4.覚えてもらう条件
前回までのあらすじ
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赤羽太一が、どうやって芸人になるか考えていると、山田二郎が明後日に行われる芸人のイベントの情報を持ってきた。明後日までに用意するのは難しいため、赤羽太一が断ろうとすると、山田二郎は、既に申し込んできたことを伝えた...果たしてどうなるのか!?
「むむむむむむぅ」
どうしようか、明後日のイベントに出ることになってしまったとは...
しかしここで一喜一憂している訳には行かない。参加することになってしまった以上、ネタを作り、披露できる状態にしなければいけない...
しかし、このおっさん、100%ネタを作ることが出来ない...
「おっさん、このイベントについての情報を教えて貰えますか?」
「あ、あぁ」驚いたようにおっさんは言った。
「イベントが行われるのは明後日」
「そういう基本的なことはいいんですよ」
「続きがあるんだから!俺らが出るのは15時から始まる、アマチュア漫才パレードだ。ネタ時間は2〜3分」
2〜3分か...長い訳では無い...だが、今の俺らにとってはとても長い時間だ。
「行うのは漫才。出場資格は、結成から3年以内のコンビだ。」
「なるほど。そのチラシちょっと見せてください」
そして俺はそのチラシを受け取った。
どうやらこのイベントはお笑いが中心ではなく、町おこしのイベントの企画の一部のようだ。
良かった。コアな漫才ファンばかりでは無さそうだ。
「ところで、どうするんだ?」おっさんは不思議そうにそう言った。
「ネタは僕に任せてください。明日までに書きます。今日、あなたにやってもらいたいのは、"見せ方"です」
「"見せ方"?」
「はい。突然ですが、初めて会った人と話したとして、もっとも記憶に残りやすいのは、見た目、内容、話し方のどれでしょうか?」
「そりゃあ、話した内容じゃないのか?」
「不正解です。実は最も記憶に残りやすいのは、見た目なんです」
「はぁ、見た目...」
「例えば、身だしなみが良かった、とか。ニコニコしていた、とか。そういう事をすれば、記憶に残りやすいです。そして次に記憶に残りやすいのが、話し方です。例えばボソボソ話している人に対してどう思いますか?」
「そりゃあ、あんまり良い印象は持たないかもな」
「そうなんです、つまり話した内容が良くても、見た目や話し方が良くなければ、相手に良い印象は持たれず、覚えてもらえません」
「つまり、さっき言っていた今日俺にやってもらいたいことって言うのは...」
「そう!覚えてもらう条件を身につけることです!」
次回『はじめの一歩はでっかく』