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戦鬼の厨房(キッチン) ~伝説の魔剣は、老兵の包丁になりたいようです~  作者: 九条 蓮夜


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第48話 再生する不死鳥と、究極の親子丼

神殿の最深部手前。  そこは、壁も床も赤熱し、陽炎かげろうが揺らめく「炎の間」だった。


「あ、暑いです……! サウナみたいです!」 「いい火加減だ。ここならコンロはいらないな」


 部屋の中央には、燃え盛る止まり木があり、そこに一羽の美しい鳥が留まっていた。  全身が紅蓮の炎で構成された翼を持つ、伝説の神鳥。  『イモータル・フェニックス(不死鳥)』。  その体は老いることなく、死ぬ間際に卵を産み、その卵から新たな自分が孵化ふかすることで永遠の時を生きる。


「キェェェェェッ!!」


 フェニックスが翼を広げると、熱波が嵐となって襲いかかった。  ボルグは熱波を魔剣で切り裂きながら、目を細めた。


「あの鳥、ちょうど『転生』の時期だな」


 フェニックスの足元には、太陽のように眩い光を放つ一個の卵があった。  『サン・エッグ(太陽卵)』。  次代の生命力が凝縮された、究極の卵だ。


「親鳥の肉は、転生直前が一番脂が乗っている。そして卵は新鮮そのもの。つまり――」


 ボルグが地を蹴った。


「同時に食えば『親子丼』だ!」


 フェニックスが炎のブレスを吐く。  だが、ボルグは恐れずに炎の中へ突っ込んだ。  魔剣グラムが一閃。  フェニックスの首を斬り飛ばす――が、断面から即座に炎が噴き出し、再生しようとする。


「再生が速いな。だが、調理の方が速い」


 ボルグは斬った瞬間の肉を空中でキャッチし、再生が始まるコンマ1秒の間に、魔剣で細切れにした。  バラバラにされた肉は、もはや元の形を保てず、ただの「極上の鶏肉」となって鍋(ミミックの殻の残り)に落ちる。


「『千年醤油』と酒、みりん! 煮立たせるぞ!」


 炎の間の熱気で、鍋は一瞬で沸騰する。  グツグツと煮えるフェニックスの肉。  その肉は、煮込まれてもなお赤く発光し、生命力を主張している。


「そして、これだ!」


 ボルグは『太陽卵』を手に取った。  殻を割ると、中から溶岩のようにトロリとした、黄金色の黄身が現れた。   「グラム! 混ぜろ!」 『えっ? 混ぜる? 何を?』


 ボルグは卵をボウルに割り入れ、魔剣の切っ先を突っ込んで高速回転させた。


『回すな! 目を回すな! 我は泡立てホイッパーじゃないッ! 黄身が絡みつくぅぅぅ!』


 魔剣による超高速撹拌かくはんで、白身と黄身が絶妙に混ざり合う。  それを、煮立った鍋の上から回しかける。


 ジュワァァァ……。


 半熟、いや、黄金色に輝くトロトロの卵とじ。  それをご飯(リズが炊いておいた)の上に滑らせる。


「『不死鳥フェニックスの究極・親子丼』だ」


          *


 丼の中で、金色の光が渦巻いている。  卵は半熟のまま揺れ、肉はジューシーな輝きを放つ。  リズがレンゲで一口。


「……!!」


 カッ!!  食べた瞬間、身体の内側から爆発的なエネルギーが湧き上がった。  熱い。でも、心地よい熱さだ。  濃厚すぎる卵のコクが、弾力のある肉を包み込み、千年醤油の出汁と一体となって脳髄を直撃する。


「お、美味しい……っ! 疲れが……旅の疲れが全部吹き飛びました! 私、今ならフルマラソンしてそのまま空も飛べそうです!」 「不死鳥の生命力を直接取り込んだからな。寿命が10年は延びたぞ」


 ボルグもかき込む。  美味い。  命そのものを食べているような充足感。  これぞ、生きるための食事だ。


 一方、親と卵を奪われたフェニックス(の残骸)は、小さな炎となって消滅……しかけたが、食べ残した骨から再び小さなひなが生まれ、ピヨピヨと鳴いてどこかへ逃げ去っていった。  さすがは不死鳥、しぶとい。


『……おい』  グラムが死んだような声で言う。


『卵が……乾いてパリパリになってる。黄身の硫黄臭さが取れない』 『あと、さっき回転させた時、遠心力で目が寄った気がする』 「剣に目はない」 『心の目だ! もう嫌だ、早く普通の剣として扱ってくれ……』


 ついに神殿の最深部、『神の厨房』への扉が開く。  中から漂ってくるのは、これまで出会ったどの食材をも凌駕する、圧倒的な「食の覇気」。


「いよいよだな。……腹を空かせておけよ、グラム」 『我は食わんと言ってるだろう!』


 ラスボス登場。  世界を喰らい尽くす暴食の神と、戦う料理人の最後の晩餐が始まる。

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