1話
明治末期に村の大地主の家に待望の長女が産まれました。
父は藤作。母はウメ。
名前を櫻木聡子と申します。
のちに97歳まで生きるこの物語の主人公です。
たった1人の男性を生涯かけて愛し、幸せな人生を送りました。
彼女の人生は後々まで語られており、ひ孫の筆者も尊敬する人物です。
…と前置きはこのぐらいにして、物語を進めて行きましょう。
※※※
聡子はすくすくと育ち、小学校になった。
聡子の下には弟1人、妹1人も産まれ、長女としての責任感に溢れている。
「こらー!何、ウチの弟いじめとるんじゃー!!」
弟小太郎をいじめていた男供を鬼の形相で追いかける。
…少々お転婆な幼少時代を送っている。
「お前は、女なんだから喧嘩などしたらいけないと何度言ったら分かるんだッ!」
父藤作がものすごい剣幕で怒った。
…聡子が弟のいじめた男の子達を袋叩きにしたからだ。
「…でも父様。あの方々は、小太郎をいじめてましたのよ。」
躾通り、櫻木家の中では上品に振舞う。
実は父と母は首をかしげるばかりだった。
聡子と言えば…。
上品な物腰。丁寧な言葉。ゆったりとした動作。
櫻木家の長女として素晴らしくよくできた娘だと思う。
…なのに…。
周り近所からは『聡ちゃんがまた男の子蹴飛ばしてるわよ』や、『この辺で聡ちゃんに敵う強い人はおりませんわ。』と耳の痛くなる言葉を耳にする。
親の前ではか弱そうな笑みを浮かべているのだから、親も怒りながら『本当に聡子がやったのか?』と疑惑が駆け巡る。
親の前では筋書き通りの娘。
…だがその実態は、男勝りのお転婆娘。
父の前で聡子は美しい笑みを浮かべながら心の中では『あー、早く終わらないかなー。外で遊びたいんですけど。』と全然違う事を考えているのであった。