奇跡の世代
誤字脱字等ありましたらご報告ください
「これはひどいな…」
砦に着いたアルカティアは思わずそんな言葉を発する
あたりには味方同士で殺し合った血痕や道具などが散乱している
「第四部隊はどこへ向かった」
「まだ場所が掴めていません」
「タチバナ殿…一体どうしてこうなった…」
アルカティアが嘆いた
ショウ・タチバナ率いる第四部隊はプワープの砦を壊滅させたあと、突如として行方をくらませた
「これも奴らの仕業なのか?」
「わかりません…」
「タチバナ殿は元々神樂ノ國の出身で忍術という特別な魔術を使う。行方を眩ませることくらい容易なことではあるが…」
「タチバナ…って人は簡単に居場所をわからなくできるってこと?」
「そうですね。しかし今回に関してはなんとも…」
そのとき
「オルタ様、アルカティア様、敵軍に怪しい動きが見えました」
「え?」
「状況は?」
「おそらく奴らは進軍を始める準備をしていると思われます」
「なるほど…だがラモスタイン城にはアズア殿がいる。奴らがプテール平原にいる限り衝突は免れないはず」
「そこで食い止めてくれたら…」
「良かったのにな〜」
突然背後から声が聞こえて振り向いた
「アストラマス!?なぜここに…」
「スリープ…」
「うっ…」
護衛は皆催眠魔法により眠りについた
「なぜここにいるのだ!」
「別にどうだっていいだろ。そんなことよりどうだ?祭りは楽しいか?」
「ふざけるな!お前のせいでどれだけの国民が…」
「お前ら貴族が国民の心配?ははははは!笑わせてくれる。だらけきった国のお偉いさんのせいでお前らの国はもうほぼ終わる寸前だったわけだ。それが今日になるだけ。ありがたく思え?」
「貴様…!!フレア!!」
アルカティアは火炎魔法フレアを使った
「そんな簡易魔法が俺に効くとでも思ったのか!」
アストラマスはいとも簡単に火の玉をかわした
「次はこっちだ!レギューノ!!」
「上級闇魔法か。ならば」
アルカティアも気弾を全てかわした
「ちっ…しぶといやつだ…」
「バーニン!」
アルカティアは一箇所を激しく燃やす魔法バーニンを使った
「ぐわっ!熱い!!熱い!」
アストラマスの衣服を燃やしたことにより身動きを取れなくした
「これで最後だ!!」
アルカティアは超巨大な火柱を出現させた
「ぎゃあああああああああああ…」
とてつもない断末魔を上げアストラマスは倒れた
「ふう…」
「すごい!アルカティア倒しちゃったよ!」
「なんとかなりました…」
「良かった…これでじゃあ僕たちの勝ちってこと?」
「一旦はそうなりますね」
「やった!!」
「では城に戻りましょう」
オルタとアルカティアは再び城へ戻ろうとした
その時
「…スリープ」
バタッ
「アルカティア?アルカティア!!」
「安心しろ…催眠で眠らせただけさ」
「お前…生きて…」
「炎なら防御魔法で耐えれるさ…だがすこしは効いたぜ…」
「なんで…」
「お前記憶喪失なんだってな…それで魔力もほぼないんだってな?」
「やだ…」
「精神操作のしがいがあるなあ…!」
「フェマレツムテ」
「あ?なんの言語だよボソボソと」
「アトレアムストゥフルキ」
「まぁいいや精神操作で…」
「メトロスリフ!」
ゴロゴロビシャーン
「何!?」
呪文を詠唱すると突然2人の目の前に雷が落ちた
(なんだ?新手の雷魔法か?だが魔力もないあいつに雷魔法なんて使えるのか)
「外した…」
「おい…お前何をした?」
「ウレギオシス!」
「あ?何を言って…」
オルタが詠唱すると突然巨石が降ってきた
アストラマスは落ちてきた巨石をかわしきれず、足が巨石の下敷きになった
「ぐわぁああああ!足が!足が!」
「これで懲りたか?」
「あ、あぁ勘弁してくれ!もうこんな馬鹿げた戦争は終わりにしようや…だから助けてくれ!」
「そうか…なら」
オルタは再び呪文を詠唱し始めた
巨石が大きな音を立て、勝手に動き出しアストラマスの足を解放した
「ふぅ…助かった…」
「じゃあもう二度とこんな戦争起こすなよ?」
「わかってるって」
