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転生した勇者(♀)と聖女(♂)の偽装ラブコメ

作者: 薫納豆
掲載日:2026/02/21

前世では勇者だった少女、

前世では聖女だった少年、

恋心の分からない2人の偽装ラブコメ。

「3年生の皆様、卒業、おめでとうございます」

「大学に進学する人や就職する人などがいるでしょう。

そして、この卒業式に対しての思いも、人それぞれでしょう」

「私、生徒会長の私は、先輩たちの卒業を心から祝福します。

卒業、本当におめでとうございます」


私は笑顔で言う。

壇上で、生徒会長からの言葉。

泣いている卒業生、泣きそうな卒業生、受験に失敗したのか焦っているような卒業生もいる。


生徒会長からの言葉、生徒会長の使命、か。


まあ、こんなものだろう。

普通は嫌なのに普通にしないといけないなんて。




卒業式後。


卒業生の3年生と最後の会話をしている後輩や、「この後どっか行かね?」と打ち合わせをしている卒業生たちとか。

皆、笑顔で楽しそうに。


そんな中、


「聖ちゃんっ、オレのスピーチ、どうだった?」

「凄かったですよ、勇くん」

「えへへ。オレ、頑張ったんだ」

「流石です。流石、世界の救世主」

「もー、言い過ぎだよ」

「ふふふ」

「ははは。本当に言い過ぎだって」

いや、本当に。


校庭で、オレ(今は私じゃない、式が終わったから)と1年生で後輩の聖ちゃん(今は♂)は仲良くする。


「本当に仲良しだよね、会長たち」「ラブコメだな、ラブコメ」

声が聞こえてくる。


「けど、あの会長も来年は卒業生か。寂しくなるな」

そんな声に、ついドキッとしてしまう。




そして、今、オレたちは図書館に歩いて向かっている。


「素敵でした、勇者様の言葉」

「はっ。

どこが」

「勇者様の言葉だからです」

「あっそ。誰もいないからって勇者とか言うのやめろよな、この世界じゃイタイ奴でしかないよ」

「誰もいないから、ですよ」

「こわいこわい」

「ありがとうございます」

笑顔で言われる。


正体がバレたら嫌だし、コレを野放しにしてたらどうなってしまうかわからないから、仕方なく学校ではラブコメをしている。


けど、本当は偽装。


オレに恋心は分からないし、コレは恋心じゃなく『信仰』だから、本当に偽装。


どっちも、恋心は分からない。

この人生も、前の人生も。


「てのは、どうでもいいんだよ」

オレはため息を吐き、うなだれる。


本当、どうしよう。


あー、どうしよう。


「どうしました? 勇者様」

「気にすんな」

この狂信者には絶対に知られたくない、オレの悩みは。

何をしでかすか、分からない。


しっかし、本当にどうしようかな。


普通は嫌なんだ、普通は。

でも、時間は迫ってきていて。


来年、オレは高校を卒業してしまう。

それまでに、将来の夢を決めないと。

普通じゃない夢、自由で、とにかく普通じゃない夢。


あと、あの高校も、何かオレの名前を残すような、普通じゃなくて、でっけえことをしないと。


というのに、夢もまだなく、でっけえことも未だしてなくって。


はあ。


不味いな。




図書館。


コレは、椅子に礼儀正しく座り、一心不乱に本を読む。イケメンやオッサン顔だったら不気味に見えたかもしれないが、多分可愛い系の顔だから、礼儀正しく、かしこまって座っても、不気味ではない。


オレは、隣にいる。椅子に座って。若干股を開いている。スカートだが、まあ、見えないだろう、何がとは言わない。


本を、オレは開いてみる。

適当に、目についた本。


読もうとする。


だが、集中できない。


…。


マジ、どうしよっかな。


将来が怖すぎる。

来年卒業だぜ? オレ。

勉強はできるから、そこはいいんだが。


そういう問題じゃないんだよなー。


「普通じゃないこと、普通じゃないこと」

「将来について悩んでいるのですね」

「いや、何でバレてんの」

「信者ですので」

真顔で言ってくる。


ふと、あのときを思い出す。


『勇者様は本当に素晴らしく、ボクの世界を救ってくれました。さあ、あなたも勇者様の素晴らしさを知って下さい!』


「初対面でアレだったよな、お前って」

「?」

オレを勇者と知らなくての、アレ。

本当にビビった。


もし、勇者本人がいなかったら、コレはただのイタイ奴で、いじめられるか、避けられるか、どっちかだったにちがいない。


だから、偽装ラブコメしてるんだがな。

恋心なんてないのに。


「勇者様は、将来に悩まなくても問題ありません」

「人いる人いるよ?」

「なぜなら、私が勇者様の学校での素晴らしさを、卒業した後、学校の皆に説くので!」

「やめてやめてやめて」

「前の怠惰な世界みたいにならないよう、頑張りますので、安心して下さい」

微笑まれる。


オレが魔王を倒し、自殺した後の世界は、だらけきった、怠惰な世界だったらしい。


まあ、魔王がいないからな、目標がなくなったから、だろう。


「オレの将来はどうしたらいい? 聖女サマ」

「私、ボクのお嫁様に」

「恋心分からないのに?」

「尊敬はあります」

「絶対ヤダ」


どうするか分からないが、コレ(狂信者)の嫁とか、屈辱すぎるわ。




『貴方は勇者として産まれたのです』

母、いや、アイツは言った。


『勇者として魔王を殺し、世界を平和にしなければなりません。それが、貴方の存在する唯一の理由です。それ以外に、生きる理由は貴方にはありません』

真面目に。


普通に生きることを諦めさせられた。

魔王を倒し、世界を平和にする、それしか考えさせてもらえなかった。


だから、だろう。


『僕の…僕の生きる理由は?』

魔王を倒した後、すぐ、思った。


『ははは、ない、ない! 僕に生きる理由はない!』

大笑いし、


『よし、死のう』

剣(相棒)を自分に刺し、死んだ。


魔王を倒すために生き、魔王を倒したら自殺した、そんな、オレの前世。


だから、普通に生きたくないんだ、この人生は。

自由に生きていいんだから。


普通じゃない、歴史に載るような、凄い人生に。


「いっそ時止めてくれねえかな」

「頑張ります」

「前世でもムリだろ、聖女様」

「ボクと結婚しましょう」

「絶対ヤダ」


てか、何で聖女も転生してんの?

前世では全く関わりのなかった聖女様が。

ありがとうございました。

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