9.見えない敵
前回までのあらすじ
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太一と二郎はSNSにて動画を投稿するように言われるが、それは思ったものと違かった。しかし、短期間で有名になる、ということの本質を知った2人は、動画を撮影する覚悟を決める。
後日、僕ら2人は動画を撮った。
坂田さんに言われた「ネタ動画」と「ダンス動画」。
そして坂田さんに渡した。
「ンンン〜いいねェ!仕事が早いッ!」
そう言われたが、僕らは本当にあの動画でよかったのか不安だった。
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数日後、僕らは坂田さんに呼び出された。
「おはようmen!」
「お、おはようって...もう昼の1時ですけど」
「おはようmen!」
こいつはこっちの声が聞こえてないのかコノヤロー!
「お、おはようございます...」
引き気味で僕たちはそう返した。
「それで!先日の動画のことだけど」
「はっ、はい!」
「ダンス動画の方はあんまり伸びなかったんだ」
「そ、そうですか...」
「それで、ネタ動画についてだけど...結構バズっちゃってねェ!まぁめちゃくちゃバズったって訳では無いんだけどさ」
おいおいこいつは何を言ってるんだ!?
結構バズった、の後に、めちゃくちゃバズった訳では無いって!日本語おかしいやろがい!
「それでねェ、初投稿にしては結構いい数字をたたき出したわけェ。いやァ、ごめんね!俺の大誤算だったよ!君たちがこんなにネタ動画でバズれるとは思ってなくてね!ダンス動画なんか撮らせてすまなかった!」
「い、いえ...つまり、これからはネタ動画だけでいいってことですか?」
「そういうことさ、men!」
や、やった!僕たちは芸人でいいんだ!
「それでね、men...ひとつ話さなければならないことがあるんだよ」
「話さなければならないこと?」
「そう...実はね、動画のコメント欄に...いくつか、アンチコメントっぽいものがあってね」
「アンチコメントってなんだ?」
二郎が不思議そうに言った。ホントに何も知らないんだな...
「二郎チャン、僕が説明してあげるよォ。アンチコメントっていうのは、その動画に対して否定的な意見だ。例えば、『面白くない』とかね」
「なるほど」
「でも彼らはコチラからは見えない...見えない敵だよ」
「...あの、敵っていう言い方は違ぇんじゃねぇか?」
二郎が言った。
「面白くないって言ってるんだから敵だろォ?」
「いや、自分たちのネタを見て感想を言ってくれてるんだ。その時点でありがたいよ」
「そうか...君たちはそういう考え方をできる人間でよかったよ。本当はね、コメント欄を閉鎖しないか、って話を持ちかけようと思ってたんだよ」
「それは大丈夫です!僕たちはそういうの屈しないんで」
「良かったよォ!そういえばさ、話は変わるんだけど、君たちにこの前言ったお笑いライブの話あるだろ?あれが来週末あるんだ。君たちにはそこでネタを披露して欲しい」
「わっ、分かりました!」
これが僕たちのプロとしての初めての大仕事だ!
次回『ベテランの若手芸人』