赤より紅き鮮血
誤字脱字等あればご報告ください
「だから俺はお前が!お前らの国が!!心底憎いんだよ!!お前らの国が戦争を起こさなければ!!あの時お前が戦争に負けていれば!!俺は大統領になれた!!あんなクソ親父に捨てられることもなかった!!アストロイア連邦もクソ親父の独裁政治で崩壊することもなかった!!」
アストラマスは涙を見せて怒りをあらわにした
アストロイア連邦はその後メトロノフによる完全な独裁政治が行われ財政悪化やそれに伴う法律改正などさまざまな問題に直面し国内の情勢は過去最悪となっていた
そんなメトロノフによる独裁政治は現在まで続いている
「そうか…君も辛かったんだな…悪いことをしたよ…」
オルタは悲しげな顔をしながらアストラマスに同情した
「僕には記憶がないから何にも言えないけど…そんな辛い過去があったんだね…だけどこんなことを起こしていい理由にはならないよ。だから…」
「黙れ黙れ黙れ!!黙れええええええ!!!!!!ふざけるな!!俺から何もかもを奪ったゴミがああああああああああ!!!!!」
そう言うとアストラマスは突如としてオルタに手をかざした
「っ!?うぅ…!なんだ…これ…」
突然オルタが頭を抱えてうずくまった
「殺意の波動だ。お前の脳に高周波の波動を送っている。この波動は脳波を妨害し脳の機能を著しく低下させる。そして最終的には死へと追い込む」
超上級精神操作魔法である殺意の波動を使いオルタを苦しめた
「うぅ…頭が…くっ…」
「はははは!どうだ苦しいか?俺の苦しみに比べればこんなものなんてどうってことないぞ?」
魔法はどんどん強まり、より一層オルタは苦しそうな表情を浮かべた
「ぐっ…うぅ…ぐはっ…!」
脳の異常に体が耐えきれなくなり、鼻や口から血が吹き出した
「血まで吐いてそろそろ限界なんじゃねえのか?脳の異常より体から血が抜けて死んじまうぞ?」
オルタの体はもう限界だった
元々魔力の少ないオルタにこの魔法は完全に不利であった
さらに戦闘による肉体的疲労も重なり、この魔法に耐えきれなくなるのも時間の問題だった
「このまま死んでしまえぇぇぇぇ!!!!」
ついにオルタは立っているのも限界となっていた
膝をつき、ついに立ち上がれなくなっていた
(あぁ…このまま死んでしまうのかな…)
朦朧とする意識の中、オルタの脳内に突然とある風景が映し出された
(なんだここ…ここは…病棟?)
「うぅ…なんで…こんなことに…」
(誰…?僕のことを知っている…?)
「オルタ…待ってろ!必ず助けてやるからな!!」
(助けるって…この人たちは一体誰なんだ…?それに僕はなんでここに…)
「ただいま戻りました!!」
「おぉ!よくやった!これがあれば…」
「ですが…探し歩いてなんとか手に入ったのですが…」
「なに!?そんな…普通の…はなかったのか?」
(なんだ…?大切な部分がよく聞こえない…それに視界もぼやけてよく見えないし…)
「ありません…しかし助けるにはもうこれしかないと…」
「馬鹿者!!普通の人間にこれを使ったらどうなるかわかってるのか!!」
「申し訳ありません…ですがもう時間が…」
「くっ…背に腹は変えられん…」
何者かがそういうと何かを準備しはじめた
「頼む…無事であってくれ…」
(何をしているんだ…?何かをつけて…)
その時オルタはなにかに気づいた
そして思い出した
(そうか…記憶喪失になって忘れていた…僕は…)
「ハハハハハハハハ!!もう限界か?動けないようだな!!」
アストラマスはオルタを強く罵倒した
オルタはなんとか力を振り絞り立ち上がった
「なんだ?まだそんな力があったのか…」
「あんたのおかげで思い出したよ。僕の記憶の断片を」
「は?何を言って…」
するとオルタは徐にアストラマスの手の親指の付け根を強く噛んだ
「イッテェ!お前何してるんだよ!」
オルタはそのままアストラマスの血を飲んだ
「血を飲んだだと…!?」
アストラマスが驚いた表情を見せた
その時だった
みるみるうちにオルタの魔力が上がり、アストラマスの波動を弾き返した
「何!?」
そして魔力はさらに上昇し、とてつもないオーラがオルタを包み込んだ
「貴様!何をした!!」
「思い出した一つの記憶。それは僕がただの人間ではないということだ」
「ちっ…ふざけ…」
殴りかかったアストラマスに拳を叩き込んだ
