高知 龍子(1)
この都道府県学園において、怒らせると怖い、ヤバい人が3人いたりする。
1人目は宙。鹿児島宙だ。
意外や意外、宙はキレると中々に手がつけられなくなるタイプ。
頭に血が上り、全くと言っていいくらいに話を聞いてくれなくなる。と言うか手が出る。危ない。
まあ、めったに怒る事はないのだが。
2人目は秋田さん。秋田小白。
物語の概念を壊す発言をすれば、まだ本格的な登場は先なので省略。
そして3人目。
その3人目こそ、今まさに俺の目の前、そこにいる人…
「おい、日野。今暇か?」
「は、はい…?」
「…暇ならちょっとツラ貸せ」
「は、はい…?」
47の少女たち
第9話「ばんちょうのせいしゅん」
高知龍子。
都道府県学園高等部3年にして、この学園の番長を張る…いわばレディースの総長みたいな人。
その手にはいつも竹刀か木刀かが握られており、一昔前のスケバンよろしく長めのスカート。
肩までの長さに切られたセミロングの髪は校則ギリギリレベルの焦茶色。
座り方はヤンキー座り。
鋭い目つき、眉毛は識別ギリギリ可能なレベルの薄さ。
本当に何か…一昔前なのだ、この人。
でもまあ、よくよくお顔を見ると中々の美人。
眉毛をくっきりとさせて、その仏頂面を直せば多分ミスコン狙えるレベルだと俺は踏んでいる。
そんな高知先輩に捕まり、
何故か体育館裏へと連行された俺。
さっき学園のロビーの自販機でジュースを買っていたら後ろから声をかけられ、半ば強制的に連れて来られた。
「…なぁ日野」
「な、なんスか高知先輩…」
何か怒らせる事したっけ…?
生憎高知先輩とは昨年ちょっと色々あって、そこそこに仲は良い。
が、やはり相手は都道府県学園の番犬こと高知先輩。
不用意な発言が招くタコ殴り処刑の恐怖は常にそこにある。
そんな心配をする俺を横に、竹刀片手に視線をキョロキョロと忙しなくさせる高知先輩。
「お前…確か土佐と仲良かったよな」
「土佐先輩ですか?」
鋭い目つきの先、高知先輩の眼にはいつもの喧嘩っ早い威勢は皆無。
…土佐先輩とは高知先輩と同じくの、都道府県学園高等部3年の男子生徒。
ちょっとコワモテな、正直俺みたいな平凡地味〜な生徒からしてみたら近寄り難い、そんな感じの先輩だ。
まあ高知先輩も十分近寄り難いんだけど。
で、その土佐先輩と俺は家がご近所。
ってだけであって。
「いや…別に土佐先輩とはそんな仲良いって程じゃなくて…本当廊下で会ったらういっす。って挨拶するくらいのレベルで…」
あんまりあの人には近付きたくないのが本音。
「そもそもあんなに怖い人、そんなに関わり合いが…あんまり良い噂とかも無いですし…」
「あァん?」
不用意な発言とは、すなわち会話の地雷とは大体突然爆発するもの。
踏んでから気付くものである。
「お前今なんつった? オイ」
「待って高知先輩、待って待って近い…」
気が付けばかなり近くまで詰め寄られていた。
その眼光は…まさに怒りを露わにした鬼だ。
「お前土佐の何が分かってンな事言ってんだオイ? 斬られてぇのか、アン?」
「スミマセン…何かスミマセン…」




