第2章第2節
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乾いた薄切りのライ麦パン1枚に、干からびた薄いチーズ。そして癖のある何かのミルク。それが朝食のすべてだった。これではお腹がいっぱいにならない。けれども、この家庭ではこれが精一杯なのだろう。
「早く一人前の錬金術師になって、私に楽な暮らしをさせておくれ」
クォークの母親らしき女性は、縫物の針をせわしなく動かしながらぼやいた。「一人前の錬金術師になって」ということは、まだクォークは錬金術師じゃないらしい。父親はとうの昔に亡くなって、他に家族はいないようだった。
食事を終えた湊は、先ほどの部屋へ戻る。手作りかと思われるおんぼろな机の上を見ると、メモが置かれていた。生前に見ていたどんな文字とも異なるが、なぜか読むことができる。脳に直接、この世界の知識が流れ込んでくるようだった。
そこには明日の日付で「ダブラー様と面接」と書かれている。錬金術師のギルド「王立錬金術師同盟」からの推薦状も添えられていた。
どうやら今は物語が始まる前で、クォークはまだダブラーの子分になっていないらしい。このままでは物語と同じく、湊はダブラーの子分になってしまう。あんな奴の子分になるなんて。それだけは避けたかった。
けれども、今は湊がクォークだ。未来を選べるなら……と、湊は手当たり次第に服をまとって外に出た。




