表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦鬼の厨房(キッチン) ~伝説の魔剣は、老兵の包丁になりたいようです~  作者: 九条 蓮夜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/50

第47話 迷宮の擬態魔(ミミック)と、まるごと宝箱グラタン

神殿の回廊は、複雑怪奇な迷路になっていた。  壁には怪しげなレリーフ、床には踏んだら矢が飛んできそうなスイッチ。


「あっ! ボルグさん、見てください! 行き止まりに宝箱があります!」


 リズが指差した先には、豪華な装飾が施された黄金の宝箱が鎮座していた。


「待て。ここは『美食の神殿』だ。ただの金銀財宝が置いてあるわけがない」 「え〜? でも、すごくキラキラしてますよ?」


 リズが駆け寄り、蓋に手をかけようとした瞬間。  ギィィィ……!  宝箱の蓋が、まるで巨大なあごのように開き、中から無数の鋭い牙と、ギョロリとした目玉が現れた。  さらに、箱の底からワサワサと六本の太い脚が生えてくる。


「ギャアアアアッ! 箱が! 箱が私を食べようとしてます!」 「やっぱりな。『キング・ミミック・クラブ(宝箱蟹)』だ」


 魔物は箱に擬態した巨大なヤドカリの一種。  その外殻(宝箱部分)は、オリハルコンを含有しており、ドラゴンの一撃すら弾き返す強度を持つ。


「硬い殻だな。……いい『耐熱容器』になりそうだ」


 ボルグは魔剣グラムを構えた。


「リズ、下がってろ。箱を壊さずに中身だけを調理する」 『おい、無茶言うな。あの殻は魔法も弾くぞ』 「鍵穴だ。あそこが急所だ」


 ミミックが蓋をパクパクさせながら突進してくる。  ボルグはその巨体を紙一重でかわし、正面の「鍵穴」に向けて、魔剣の切っ先を正確に突き刺した。


 ズプッ!


 「ギシャアアア……」  神経中枢を破壊されたミミックは、ガクンと膝(脚)をつき、動かなくなった。  外装は無傷だ。


          *


 ボルグは動かなくなったミミックの蓋を開け、中身の処理を始めた。  内臓や牙を取り除くと、そこにはぎっしりと詰まった純白の「カニ肉」が現れた。


「すごい……! 宝石じゃなくて、お肉が詰まってました!」 「こいつは冒険者を誘き寄せるために、体内で甘い芳香を放っている。肉自体が最高級の甘みを持っているんだ」


 ボルグは、迷宮の天井から垂れ下がっていた白いスライム――『ベシャメル・スライム(ホワイトソースの魔物)』を捕獲し、その粘液(濃厚なクリームソース)を宝箱の中にたっぷりと注ぎ込んだ。  カニ肉とホワイトソースを混ぜ合わせ、先ほどのピザで余ったチーズを散らす。


「仕上げだ。……あそこの壁の穴から、定期的に炎が吹き出しているな」


 ボルグは、廊下に設置された「火炎放射の罠」を指差した。  そして、重たい宝箱ミミックを蹴り飛ばし、罠の射程内へとスライディングさせた。


 ボオオオオオオッ!!


 罠が作動し、猛烈な炎が宝箱を包み込む。  オリハルコンの殻はビクともせず、内部に熱だけを伝え、完璧なオーブンとして機能した。  数分後。  グツグツという音と共に、焦げたチーズの香りが漂ってくる。


「焼き上がりだ。『キング・ミミックのまるごと宝箱グラタン』」


 ボルグが蓋を開ける。  黄金色の焦げ目がついたホワイトソースが、ボコボコと泡立っている。  湯気と共に、カニとミルクの甘い香りが爆発した。


「わぁぁ……! 夢みたいです! 宝箱からグラタンが出てくるなんて!」


 ボルグは魔剣グラムを差し入れた。


『おい、まさか。スプーンか? 今度はスプーン代わりか?』 「熱くて触れないからな。すくって食うぞ」


 魔剣ですくい上げた熱々のグラタンを、リズの皿に取り分ける。  ハフハフしながら口へ。


「ん〜っ!! トロトロですぅ! カニの身がプリップリで、ソースが甘くて濃厚! 宝箱の味がします!(?)」 「殻に含まれるミネラルが熱で溶け出し、ソースに深みを与えているな」


 宝箱の四隅にこびりついた、少し焦げた部分おこげがまた絶品だ。  ボルグは魔剣の先で、器用に四隅をこそぎ落として食べる。


『……くすぐったい。やめろ、かどをカリカリするな』 『あぁ……ホワイトソースが……ルーン文字の溝に入り込んで……乾くとカピカピになるやつだ、これ』 「チーズの膜でコーティングされて錆びないぞ」 『そうじゃない! ベタベタする! あと匂いがクリーミーすぎる!』


 宝箱を空っぽにし、お腹も心も満たされた二人。  しかし、神殿の深層には、さらなる「熱気」が渦巻いていた。  通路の奥から、まばゆい光と、生命の鼓動が伝わってくる。


「……次の相手は、ただの魔物じゃないな」


 ボルグが目を細める。  そこにいたのは、死すらも超越する炎の鳥。  第48話、究極の「卵」料理が待ち受ける。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