3話
光子は兄小太郎と幼馴染風馬と祭りを楽しんでいた。
「あ、僕トイレ行ってくるわー。」
飲み物をたくさん飲んでいた小太郎はトイレに行ってしまった。
「みっちゃん。何か食べたい物ある?」
風馬が優しく光子に語りかける。
「うーんと、かき氷!」
風馬は、はいはいと頷いてかき氷を一つ買ってくれた。
「おいしー!」
夏の夜食べるかき氷は特別だ。
ーー食べながら光子は神田博の事を思い返していた。
"絶対についてこないでくださいねッ!!!!ついてきたら『大嫌い』になりますからッ!!"
そう博に告げた時、彼はひどく傷ついた顔をしたように見えた。
(な、何よ!あんな奴の事なんか!)
ぶんぶんと頭を振る。
ーなぜか彼のその顔が頭から離れない。
(…もしかしたら…傷つけたのだろうか?)
…あそこまで傷ついた顔をするなんて思わなかった。
いつも彼は飄々(ひょうひょう)しているから自分の戯言なんて相手にしないと思っていたのに…。
(こんなことなら博さんも祭りに一緒に行ってあげればよかった。)
「…おーい、みっちゃーん。かき氷溶けてきてるよー。」
風馬の声にふっと光子は現実に戻った。
「あ、本当だ!早く食べないと!」
かき氷が溶け始めている。
「何の考え事してたのかなー?」
「内緒ー!!」
「けちー!んじゃ、かき氷一口ちょうだい?」
風馬が口を開ける。
光子は『仕方ないな~』とスプーンで一口すくい、風馬の口に運んだ。…その時!
「…あら~!光子!こんなとこにいたのねー。探したのよー。」
姉聡子の呑気な声が聞こえてきた。
…その隣に…!
「…博さん…。」
なんと無表情の神田博がいたのだった。
(何で姉と博さんが一緒にいるんだろう…?)
姉聡子は村でも有名な美女だった。
そんな姉と博が一緒にいると絵に書いたような美男美女のカップルに見える。道行く人が2人を見て見惚れている。
…元は聡子と博はお見合い結婚をするはずだったのだ。本当はこんな光景になる可能性もあった。
ずきんと光子の心は痛む。
「な、何か用事?」
努めて冷静に光子は尋ねた。
「用事なんて大ありよー!…あんたねー…?」
聡子が言うのを博が止めた。
「…聡子さん。僕は光子さんに話があります。櫻木家にすぐ戻りたいんですが…。」
じっと聡子は博を見た後、『どうぞ。』と許可を出した。
「博さん。この部屋を使いなさい。静かに2人で話せると思うわ。」
博は聡子に礼を言って鍵を受け取った。
「あ、あの…私は帰るも何も言ってないんですが…。」
自分の話なのに蚊帳の外だった光子がおずおずと発言した。
「光子さんに拒否権はありません。」
博は妖艶な笑みを浮かべて言った。
※※※※
光子は重たい目を開けた。
(…ここは?)
「目が覚めましたか?」
博の存在を捉えた。
…彼が自分に覆いかぶさっているように見えるのは夢だろうか?
だんだん意識がしっかりとしてきて光子は自分の置かれている状況を理解した。
ー縛られた腕。
ー上からのしかかる博。
自分は部屋の中で神田博に襲われかけているようだ。
「…貴方が悪いんです。私を嫉妬させるから。」
博は微笑みながら光子の顔を撫でた。
光子はぞくりと背筋が冷える。
「お仕置きですよ?」
博はゆっくりと光子に口づけをした。




