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【第11章】金色の指輪
──ミレイユは、はにかみながらアルダスに告げました。
「赤ちゃんが出来ましたの」
アルダスはしばし沈黙していましたが、ようやく微笑みを浮かべると
「そうか……ありがとう」
と優しくミレイユを抱きしめました。けれども、心の中では不安が過っていました。
(私は、彼女と子どもを食べさせていけるだろうか)
テーブルに積み上がった未払いの請求書が、アルダスの視界に入ります。
(私は錬金術師を諦めなければいけないかもしれないな)
アルダスは心の中で揺らいでいました。
『アルダスとダブラー:二人の錬金術師』第11章より




