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19.王都観光

次の日は王都観光をすることになった。

ミーナが行きたがっていた、書店巡りをすることになった。


ミーナは真剣な眼差しで魔道書を漁っている。たとえ立ち読みでも、知識を吸収しようということだろう。

俺はミーナほど魔法の才はないし、魔道書にもあまり興味がない。


「おかーさん、この本ほしい!」

ミーナは魔道書のいくつかをねだり、母さんに買ってもらっていた。

ミーナが魔法を覚えてくれたら、今後の俺たちの冒険も楽になるだろう。


戦いに関することについては母さんの財布の紐は緩い。

ミーナはいくつもの魔道書を買ってもらい笑顔満点だ。


俺は魔道書以外の本をペラペラと捲る。

その中で気になった本を捲った。


『大陸見聞録ー世界を最速で巡ったヴォルヴァー旅行記ー』


ヴォルヴァという人が、 旅先で出会った人々との交流や現地の食べ物、文化、そして遭遇した魔物についてまで事細かに記した旅行記だった。

これは価値のあるものでは!?俺は直感的にピーンときた。


「母さん。この本ほしい。」

「うーん。」


母さんはこと戦い以外に関することにはお財布の紐が硬い。


「ほ、ほら。この本には他の大陸の魔物や魔物の特徴について書いてあるし、勉強になると思うよ!」

「いいよ」


戦いに役立つと主張することで、買ってもらえることになった。

ちょっとずるいことだとは思っているが、こうでもしないと母さんが買ってくれることはないだろう。


その後もいくつかの書店巡り、ミーナはお気に入りの魔道書を買ってもらっていた。


「ノアは、行きたいお店はない?」


母さんがふと声をかけてきた。

うーん…実は行きたいところとか特に思いつかないな。


美味しい食事処があれば行ってみたいが、あいにく美味しいお店については調べてきていないし、どうせそういった人気の店は人が多くて入れないだろう。


「…あ、武器屋に行ってみたいかも」


俺はふと思いついたことを母さんに言った。

ここはなにせ王都だ。グラッツェルやリンデルよりも、量が多く、また質のいい武器もあるかもしれない。


俺は今の愛刀の黒曜刀に満足しているが、他にどういう武器が並んでいるのか興味がある。

ミーナも杖を新調したいと言っていたし、目を輝かせてこちらをみている。


「じゃあ行こうか。おすすめの店を知っている」


母さんは王都自体は初めての訪問ではないらしく、そういった店についてはよく知っているらしい。

母さんがよく知っている店というのが、武器屋というのがとても母さんらしい。


母さんがおすすめという武器屋の中に3人で入った。


「…いらっしゃい」


店に入った途端、店員さんが訝しげな目を向けている。

…なんだろう。母さんとミーナは気にしてないようだが、居心地が悪いな。


なんでそんな目をしてくるんだろうと思ったが、親子連れ、しかも10歳の子供たちを連れて武器屋に入るのは普通じゃないな。

まあ普通の家族がくる場所じゃないよな。


俺は居心地の悪さを感じながら色々な種類の武器を眺めていった。

普通のロングソード、長槍に短槍、長弓にクロスボウ。数は多くて、所狭しと置かれているが、全て手入れは行き届いているようだ。

俺は気になっていたものを探す。俺や母さんが得物として使っている刀が売っていないか探すのだ。

だが刀はとても少ないな。


俺は他の武器を使う気はないし、興味もあまりなかった。

王都とはいえ良い刀を探すのは大変そうだ。


「おかーさん、この杖はどう?」


ミーナが母さんに杖の目利きを頼んでいる。


「ふむー。いい木を使ってそうだし、いいんじゃない?」


使われている木の種類は分からないが、なかなかいい素材が使われているのは分かるみたいだ。

魔力の伝わり方が良さそうな、ミーナの新しい武器としては良さそうだ。


「これはシルフレイ大陸で伐採された、魔力を多く含んだ素材を加工した杖ですよ」


先程白い目で見ていたはずの店員が驚きの声で答えてきた。

母さんとミーナの目利きに驚き、俺たちが普通の家族ではないということに気づいたようだ。


「おかーさん。これほしい」

「いいよ」


即答であった。


値段は…高っ!グラッツェルでは家5軒は建てられるんじゃないだろうか?

母さんなら貯金はあるだろうし買えない値段ではないだろうが、即答で購入してもいいものなのか?


ただ冒険に関わるものだし、下手したら装備によって命に関わるものだ。

母さんの財布が軽くなるのもわかる。


「ミーナばかり買ってあげてるから、ノアも何か買っていいよ」


ミーナは今日魔道書を何冊も買っていた。そんな中俺は本一冊。

それを気にしたからか、母さんは俺にも何か買ってもいいと声をかけた。

別に俺はいいんだけどな。ただ、さっき気になった一振りを見つけていた。


「母さん、この刀はどう?」


今の黒曜刀よりも刀身が半分ほどの刀だった。

短い分、取り回しが良さそうだし、予備でもう一本指していたも良いと考えたのだ。


母さんは俺が指差した刀を手に取る。

母さんは刀を使っているからか、刀について見る目は厳しい。真剣な目で刀を抜き、刀身を吟味する。

しばらくすると刀を鞘に納め、


「いいんじゃない?」と言った。


母さんの目利きなら安心だ。俺はこの刀を買ってもらうことになった。

この刀も高かった。ミーナの杖ほどではないが、家3軒は建てられる値段だ。


母さんはギルドカードを出して精算する。

このギルドカードは冒険者ギルドに預けたお金をやり取りすることが出来る。

大金をわざわざ持ち運びしなくてもいいので、冒険者はこのカードをよく使う。


ちなみにこのカードは他人では使えない。

血魔法で本人確認しているのだ。支払う時に本人確認のできない、他人のカードでは精算できないのだ。


店員さんが高額な代金を、母さんがこともなげにポンと出すことに驚いていた。

普通の一家ではないことは見抜いたが、さすがに高額な武器を2本とも買うとは思いもよらないだろう。


ちなみに、今回に武器が買えるほどではないが、俺とミーナもそこそこお金は持っていたりする。

年柄年中冒険者ギルドの依頼をこなしているからだ。


フラム師匠から、子供の頃から金遣いが荒くなるのは教育に悪いし、また子供が大金を使っているのを見られたら強盗につけ狙われるかもしれないということで、俺とミーナの財布は母さんに預けたままだ。


店を出て、俺は早速刀を指す。

ミーナは杖を2本抱えている。

宿に帰るまでは2本持たなければならないだろう。


「にーに、ずるい」


俺と違って杖は持たなければならないからな。ずるいと言われても困る。


「ミーナ、俺が一本もってあげるよ」

俺はミーナから前の杖を受け取り、持ってあげた。


王都はすっかり夕日に照らされていた。

夕日を背に、俺とミーナは新しい武器にうきうきするのだった。

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