6.般若と龍
前回までのあらすじ
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ついにネタを披露することになった太一と二郎。
果たしてどうなるのか!?
司会が言った。
「エントリーナンバー8!コンビ名は!グッバイワークです!」
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数時間前
「いいコンビ名あるぜ」
二郎は太一に自慢げ...というか、ドヤ顔でそう言った。
太一はなにか怪しいものが来るんじゃないかと身構えた。
「俺らが出会ったのはハローワークだろ?だからそれを文字って、グッバイワークはどうだ!?」
「...」
「なんだ!そのビミョーですねみたいな顔は!なんだ!?俺、鼻毛でも出てるのか!?そう感じさせる顔だぞ!」
「...たしかにそれでいいかもね...あはは」
「なんだその反応は!」
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ついに僕らはステージに立ったのだ。
目の前には観客がいる。
文化祭とかとはわけがちがう。
TFC準決勝進出コンビなんかもいるんだ。
やらなきゃ、全力で。
「はい、どうも〜よろしくお願いします」
「どうもよろしくお願いします」
「こっちの若い僕が太一で、そっちの無職が二郎です」
「おい!無職ってなんだ無職って!お前もだろ」
「はははー、黙れクソジ○イ」
「サラッと暴言吐くなよ!」
「まぁそれはどうでもいいとしてね」
「おいどうでもよくねーぞ!」
「僕ちょっと体にタトゥーいれたくて」
「あんまり入れない方がいいんじゃないの?」
「どこに入れるべきですかねぇ」
「おい、お前さっきからずっと俺を無視して、俺の声は聞こえないんですか!?大声で喋ってやろうか!」
「うるさーーーい!!」
「なんだお前!」
「まぁそれは置いておいて、やっぱりタトゥー入れるならここに入れたいって場所があるんですよ」
「はぁ、そうなの?」
「足の裏に入れたいんですよね」
「まぁ、確かに足の裏なら見えないからいいかもね。ちなみにどんな模様入れたいの?」
「ハローキティです!」
「性格と合わなすぎだろ!あんまタトゥーでそんな可愛いキャラ入れないよ!?それになんでそんな堂々と言ってんだお前!!」
「他にも入れたい模様があって」
「はぁ」
「般若のお面」
「可愛いのはどこに行ったんだよ、おい!もはや天国と地獄だよ!ハローキティと般若は!」
「そうですか?」
「そうだよ!もっとさ、タトゥーって龍とか入れるもんなんじゃないの?」
「あぁ、そう!龍も入れようと思ってるんですよ!リューク」
「リューク!?たしかに名前にリュー入ってるけど、それ悪魔じゃねーか!」
「逆に二郎は入れるとしたら何入れるの?」
「入れるつもりは無いけど、強いて言えばくまモンかな」
「お前の方があってねーじゃねーか!」
『どうもありがとうございましたー』
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僕たちは、数分間の漫才を終え、ステージ裏に行った。
満足のいくものでは無かったかもしれないけど、今僕らが出せる最高のパフォーマンスができた。
観客全員が笑っていた訳では無いけれど、八割以上の人達が笑ってくれた。
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数分後
ネタを終え、帰ろうとしていたところ、ある男性に声を掛けられた。
「ちょっといいかい?」
「はい...」
誰だろう...この怪しいおっさんは...
「実は僕、一応芸能事務所の社長してるんだけどさ、うちに来ないかい?」
次回『怪しい芸能プロダクション』