凄く因みに。
俺から見た山形さんの印象。それは…
「もう日野さんの事は放っておきましょう…それよりも小白先輩! 早くお店の中に入りましょう! 私お腹ぺこぺこで…」
「ふふっ、分かったわ光。日野くんも早く中に入りましょう」
切ない顔でお腹を摩る山形さんに優しい微笑みを浮かべつつ、秋田さんは俺を促し、店の中へ。
それに連られ、笑顔で秋田さんの隣に引っ付き、店の中へ入る山形さん。
山形さんの印象…それは、
「本当…秋田さんのとりまきみたいだよな…」
山形さんは、秋田さんLOVEなのだ。