そう言葉を交わしオルタはその場を去ろうとした
「ふっ…」
「ん?どうし…っ!?」
アストラマスはオルタの口を押さえ身動きが取れないようにした
「バカなやつだ!そんな簡単に俺が降伏するとでも思ったのか?」
「……!」
「お前の精神を操作して俺の駒として使ってやってもいいがそれは生ぬるい。俺はお前に恨みがあるからな」
「……!……!」
「話してやる」
ーーーーーーーーーー14年前ーーーーーーーーーー
アストロイア連邦第13代大統領である「フロイタール・メイコフスキー」が選挙により当選、新たな国のトップが決まった
そんなフロイタール氏と最後の決選投票までもつれ込むほどの接戦を繰り広げたのが「メトロノフ・シュタルヒン」であった
惜しくも敗れたメトロノフは前まで勤めていた大臣を一新され、事実上の無職になった
「ちっ…くそっ!なぜあいつが当選するんだ!国民は誰もあいつの裏を知らない」
「そう怒らないでください。必ずやあなたも大統領になれますよ」
そう宥めたのは妻である「アリーナ・シュタルヒン」だった
妊娠中だったアリーナは部屋のベットで横たわりながらメトロノフの話を聞いた
「だがこのままではこの国はめちゃくちゃになるぞ!あいつはこの国を滅ぼす存在だ!」
「確かにフロイタールの横暴は目に余りますがそうやってあなたも怒りに身をまかせ暴走してしまったらそれこそフロイタールと同じですよ。選挙には国民からの好感度が大事です。ここは地道に好感度を上げていくとかではありませんか?」
「うっ…確かにそうだな…ありがとうアリーナ」
「大丈夫ですよ。困った時はいつでも相談になりますからね」
こうしてメトロノフは落ち着きを取り戻した
そしてそれから3日後
「うぅ…!うぅ…!!」
「大丈夫ですよ奥さん!頑張って!」
「おぎゃあ!おぎゃあ!」
「産まれました!元気な男の子ですよ!」
長い妊娠期間を経て、ついに男の子を出産した
「よくやった!アリーナ!」
「はい…!ありがとうございます…!」
メトロノフもとても嬉しい様子だった
しかし魔力測定をするととんでもない事実が告げられた
「え!?これ…本当?」
「シスターさん…?どうかしたのですか?」
「お産まれになられた子なんですが…魔力が90もあります!」
「なんだって!?」
産まれた瞬間の魔力量が90はアストロイア連邦では初めてのことだった
「これはとんでもない子が生まれたな…」
「名前は決めてあるのですか?」
「そうだな…アストラマスって言うのはどうだ?」
「いい名前ですね!」
こうしてアストラマスは産まれた
その後すくすくと育っていったアストラマスはいつしかその高い魔力により将来の大臣候補となっていた
こうして将来は安泰かと思われたが一つの懸念が生まれていた
それはアストラマスが父のメトロノフの対抗馬になること
明らかに魔力量が高く、さらには成績も優秀であり何より若い人材であるアストラマスが父のメトロノフよりも優れているのは火を見るより明らかであった
そうしてそのうちメトロノフはアストラマスを憎むようになっていた
「くっ…どこへ行ってもアストラマス、アストラマスって…正式な大統領候補は俺だってのに…」
「自分の子が憎いのですか?」
執事が聞いた
「当たり前だ!俺より高い魔力を持って俺より優れていると言われて…この俺が時期大統領候補だってのに…国民は皆アストラマスを大統領にしようとする動きがある…俺はなんのためにあの日の怒りを押さえ今日という今日まで街頭演説をしてきたのだ!ふざけるな!何か息子だ!何が奇跡の世代だ!!」
こうした怒りは日々募っていった
そしてこの怒りの矛先は妻のアリーナにも向けられた
「実の子をそんな風に虐めるのですか!自分が大統領になれないかもしれないからって!いい加減にしてください!」
「うるさいうるさい!!黙れ!!俺に口出しするんじゃねえ!!」
そして結局これは口論に収まらずこの一件により2人は離婚
アストラマスはアリーナの方は引き取られた
「お父さんは?」
「お父さんはもういないの。あなたを守ることができなくなったからもう二度と会えないの」
