島根 結(1)
47の少女たち
第8話「あめのひ」
6月の半ば。
世間は梅雨のど真ん中。
1日中ジメジメした空気の中、ふと気が付けば曇天から滴り落ちる、雨雫。
晴れる気持ちも雲で覆われ、テンションの上がらぬ毎日。
雨で得する事なんて、体育の長距離走がなくなるくらいだ。
ずっとずっと、止まずして降り続ける雨。
雨…嫌だな…
「6月と言えばジューンブライド! 色々とラブが実っちゃう季節なんですよ、先輩!」
「おぉう、そうかそうか…それはよかったな」
「雨ばっかり故に、相合い傘とか、雨宿りとか、気になるあの人との急接近キュンキュンポイントだっていっぱいあるんですよ⁉︎」
「おぉう、キュンキュンポイントだな」
「…もうっ、ちゃんと話聞いてます? 先輩⁉︎」
「…ジューンブライドとか、なんでこんなジメジメとした嫌な季節に結婚なのか…俺にはイマイチ理解が出来ないよ」
1日中雨だった今日。
俺、日野本太郎は中々に気分が晴れないでいた。
確かに、3限の体育が長距離走から体育館での卓球になった時はガッツポーズして喜んだりはした。
けど、雨の恩恵なんてそれだけだ。
登下校時には制服やズボンの裾がビショビショに濡れ、
狭い道を行くのに傘がまぁ邪魔。
いちいち足元の水溜りに気をつけなければならず、
蒸れた湿気は嫌な暑さを肌に与える。
「梅雨はやっぱり嫌だな…はぁ」
現在、6限までの授業が終わり、下校中。
隣には、1つ年下の後輩ちゃん。
「そんな溜め息ばかりしてたら、良い運だって逃げちゃいますよ、先輩」
傘の下からこちらの顔を覗き込みつつ、ふふんっと鼻を鳴らし、視線を前に戻す後輩ちゃん。
名前は島根結、都道府県学園高等部の1年生だ。
そして、都道府県学園生徒会の庶務でもある。
「良い運だって逃げちゃいますし、キュンキュンな恋愛運だって逃げちゃいます。溜め息ばかりの男の人はモテないですよ?」
「おう、グサリとくる言葉をありがとう結ちゃん。おかげで余計に溜め息が…」
俺の負のオーラMAXの発言に、むぅー…っとした顔で睨み付けてくる結ちゃん。
あらやだ中々に可愛い。
今日は放課後の生徒会もなく。
授業も終わり、さっさと帰ろうとした矢先、昇降口にて結ちゃんとばったり。
途中まで帰路が一緒なので、こうして一緒に下校をしている訳である。
結ちゃんとは生徒会役員同士故にそこで知り合い、少しはお喋りする仲だ。
「と言うか先輩、今日は埼玉先輩や千葉ちゃん先輩と帰り一緒じゃないんですね?」
「ん? あぁ、あの2人は今日掃除当番だからさ。別にそんな終わるの待ってまで一緒に帰る程のアレじゃないし、別に…」
ふーん、と俺の答えに何処か引っかかってる様子の結ちゃん。
蛍光ピンクの傘をクルクルと回し、雨粒を円状に拡散発射。
「へぇ…っと言うか、先輩いっつもあの2人と帰ってるから、てっきりどっちかと付き合ってるのかとばかり思ってました」
「…言うほどそんなに毎回毎回一緒に帰ってはないと思うけど」
と言うか何だ?
え、お付き合い?
あの2人のどっちかと?
「…先輩、なんか顔が引きつってますよ?」
「おっとマジか表情に出てたか」
俺のこの表情を見て察したのか、ちぇっ何だつまんないの…みたいな表情を見せる結ちゃん。
残念ながら俺にスクープ的スキャンダルは皆無。
「埼玉先輩も千葉ちゃん先輩も可愛いんだし、どっちかと付き合っちゃえばいいのに」
隣でぶつくさぶつくさ何かを言ってる結ちゃん。
結ちゃんは、自称恋愛マスター。
恋バナ大好きな、おませさんなのである。




