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富山 蛍(1)

「何だ、今日も富山は出席していないのか」


都道府県学園、朝のHR。


ウチのクラスの担任である関東武蔵の点呼による出席確認に皆々が答える中、1つ返事の無い席が。


「全く…新学期が始まってもう2ヶ月。出席していない日の方が多いな…富山は」


ぶつぶつと小言を言いつつも、点呼を再開していく関東先生。


俺…日野本太郎は窓際の1番前、この教室内において今現在唯一誰も座っていないその席を眺めつつ、ため息を吐く。


「…あの引き篭もりめ」




47の少女たち


第10話「くーるなひきこもり」





「いやー今日もいい天気だね! こうも晴天だとなんか…身体が勝手に動いちゃうよね!」


「やめろ桃子、隣を歩いてる俺までバカに見えるだろ」


軽快なシャドーボクシングを行いながら、俺と並列して歩く岡山桃子。


「いいじゃんいいじゃん! 晴れてる日は外で身体動かす日だよ! そのまま悪のアジトに乗り込んで正義のヒーロー大活躍だよ!」


「晴天の如きその屈託の無い無垢な笑顔…お前には何を言っても通じそうにはないな」


相変わらずシュッ、シュッ、っと口で風を斬る音を出しながらシャドーボクシングに勤しむ脳内万年晴天娘。


恥ずかしいからやめてくれ…って言っても、桃子にはそういう感性が無い故に絶対に止めない、多分。


はぁ…と、ため息を吐きつつ、学校の放課後、夕暮れ間近の街を桃子と共に歩いていた。


…今、向かっている場所へと。





街の郊外、新興住宅地の一角。


まだ建てられて新しい、立派な二階建ての家だ。


家の門のところには表札、そこには「富山」の文字。


…我が都道府県学園の不登校&引き篭もり生徒、富山(とやま)(ほたる)の自宅である。


「へぇ〜、ここが蛍のお家なんだ。立派だね!」


おおぉっ、と二階建ての富山家を見上げる桃子。


「本太郎が連れてくる場所だからてっきりヒーローの秘密基地か何かだと思ったけど、まさか蛍ちゃん家だったとはね」


「お前最初に言ったよな、学園出るとき最初に言ったよな、蛍の家行くって俺言ったよな」


脳内いつでもスクランブルな自称ヒーローは放っておいて。


富山蛍。


都道府県学園の2年、成績は優秀で運動も並々。


特にいじめ等も無く、至って普通な学生なのだが。


何故か昔から引き篭もりの癖があって…


「…取り敢えずインターホン押すか」


今日富山家に来たのには理由がある。


学校で配布されたプリントを学園に来ていない蛍へとお届けに来た、が建前で。


実際は別にいじめとかも無いんだしいい加減学園へ来いよ、という…まあつまり説得である。


恐らく蛍は様々な登校拒否に関する言い訳をしてくるだろう、と予測される。


あー言えばこう言う。こー言えばあー言う。

引き篭もりの定石である。


適当な言い訳ばっかり言うんだよな。


そんな中…その蛍説得に対し、こちらの切り札になるモノがあって。


「家の入り口に門とか…悪の親玉のいるアジトっぽくてヒーローテンション上がるね!」


「少し黙っててくれないか」


切り札…それはケヤキでも千葉ちゃんでも宮城先輩でもなく、桃子を同行者に選んでる時点で察して欲しい。


蛍は…こういう明るいだけが取り柄みたいな、グイグイ来るタイプが苦手なのだ。


苦手…いや違うな。


何と言うか…蛍に対して桃子。ではなく、


こういう状況には桃子、と言うか…

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