「がはっ…!!馬鹿な…!」
「僕がまだ生まれて数ヶ月しか経ってない頃、僕は大量出血で死にかけていた。しかし僕の血液型は特殊で街中を探しても見つからない。最後の手段として持ってこられたのが吸血鬼の血だった。人間が人以外の血を輸血されることは何が起こるかわからず危険だった。だけどもう時間がないといい輸血されてなんとか一命を取り留めた。その頃から僕の体内を流れる血は半分以上が吸血鬼の血、そしてそれは僕の魔力の根源。人間の血は僕の魔力の根源!!」
「馬鹿な!?魔力はサイカの毒に吸われたはずじゃ…」
アストラマスは驚く
「なぁ…あんた、人間の血と吸血鬼の血が混ざり合えばどうなるか知ってるか?」
「は?一体何を言って…」
答える間もなくオルタは手に力を込めた
すると傷口から流れ出た血がみるみるうちに手の中に集まり、気弾のようにオーラを出し始めた
そしてその血はこの世のありとあらゆるものよりも紅く染まっていた
「なん…だと!?そんな魔法が…」
「血核魔法『赤より紅き鮮血』これが僕の特殊魔法」
オルタはさらに力を込めた
手の中の血液はさらにオーラを増した
「第一変化『血液の短剣』」
オルタが唱えると手の中の血が分裂し無数のナイフのように変化した
「な…逃げ…」
「逃がさない」
オルタは力を込めていた手を前に突き出す
すると留まっていたナイフがアストラマス目掛けて飛んでいく
アストラマスは必死に逃げたが一本が右足首を貫いた
「ぐあああああ!!足が!!足が!!!」
うずくまったアストラマスに無情にも無数のナイフが貫いていった
「ぐああああああああああ!!!!!!!」
アストラマスは悶え苦しんだ
「馬鹿な…!!!お前なんかに…!この俺がお前なんかに…!!!!!!!」
「終わりだ」
オルタは吐き捨てるように言った
そして再びナイフの形をした血を手の中に戻した
「血の供物」
オルタが唱えるとアストラマスの傷口から流れ出た血がどんどんオルタの方へ集まっていった
「っ…!?俺の…血が…!!」
「お前の死は無駄にはならない。僕の魔力として使わせて貰う」
「やめ…ろ…やめ…ろおおおおおおお…!!」
アストラマスは苦悶の表情を浮かべついに自力で立つことも難しくなっていた
とうとうその場に倒れ込み、動けなくなった
「や…め…………」
もがき苦しんだアストラマスはついに血を吸われ尽くし、変わり果てた姿をオルタの前に晒した
「サーリス…」
オルタは弔いの言葉を投げかけた
「…あれ?ここは…どこだ…?俺は一体…?」
アストラマスの魔法の効果が切れて操られていた人々や眠らされていた人々が我に帰っていった
「終わったか…」
オルタはそう呟くと突然倒れ込んでしまった
「あれ…私は一体何を…はっ!オルタ様?」
催眠で眠らされていたアルカティアも起床した
「オルタ様!!オルタ様しっかり!!」
(アストラマスがいない?まさかオルタ様が…?)
倒れ込んだオルタをアルカティアは自陣へ運んでいった
そしてこの反乱に勝利したと知るのはしばらく後だった
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ご報告、アストラマス・シュタルヒン様討死」
敵陣営にもアストラマスの敗北の知らせが届いていた
「ふんっ。攻め急いだ馬鹿の末路だ。放っておけ」
「ガノン様、攻め入らないのですか?」
「元々あいつのわがままに付き合ってただけだ。バナコスタは確かに憎いが、攻め入るのは今ではない。我々にはやるべきことが山ほどあるのでな」
「ガノン様。我々トロイ教の者達はどうすれば…」
「自分らで勝手にしろ!と言いたいが、教祖がが捕まってお先真っ暗なら我々についてくるがよい。だがしかしついてくるというのはそれ相応の覚悟がある者のみだ。いいな?」
「は!」
こうしてガノンはトロイ教の信者を新たに手勢に加え、撤退していった
(オルターニャ・ガルナドーラ…か)
「借りはまだ返してもらうものじゃねえな」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
つづく
ししゃもっこです
ついに前半の一つの展開を終えました
まだ会話に違和感があると思いますがすみません
次からは第二章となります
今後ともよろしくお願いします