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君の瞳に映りたい~恋と錬金術~  作者: 石月 主計


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第11章第2節

-2-


次の日の夜。湊は宝飾職人の工房にいた。金の指輪がどれくらいの値段で売られているのか見に来たのだ。けれども、湊が持っている銀貨と銅貨、たった一枚の金貨を合わせても到底足りない。


湊は職人に謝って店を出た。途端に暗闇の中から誰かが抱きついてくる。


「クォーク、こんなところで何をしているんだ?」


ずっと会いたかった人。ぬくもりが体中に広がる。顔を上げると、ダブラーが真剣な眼差しで見下ろしていた。いつもとは違う態度に湊は戸惑う。


「指輪を見に来たのです」


「ふーん。結婚するのか」


冗談のつもりで言ったのだろうが、ダブラーの声は震えているようだった。湊は心配を打ち消すように首を横に振る。


「アルダス様が結婚されるのです。ミレイユ様と」


「なんで、おまえが指輪を買わなきゃいけないんだよ」


「それは……」


湊は、アルダスから指輪を頼まれた経緯を説明した。ダブラーはしばらく腕を組んだまま黙り込んでいたが、やがて重たげに口を開いた。


「クォーク。本当にそれでいいのか?」


良いわけがなかった。アルダスは自分の気持ちを知っているのに。けれども、湊の中でケリはついていた。


「僕は自分の実力を試したいのです」


と嘯く。


「実力?」


「銅や銀の指輪を金に変えて見せます」


「そんなことできるのかよ……。いや、おまえなら出来るかもしれねぇな」


ダブラーは面白がっているようだった。いつもの笑顔を見られて、湊はホッとする。


「分かった。俺も手を貸すよ。何でも言ってくれ」


湊が承諾するよりも早く、ダブラーは強く腕を引っ張っていた。

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