「なんで?お父さんは?お父さんは!」
当時まだ6歳だったアストラマスにはそれは酷な現実であった
4年後、アストラマスは10歳となった
アストロイア連邦では10歳になり魔力量が200を超えていると職権獲得試験というものを受けられ、合格すると公務員として働くことができる法律が定められていた
アストラマスももちろんこの試験を受け見事合格
国家の役員として働くようになっていた
しかしこの噂は国民の間に広がり
再びアストラマスを大統領にする運動が起こった
この運動は父のメトロノフも認知し激怒
再びこの2人の溝を深めた
そして翌年、長きにわたり大統領を務めたフロイタールが病死
選挙が行われた
そんな大統領候補として挙げられたのがメトロノフとアストラマスであった
以前から比較されてきたのはあったが初めて正当な場で争うのはこれが初めてだった
「父さん…」
「気安く呼ぶんじゃねえよ」
こうして国民投票が開始
なんとアストラマスが圧勝となった
この結果を受けメトロノフは激怒
不正を疑った
国民投票の結果を改めて確認してみると、明らかに一つおかしな投票があった
同一人物が何度もアストラマスに投票していたのだ
数で換算すると数十票ほどであったが不正が見受けられたため政府内の決選投票で大統領を決めることとなった
「アストラマス様、大丈夫ですか?」
「あぁ…なんとか…だがわざわざここまでするなんて…父さんも図々しいな…」
「本当なら今頃大統領になられてますものね。たかが数十票で変わるわけがないものをわざわざこうする必要はないでしょう」
こう話すのはアストロイア連邦国軍総帥「イドラ・ダティス」である
当時軍部大臣を任せられていたアストラマスは軍部の人から厚い支持を得ていた
「ですが必ずアストラマス様は大統領になられます。我々の投票は大きな強みとなりますから」
「そうか。そうだよな!よし!自信が持てたぞ!ありがとうイドラ!」
「はっはっは!当たり前のことを言っただけですよ」
こうしてアストラマスは軍部という大きな後ろ盾を持った
しかしそんな後ろ盾も絶対的とはならなかった
ーーーーーーーー投票期限前日ーーーーーーーーー
「伝令!伝令!」
「どうした?」
「バナコスタ帝国が宣戦布告!第一部隊がこちらに攻めてきています!」
「なんだって!?こんな忙しい時に…」
「アストラマス様!ご命令を!」
「うーん…ええい!兵を出せ!」
こうしてイドラ率いるアストロイア国軍はバナコスタ帝国軍第一部隊と応戦
最初は優勢に見えたが、突如として兵を退けたのだ
「イドラ様!ご命令を!」
「まだだ…アストラマス様の命を待て!」
こうしてアストラマスは戦場の判断を委ねられた
「ここまできたなら奴らを生かしてはおけない!今すぐ追え!!」
こうしてアストラマスの判断通りイドラは兵を率いてバナコスタ帝国軍を追った
しかしこの判断が運命を左右した
狭い山間に大軍であるアストロイア国軍を誘き寄せ一気に叩く作戦だったのだ
作戦にまんまとはまったアストロイア国軍は壊滅
イドラを含むほぼ全員が亡くなった
「そんな…嘘だ…」
この判断をしたアストラマスも敗戦の責任を負わされ、さらに軍部大臣としての支持を完全に失い失脚
軍部という後ろ盾も失った結果、大統領選挙に敗北
大統領となったメトロノフは次の対抗馬を生まれさせないためアストラマスを国から追放した
追放されたアストラマスはその後二度とアストロイア連邦の地を踏むことはなかった
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つづく
ししゃもっこです
なんだかんだで第6話です
もう正直やめられないところまで来てしまいました
最初は小説作ってみようくらいの軽い気持ちで始めたのですがもうここまでしてしまうともうあとがない状態です
なので今後も小説を書き続けていきたいと思います
みなさんよろしくお願いします
前述の通り誤字脱字等ありましたらご報告ください
今後ともよろしくお願いします