千葉 三葉(4)
千葉ちゃんは遊園地が大好きである。
遊園地そのものが、遊園地の全てが大好きなのである。
絶叫系アトラクション、メルヘン系アトラクション、ミニゲーム系アトラクション等の遊具は勿論。
売店のフードやお土産、園内にいる着ぐるみマスコット、入り口のワクワク感を煽るゲート。
あの遊園地の雰囲気が好きなのだ。
遠くまで遊びに来た、あのワクワク感。
いつもとは違う、非日常。
遊園地で遊ぶ事、それに対し特別な意味を彼女は持っている。
「絶叫系ばかり最初に回ったのは、まだ空いてる午前中だから並ばずに乗れるって意味で回ったのよ。そんな事すら気付かなかったわけ⁉︎」
あの後、千葉ちゃんプレゼンツ、絶叫系ばかりの三半規管崩壊ツアーは暫く続き。
遊園地内の大方の絶叫系を乗り終わる頃には、陽は真上。お昼を少し過ぎたくらいだった。
「いやだからって…連続し過ぎだよ…もう…なんか…目が…」
遊園地内のフードコート。
元気元気な千葉ちゃんと桃子はアメリカンドッグ片手に次に回る場所を模索。
伊吹と宙はジュース片手に半ば放心状態。
ケヤキは…トイレに行ったっきり戻って来ない。
「情けないわよ本太郎! ここの遊園地は絶叫系が6つしか無いからこれで終わりだけど、もっとある所ならもっと乗ってるんだから!」
千葉ちゃんのその声には元気しかない。
体力化け物かよ。
「そうだよ本太郎! 高い所や急降下に慣れておかないと、正義のヒーローは務まらないよ!」
ビシッとライダーポーズをとる桃子。
こいつの声も元気以外の何も無い。
「いや…俺は別に正義のヒーローになりたい訳じゃ…」
「正義のヒーローじゃなくたって、男ならこのくらいでへこたれない! もっとしっかりしなさいよ!」
千葉ちゃん手厳しい…
「…善処します」
今の俺に反論する力などあらず。
とにかくこの気持ち悪さを何とかしたい…
と、思ったら。
「お馬さんの背中…硬い…寝れない…」
「いや伊吹これメリーゴーランドだから。寝る場所じゃないから」
メリーゴーランドの馬の支柱にもたれかかり、安眠の態勢を模索してるかのように、あっちに寄っ掛かりこっちに寄っ掛かりな伊吹。
後ろから見てると、暴れ馬に必死にしがみ付き振り落されんと努力するカウボーイもといカウガールみたいな…
「…硬い」
「いやだからこれ寝る場所じゃないから」
遊園地の大方の絶叫系を乗り終わり。
2巡目覚悟でフードコートを出たら、お次はまさかのメルヘン系ばかりのメンタル和やかツアーが幕を開けたのだ。
「遊園地は絶叫系ばかりじゃないの。特別な日を特別に満喫するには、メルヘンチックなアトラクションだって欠かせないのよ!」
カボチャの馬車の窓から満面の笑みでこっちを見るツーテールお姫様。
「しかしまぁ…この歳でメリーゴーランドはなんか恥ずいな…」
こそばゆい感じ。
「分かってなさ過ぎよ本太郎! こういう時はね、童心に帰るのよ。アンタは今、白馬にまたがった王子様。大切なプリンセスを迎えに行く、イカしたプリンスなの」
「イカしたプリンスねぇ…」
ノロノロとグルグルと。
ひたすらに円上をひた走る白馬(無機質)。
果たして何時になったらプリンセスの所まで辿り着けるのやら。
「わっはっは! アタシは黒馬に跨り正義を駆ける騎士! 人呼んでヒーローナイトぉッ!」
俺の横を走る、童心に帰る以前に今まさに童心の中を生きてる自称ヒーローは高らかに笑っていた。
「ほら本太郎も、岡山くらいはっちゃけちゃいなさいよ!」
「えっ、アレくらい⁉︎ さすがに拒否のレベルなんだが…」
「いいからいいから! もっと楽しみなさいよ、せっかくの遊園地」
「…なら千葉ちゃんも『ガラスの靴を履いてこれから舞踏会。素敵な王子様と一緒にホップステップジャンピングよ!』ぐらいのテンションでさ、ほら」
ドカっ!…と。
カボチャの馬車からガラスの靴…ではなく、落花生の刺繍が入ったスニーカーが飛んできて、
俺の頭に直撃した。




