鹿児島 宙(2)
「なんだと……伊吹は赤点無かったの!?」
「うん」
今日は赤点補習授業の日。
ここは補習室。
だいたいこの部屋に来るヤツは教科書参考書片手に暗い顔してやってくるのだが……
1人スッキリした顔で、通学鞄を片手に帰る準備Maxな滋賀伊吹さん。
「なんでだ……お、お前、なんだかんだで1番勉強中に居眠りしてたのに……なんで」
「うーんと……ねぇ、多分だけど……」
「た、多分……?」
「……睡眠学習」
「……は?」
「結局(ってかやっぱり)ケヤキも千葉ちゃんも桃子も補習か」
「やっぱりって何よ!」
「まぁ、このアタシは正義の味方だし、みんなの補習を手伝っちゃうぞ!」
千葉ちゃんは不機嫌、桃子は謎にご機嫌。
なんなんだこの温度差は。
補習開始5分前。
補習室の右側は国語、真ん中は数学、左側は英語の赤点を取った者が集まる。
俺は英語で赤点を取り、他3人は国語で赤点を取ったため、集合位置が狭い教室内とはいえ遠い。
「なんで本太郎は国語赤点取ってないの……」
「いや、取りたくもないし! 何いってんのケヤキ!?」
「だーかーらー名前で呼ぶなぁ!」
「うわ何か久しぶりにその返しきた!」
「たまには」
「自分で言うなよ」
こういう(どういう?)絡みを交わしつつ、補習始まりのチャイムが教室内に響く。
「じゃ、お前らちゃんと補習受けろよ」
「ふん! 本太郎に心配されなくてもちゃんとやるわよ!」
「ふっふっふ、この正義の味方たるアタシはみんなの補習のサポートを!」
「私を名前で呼ぶやつには追試でも赤点を取る呪いを」
こいつら……
「では、今から英語の赤点補習講義を始めます」
そして始まる赤点補習。
「では出席を取ります。あいうえお順で……まずは1組、鹿児島さん……って、あれ!? いない!?」
そして行先の怪しくなる赤点補習。
「あの野郎またサボりか!? お前らちょっとまってろ、どうせアイツ地学室にいんだろちょっと捕まえてくる!」
そして早くも中断される赤点補習。
補習担当の先生は慣れた感じで急ぎ足で教室を後に。
「……先生、あれ当分帰って来ないな……」
なんなんだ……
「相変わらず越後先生は甘いねぇ……アタシがいっつも地学室にいると思ったら大間違いなのに」
そして聞こえる、1つの女子生徒の声。
「……鹿児島さん、あんた何やってんの?」
声の聞こえた方向……掃除用具ロッカー。
「なにって、忍法サボり隠れの術さ」
そして開かれるロッカーの扉。
そのロッカーの中には、1人の女子生徒。
「越後先生はもう居ないね? よし今のうちに帰る」
「待って鹿児島さん! チャレンジャー過ぎるよ!!」
ロッカーの中から現れた女子生徒こそ、この都道府県学園生徒会会計の鹿児島宙である。
「本太郎、越後先生には内緒な?」
「ちょ、なっ……」
「じゃ、よろしく。しーゆー!」
「え!? ホントに帰るの!?」
鹿児島さんは沖縄会長に似て、かなり自由な人である。
「っ……もぅ……分かった、先生には言わない」
「お? まじで!?」
「が、宮城先輩には言う」
「うっ……お、お前、言うねぇ」
お互い腹の探り合い。
この鹿児島補習トンズら事件がこのまま成立したら、宮城先輩に俺が怒られるのだ、多分(監督不届きと言う理不尽)
絶対に逃がさない!




