10話
聡子は恭平と結婚し松川聡子になります。
櫻木藤作も後に2人の結婚を認め支援を送ってくれたので生活も安定してき、7人の子宝に恵まれ、幸せな家庭を築いていきました。
戦争で恭平は兵隊として戦地に行くことになるのですが、聡子は女一人で家庭を守りぬきました。
恭平が戦地から帰った後は2人で協力して松川家を栄えさせ、後に息子は村の村長をするまでになるのです。
※※※
平成○年の夏。
聡子の6番目の娘が孫も連れて里帰りして来ました。
聡子のひ孫に当たるその子は小学1年生。
お転婆でよく笑う所は聡子にそっくりだ。
「ひいおばあちゃんの恋の話ってステキ!!私もそんな恋ができるかなー。」
ひ孫はにこにこと聡子の座っている縁側に走って来て言う。
「なれるわよ。あなたはひいおばあちゃんの血を継いでいますからね。」
そう言ってやるとひ孫は嬉しそうに笑った。
ーー聡子は97歳。
愛する恭平が他界して10年の月日が経った。
恭平は照れ屋であんまり『愛してる』と言われた覚えがない。
だが言葉にはしなくとも態度で表してくれていたように思う。
あの日。
気を失った自分は夢見心地の中で恭平に『愛してる』と言われたような気がした。あれは夢だったのか現実だったのか。今となっては分からない…。
ひ孫が庭を走り回っているのを微笑ましく見ながら聡子は空を見上げた。
(恭平さん。貴方は私といて幸せでしたか…?)
真っ青な空を見上げて目をゆっくりとつむった。
"わ、私と友達になってください!"
"…はい。じゃ、聡子、よろしく。"
2人が始めて出会った若かりし光景が頭をよぎる。
『…聡子。』
ゆっくり目を開けると隣に恭平が座っていた。2人が初めて出会った頃の若さで…。
「…あら。恭平さん。久しぶりねー。どうしてそんなに若返ってるの?」
恭平は何も言わず微笑んでいる。
聡子は恭平が現れた訳を理解した。
「…そうね。私が寂しがらないように『迎え』にきてくれたのね。」
恭平はそっと聡子の肩を抱いてくれた。感触はないが聡子には居心地がよかった。
目を閉じてまた開くと恭平はもう居なかった。
「母さん。そんな所でうたた寝すると風邪ひきますよ。部屋に入ったらどうですか?」
6番目の娘が心配して声をかける。
「…そうね、ありがとう。部屋に戻るわ。」
聡子はそう言うと自分の手を見つめた。
ーー皺のある手…。
この皺は自分の生きてきた証…。
(…なんて素晴らしい人生だったのかしら。)
にっこりと微笑み、彼女は部屋へと向かった。
それから数日後。
彼女は眠るように息を引き取りました。
享年97歳。
彼女は明治、大正、昭和、平成とめまぐるしく変わる時代を生き抜き、たった1人の男性を生涯かけて愛しました。
彼女の人生はその後も後世に語り継がれていくでしょう。
End…
ひ孫が筆者になります。
完結しました。
ですが、もしかしたら2女光子と女ったらしB村の神田博の恋の行方を書きたいなぁと考える今日この頃です。
筆者も90代まで長生きするぞ!!




