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50.登校の日

今日から学校が始まる。

朝の天気は気持ちの良いくらいに晴れ渡っていた。


「ミーナ。準備はできているか?」

「にーに。バッチリ」

俺は妹に声をかける。ミーナは満面の笑みで、フラム師匠が贈ってくれていた新品のローブの裾を揺らした。


俺はボロではないが、それでもいつもよりも生地の新しい服を着ている。冒険者には見えないだえろう。

と言っても、俺たちが持っていくものは少ない。初日は特に持ち物はなく、必要なものは全て学校から支給されるのだという。


俺は腰に差した木剣の柄を確かめる。いつも佩いている黒曜刀に比べて軽いのが心許ないが、「学校に真剣を持っていくな」という師匠との約束だ。仕方ない。

ミーナも王都で買った新しい杖ではなく、以前から使っている古い樫の杖を手にしている。これも師匠の言いつけだ。


準備の確認も終わり、いざ出発となったところで、母さんから声をかけられた。


「ノア、ミーナ」

「母さん、どうしたの?」


母さんは珍しく、どこか不安げな顔をしていた。


「ノアとミーナはしっかりしているから、わたしは心配していないけど…」

そう言うと、母さんは台所の方をちらりと見る。


「…俺は、母さんの方が心配になってきたよ」


母さんは料理も満足にできない。今朝の朝食を作ったのも俺とミーナだ。

母さんが料理をすれば黒こげになり、食器を洗えば皿が割れる。そんな母さんを一人残していくのは、正直かなり不安だ。


(普段ならフラム師匠がいてくれたんだが…。早く帰ってきてくれ、師匠!)


「今日は昼過ぎには帰ると思うから。そしたら、俺たちが昼食を作るよ。じゃあ、いってきます、母さん」

「うん。いってらっしゃい」


俺たちは母に見送られ、家を出た。学校はグラッツェルから北へ、海沿いに歩いた場所にあると聞いている。そしてフラム師匠曰く、「見ればわかる」とも。


「にーに。フラム師匠の言っていた『見ればわかる』って、なんだろうね?」

「さあ。言葉通りなら、一目で学校だって分かるくらい目立っている、ってことなんだろうけど」


海沿いの道を歩いていくと、やがて森の向こうに、明らかに人の手が入った場所が見えてきた。

木々が切り拓かれ、きれいに整地された広大な平地。その奥に、どっしりとした二階建ての木造校舎が建っていた。


確かに、これなら一目で分かる。

広大な敷地は訓練場だろう。木造の校舎は座学を学ぶ場所か。

俺がそんなことを考えていると、校舎の前にすでに十数人の子供たちと、数人の大人たちが集まっているのが見えた。


「君たちも新入生かい?」

俺たちが集団に近づくと、人の良さそうな壮年の教師が声をかけてきた。


「はい。今日からお世話になります。俺はノア、こっちは妹のミーナです」


俺たちが軽く会釈をすると、教師は俺たちの名を聞いて、緊張したように顔をこわばらせた。

やはり、俺たちがSランク冒険者ミレーネの子供だと気づいたのだろう。


(うーん。やりにくいな…)

こういう時、どう振る舞えばいいのか、俺にはまだ分からない。

隣のミーナはもう教師への興味を失ったのか、同じ年頃の子供たちの方を興味深そうに眺めていた。


しばらくすると、全部で30人ほどの子供たちが集まった。リンデル周辺から集まったにしては少ないが、まだ始まったばかりの制度だ。こんなものだろう。


やがて、教師の一人が声を張り上げた。

「新入生諸君、よく集まってくれた! これよリンデル校の開校式を始めるぞ!」


俺たちは教師に促され、校舎の講堂へと案内された。そこでは、恰幅のいい初老の男性が、校長として俺たちを待っていた。あの体型は元冒険者だろうか?


校長の祝辞は、フラム師匠の受け売りのような内容だったが、子供たちの未来への期待に満ちていた。


開校式が終わると、担任教師が俺たちの前に立った。

「さて、明日からの君たちの授業の前に、まずはこの学校がどんな場所か、見て回ってもらおう」


俺たちは教師に連れられ、校舎の中を案内されることになった。

まずは座学を学ぶための教室だ。木の匂いがする明るい部屋に、真新しい机と椅子が並んでいる。

次に案内されたのは、雨の日でも訓練ができるという屋内の訓練場、そして小さな図書館だった。図書館には教科書の他にはまだ本がほとんどない。

本は高価だからな。この中で一番本を持っているのは、間違いなくミーナだろう。


校舎の外には、専門的なことを学ぶための施設もあった。

薬草を育てる畑と、それを加工する調合室。それから、武器の手入れや簡単な道具を作るための鍛冶場。


「これらが本格的に使われるのは、もう少し学年が上がってからになるだろう」と教師は言った。

ここが稼働するのはまだまだ先なんだろうが、才能や興味のある子供たちが手に職をつけるために学ぶことになるだろう。


一通り見て回った後、教師は最後に職員室と、それに繋がっている寄宿舎を指差した。


「あちらは我々教師が使う場所だ。何かあって家に帰れない時などのために生徒が泊まることもあるが、普段はみだりに立ち入らないように」


フラム師匠は「まだまだだ」と言っていたが、学ぶために必要なものは最初からきちんと揃えられている。師匠の周到さには、改めて頭が下がる思いだった。


今日は食堂で遅めの昼食をとり、帰宅することになった。

子供たちは喜んでいるのを見ると、やはり無料の昼食を目的に来ている子が多いんだろうなと思った。

お待たせして申し訳ありません…

正直スランプです。(この先のプロットとかは決まっているんですけどね、、)


学校の描写ムズカしいですね。。

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