ある日突然に妖精が舞い降りた
ボクはどこにでもいる男子高校生。とくにこれと言った特技は無いし、外見も平凡・・・。とてもつまらない男だ。このボクは・・・。
後ろ向きな性格もあり、彼女がいた時期なんてない。
「野田くん。」
「うわっ!?日高さん。」
「これ今週中に提出だって。はい。」
「う、うん。分かった。」
僕にプリントを配ってくれた女の子は日高さんという。誰にでも分け隔てなく接する心優しい娘だ。
つまりこんな出来た人格の女の子にしか、僕は関わることができないのだ。
帰宅部の僕は、放課後には直ぐに家に帰っている。帰路で寄り道なんかしない。
「ふう。」
僕は小学生の頃から使用している学習机に座っていた。そしてとある異変に気づいたのだった。
人形がある。
何だろうか。僕はこんなものを持っていた覚えなはない。若い女の子の人形だ。とても可愛くて、おとぎ話の世界から飛び出してきたような服装だった。それにしてもリアル・・・。今にも動きだしそうだ。
そしてそれは動いた。
「うわっ!」
勿論、僕は驚いた。
「うふふ。」
その人形は脚を組んで、消しゴムの上に腰かけていた。
「な、なんだ・・・!」
その非現実的な光景を、まだ僕は受け入れられなかった。
「お兄さん。私を飼ってくれないかなあ。」
極めてチャーミングな笑顔で、とんでもないことを彼女は述べたのである。
そして勇気の無い僕は、その小人を居候させる羽目になってしまったのである。
「はいはいー!」
彼女は僕の学習机の上でダンスを踊っていた。どこで覚えたのだろうか、とても優雅な踊りなのであった。そんな彼女を見て、僕は幸せな気持ちになっていた。
小人の女の子が来て1ヶ月になった。もう小人の女の子がいる生活が当たり前の状況になった。
小人の女の子とのお喋りは面白かった。どうも彼女は小人の世界では身分が高く、いわゆる王女様らしい。気まぐれで家出をして、ここにたどり着いたのだという。
もう彼女も作るつもりもなくなったし、結婚もしないと思う。
気がつけば僕は、この小人の女の子を自分の大切な人と思うようになった。
それから数日後。
「最近の野田君、明るくなったね!」
「えっ・・・?日高さん・・・。」
日高さんはゴキゲンなのだ。
「ま、まあね。」
詳しい理由も言えるわけがない。
それでも日高さんとの関係が良くなるのは、とても心地の良い事だ。
僕の学校での生活は充実してきた。
「ふう。」
僕は疲れていた。
何故なら一人になる時間がないからだ。
ここに五月蠅い小人の女が居座っている。
「ランラララン♪」
コイツの鼻歌は本当に鬱陶しい・・・。
「ねーえ!!」
「なんだよ。」
「新しい服が欲しいなあー!」
「・・・・。」
本当に面倒くさい小人の女だ・・・。僕は相槌を打つ気も失せてしまった。そんな僕の様子を見て、小人の女はキョトンとしていた。
「どうしたのー?」
「・・・。」
「何か困ったことがあったの?」
「・・・・ああ・・・。」
「なになに!?教えて!!」
小人の女は僕の頬に両手で触れてきた。
「何すんだ!!」
「きゃっ!!」
僕は小人の女を突き飛ばした。簡単に小人の女の身体は吹っ飛び、鉛筆刷りに背中を打ち付け倒れ込んだのだった。
「うう・・・。」
小人の女はぐったりとしている。
「苦しいか?」
「うううう・・・。」
小人の女の眼は涙で溢れていた。だがそんなものを見ても、僕の感情は動かされなかった。
そして僕は拳を振り上げた。
===== ぎゃっ!!!! =====
本当に一瞬の事だった。衝動的に打ち込んだ僕の拳によって、小人の女は絶命した。恐らく内臓は破裂しているであろう。
「うわっ!汚ない・・・・!」
僕は自分の拳に着いた小人の血を、ウェットティッシュで拭き取った。そして小人の女の死骸にビニールを重ねて、ゴミ置き場に出した。
不思議と僕は落ち着いていた。殺人という実感は無かった。それほど現実離れした状況、という事であろう。
やっと部屋で一人に慣れた僕は、久しぶりにグッスリと眠りに就く事が出来たのだった。
明日からは普通の生活が待っている・・・。
~~~~~ 以前の日常へと戻った ~~~~~
日高さんと仲良くなった。まだ彼氏彼女の関係では無いけど、これで十分に楽しい。たとえ友達関係でも、やはりリアルな異性との付き合いが良いのだ。うん。あの小人の女は所詮人間ではない。
僕は虫を殺したに過ぎない、と自分自身に言い聞かせた。
やがて僕は小人の事など忘れて、日々の生活を楽しんだ。
ある日の夜中。
「う、うん・・・・。」
体に痛みを感じたボクは、目を覚ました。
「はっ!!」
小さな灯りが僕の周りを照らしていた。
武装をしている小人達に取り囲まれていた。しかも自分の身体は縄の様なもので、拘束されていた。
一人の身分の高そうな若い男性の小人が、口を開いた。
「・・・・お前が妹を殺した・・・・。王女であった妹は、家出をしていたのだ。お前が妹を大事にしていたので、私は見逃していたのだ。しかしそれは大きな間違いだった・・・。」
その高貴な小人は、両手を握りしめて悔しがっている様子だった。涙が畳に落ちているのが、暗がりでもよくわかる。それは気の毒な光景だった。
しかし次の瞬間、顔を上げた高貴な小人はギュッと僕の顔を睨みつけた。
僕の高貴な小人に対する感情が、哀れみから恐怖へと変わった。
「苦しんで、死ね・・・・!」
何かが灯りに反射し、鋭い光を放った。
「ぐあ・・・・!!」
その瞬間、ボクは右目の視力を失った。
===== グッグッ =====
小さなもので切り刻まれる。
僕は・・・・恐らく肉片となった・・・・。
~ある日突然に妖精が舞い降りた~ <終>




