表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君の瞳に映りたい~恋と錬金術~  作者: 石月 主計


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/69

第6章第1節

-1-


アルダスが店に復帰してから、評判を聞きつけた客がひっきりなしにやってきた。


「ここは最近、よく効く薬を作ってくれるんだってね」


「新しい弟子が優秀らしいわよ」


店の外には行列ができ、待ち人たちが噂話に花を咲かせる。注文書の山は日に日に積み上がり、湊は接客に奔走しながら、活気あふれる店内の様子に目を細めた。


あの日以来ミレイユは、まるで自分がアルダスの妻であるかのように振る舞っていた。店が混み合っていると、頼んでもいないのにカウンターの中へ入ってくる。


注文書の束を見るなり


「こんなに引き受けたら、またアルダス様が倒れてしまいますわ」


と湊をたしなめる。


「アルダス様から断るなと言われているのです」


「あの方は断ることを知らないのです。それを慮るのも弟子の仕事ですよ」


確かにその通りではあるが、湊は素直に受け入れられず、心の中で悪態をつく。


だが……


「薬の完成は、最長で一ヶ月ほどお待ちいただくことになります」


そう説明すると、客の顔は決まって曇った。


「そんなに待てないよ。あんたは作ってくれないのかい」


「アルダス様に認められていないので……」


「仕方ない。ダブラーにでも頼むか」


よりによってダブラーなんて。湊が悔しがっても止められないのがもどかしい。客は去り際に


「独立して店を持ったらどうだい。あんたなら、すぐにアルダスを追い越せるよ」


と言い残して去っていった。褒められているのだろうが、湊は苦笑するしかなかった。そもそも自分はアルダスを助けるためにこの店で働いているのだ。今ここで見限るなんて、そんなことできるはずがない。


ただ、自分も調合ができれば客を待たせずに済むのに、とは思ってしまう。そうすれば店の収入も増えて、アルダスだけでなく湊の暮らしも楽になるだろう。


閉店後、湊は注文書の束の厚さにため息をつく。どう考えてもアルダス一人では処理しきれない。アルダスが思う以上に湊は痛感していた。


「僕にも作れたら……」


ぽつりと漏らした独り言に、湊は慌てて口を押さえる。アルダスは調合に集中して気づいていないようだった。


この一ヶ月で、材料の分量や配合の仕方は頭に叩き込んだ。試したい処方もある。問題は、調合をする「場所」と「道具」だった。


「……自分の家なら、アルダス様にバレずに調合できるかもしれない」


湊は、ようやく思い至った。自分の手で、こっそり薬を作る環境を整えればいい。そう、器具さえあれば、自分の家でも調合ができるのだと。ちょうど明日は給料が出ると、アルダスは言っていた。仕事の帰りにでも、器具を売っている店に寄ろうと湊は決心した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