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【第3章】二人の錬金術師
――アルダスは、夜も更けたというのに店の明かりを消していませんでした。村で流行り病の患者が出たという知らせを受けて、王都へ納めるはずだった薬をすべてそちらへ回すことにしたのです。
王都に納める期限は明日。間に合わなければ今後の依頼は白紙になります。けれども、彼は悩まずに即断しました。
「助けられる人を、まず助けよう」
翌日、薬は無事に村へと届けられました。助けを求めてきた村人は、アルダスへお礼を言います。
「アルダス様……ありがとうございます。これで、子どもたちも助かるでしょう」
アルダスは何も言わずに笑みを浮かべました。もう何度目でしょう。アルダスが人助けを優先するのは。そのたびに王都からの評判は悪くなってしまうというのに。それでも、村人の言葉にアルダスの疲れは吹き飛ぶのでした……。
『アルダスとダブラー:二人の錬金術師』第2章より




