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7.怪しい芸能プロダクション

前回までのあらすじ

---------

アマチュア漫才パレードにて無事にネタを披露し終えたグッバイワーク。出番の後に、芸能プロダクションの社長と名乗る男に話しかけられ...

「ちょっといいかい?実は僕、一応芸能事務所の社長してるんだけどさ、うちに来ないかい?」

僕たちは、ネタ終了後、こう言われた。

怪しい...

格好からして怪しい。

どこを見てるのか分からないサングラス。

沖縄土産感たっぷりのシャツ。

またまた沖縄土産感たっぷりのサンダル。

ここは南国かなんかなのだろうか?

そして今は冬のはずなのだが。

「詳しくお話聞いていいですか?」

僕たちは、一応話を聞こうと思って、そう怪しいおじさんに言った。

****

ついてきて、という風に言われ、行った先には、この怪しいおじさんの言う"芸能プロダクション"があった。

「まぁ、いいから座ってて。お茶でも出すから」

「あっ、はい」

ここが芸能プロダクション...コンクリート打ちっぱなしなんですけど...

しかもなにこれ。椅子と机とキッチンしかない!?

「いやぁ、君たちのネタ、おもしろかったねぇ」

お茶を注ぎながら、おじさんはそう言った。

「なんというんだろう。観客の人はあんまり笑ってなかったけどさ、一つ一つの挙動が上手くて。"見せ方"っていうのかな?」

ギク...やっぱり観客は笑ってなかったのか。

あんまり緊張してたせいで、周りの声は聞こえなかったけど、それでも観客があんまり笑ってないのは雰囲気からして感じ取れた。まぁ、仕方がないと言えば、仕方がない。俺たちの1組前は、TFC準決勝進出コンビだもんな...

...いや、それは言い訳か。1組前がどんなコンビであろうと、あれと変わらないような観客の反応になっていた事は、感じ取れる。

「それに!スタッフの人が言ってたのを小耳に挟んだんだけどさ!ネタ、一日で作ったんだって!?それで一日で覚えたとか聞いたよ!」

「あぁ、それはドウモ...」

なんだか、気まずい雰囲気になってしまった...

「そんで兄ちゃん、芸能プロダクションに入るって話してくれよ」

沈黙を破ったのは、二郎だった。

「に、ニイちゃん...」

なんだか驚いた感じで、おっさんは言ったが、そのまま続けた。

「いや〜、僕、これから芸能プロダクションを開くんです」

「これから!?」

「えぇ、そうですがなにか?」

「い、いえ...」

この男、自分のことを芸能プロダクションの社長だとか言ってなかったか!?まだなってないじゃないか!

「それでさ、話を続けるけど、あそこのイベントで僕は、いい感じの人材を探してたんだよ。君たちみたいなね」

「それで、僕たちをスカウトしようとしたわけですか...」

「そう!たしかにまだうちには誰も所蔵タレントがいないけど、これから必ず大きくなっていくはずさ!これは絶対的な自信だねッ!」

その絶対的な自信はどこから来るのだろうか...

目の前にいる僕ら2人を上手く口説けてもないくせに...

「で、もし所属した場合、どのような契約内容になるんですかね...」

「もし所属してくれたら、僕は仕事の依頼の処理、それから練習場所ここを貸す。そして君たちのマネージメントをする。僕の取り分は2割!どうだい?」

2割か...もし売れればいいのだが、売れてない時は、ただ吸い取られるだけな気もする。

「...あの、社長さんについてお聞きしてもいいですか?」

「もちろんさ!僕の名前は、坂田周平。37歳だ!この芸能プロダクションを立ち上げるために、元いたところから独立してきた!」

...!

坂田...

「あの、もしかして、あなたは、神楽坂の...」

「神楽坂?なんだそれ」そう言ったのは二郎だった。

それに答えるように、坂田さんは言った。

「神楽坂をご存知ないんですか?お笑い芸人志望なのにィ?まぁ、僕が説明してあげましょう。神楽坂とは僕が組んでいたコンビです。TFC決勝に進出した事もあります。まぁ15年前の話で、7位でしたから、今や覚えてる人も少ないんですが。僕は9年前に、相方を亡くしましてねェ。僕一人じゃネタも書けないものですから、ピンでやっても成功しなくて。最終的に所属してた芸能プロで社員として働くことになったんです」

「へぇ!そうなのか!俺15年前のTFC好きなんだよな」

じゃあなんで知らないんだ!とツッコミたいところだが、人の前だからやめておく。

「まぁ、契約するんなら、後で連絡をくれ」

「は、はい!分かりました」

「あと最後に...余計かもしれないが、君たちツッコミとボケを交代した方がいいと思うぜ。今はツッコミは山田さん。ボケは赤羽くんだろ?でも今の会話を聞いている限り、赤羽くんにはツッコミのセンスを感じる。それは山田さんもそうだ。山田さんは確実にボケのタイプだ。僕もボケだったから分かる」

「は、はいっ」

「じゃあこの後は予定があるから。今日はわざわざ来てくれてありがとう」

「こちらこそありがとうございます!」

****

「二郎、あのおっさんどう思う?」

「俺はいいと思うがな。そこら辺の詳しいことは俺には分からんから、太一がやってくれ」

「あぁ、分かった」

...さっきの最後の僕たちへのアドバイス。

僕も前から少し思っていたことだ。

それをあのおっさんは、ネタと会話だけを見て、一瞬で分析してきた。

あのおっさん、お笑いが分かってる。相当腕が立つ。絶対に所属した方が得だろう。

「二郎、あそこの芸能プロに入ろう」

「あぁ、お前が言うんだったらそれでいい」

****

後日、電話越しで。


「もしもし」

『もしもしー!いやあ、君たちが数日間連絡くれないから所属する気ないのかと思ったよ!』

「すいません、忙しくて」

『いやいや、怒ってる訳じゃあないよ!で、所属するのかい?』

「はい!お願いします」

『よぉし!こっちもよろしく頼むぜ!』

「あのぉ、ちなみに事務所名って?」

『神God productionにしようと思ってるよ!』

「いや、それはやめたほうが...」

『えぇ!?いいじゃないか!』

...ホントにこのプロダクションで大丈夫だったんだろうか?

次回『流行とSNS』

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