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内乱

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「オルタ…?今から古代魔法の勉強…起きて…?」

「えぇ…やだよ…めんどくさいよ…」

「だめ…今やらないと意味ない…早く起きて…!」

「やだやだ!明日やるから!」

駄々っ子のように喚くオルタに、アイナは愛想尽かしていた

それと同時に、昔の記憶と照らし合わせ悲観に暮れていた

(あんなにしっかりしていたオルタ…どうして…)

「アイナ様、調子はどうですか?」

「全然だめ…オルタ喚くばかり…言うこと聞いてくれない…」

「そうですか…オルタ様!いい加減起きたらどうですか!アイナ様も困ってますよ!」

「やだやだ!勉強やだ!」

(まったく…これじゃあ本当に勉強嫌いな幼児ではないか…)

何を言っても「やだやだ」の一点張りでアルカティアも呆れ返っていた

その時

「失礼、ただいま戻りました」

「マルティン様!一体今までどこにいらしたのですか?」

オルタの叔父であるマルティンが帰ってきた

「宮廷の方で調査を第三等将軍のガルナ殿と行なっておりました」

「調査?先日の事件の捜査なら宮廷の人間ではないと結論付けられましたが…」

「確かにそう結論付けられましたが、念のためということもあり、もう一度調査を。それに…」

マルティンが言葉を濁す

「宮廷でなにかあったのですか?」

「実は数日前から不穏な動きがあり、張り込み調査を行なっておりました。大臣、貴族、さらには軍部といった面々が数日前から会合を行なっており、それも陛下の目につかない宮廷の西の端の小部屋や地下室で行なわれているのです」

「軍部まで…それは一体どの部隊でありますか?」

「詳しくは私もわかりません…ただし第三部隊ではないのは確かであります」

「なるほど…一体何のために…」

「これは憶測ですが…陛下に対してクーデターを起こそうとしていると感じます…実際、ガルナ殿も同じ見解を示しております」

「クーデター…可能性は高いですね…」

「あの…」

張り詰めた空気を割くようにアイナが口を開いた

「アルカティア殿、この子は?」

「この方はオルタ様に古代魔法の教授をされているアイナ・トレノロワール様です」

「おぉ〜!スキューケルの生まれ変わりの!よろしくおねがいします。オルタの叔父であります。マルティンと申します」

「アイナ・トレノロワール…よろしく…」

2人は挨拶を交わした

「その…クーデター…私関係ある…?」

「いやいや、安心してください。あくまで我が国内の話ですよ」

「よかった…」

「とは言えやはり気になりますね…明日、町や村の方にも調査を行いましょうか?」

「いや、アルカティア殿は動かない方が良いかと。オルタ様がこんな状況であり、さらに第一部隊が動くとなると、今度は宮廷が手薄になります。町への調査なら私にあてがあります。そこはこちらに任せておいてください」

「そうですか…なら頼みます」

そう会話した後、マルティンは再び持ち場へ戻っていった

「なんだったの?」

「オルタ様には関係ありませんよ。そんなことより、古代魔法の勉強をしますよ!」

「えぇ〜!」

オルタは渋々ベッドから起き、勉強を始めた

(本当に何もないと良いが…)

しかしそんなアルカティアの思いはすぐ打ち砕かれた

次の日、町で暴動が起こった

武装した軍勢が「国を返せ」と書かれた旗を掲げ町の中心を占領、これにより国民の大勢が危険に晒された

首謀していたのは信仰宗教である「トロイ教会」

この宗教は昔からある伝統的な宗教ではあるが、それと同時に宗教の皮を被った反国主義者の集まりであることで有名だった

この一件で現教会長であるトロイ7世が捕まり、禁錮10年を言い渡された

「こんな立て続けに…今後が不安だなぁ…」

そう呟いたのは、この暴動の鎮圧を行なったアクリプス市警備隊で、元第三部隊軍師の「エド・ゴーマン」

隣にはマルティンも座っている

「今回の一件といい、やはりあの時から国政に揺らぎが見え始めていますな…」

「マルティンもそう感じるか。あんたの甥っ子が療養し始めてから立て続けに暴動や怪しい動きが繰り返されている印象を感じるな…」

「王政反対を唱えていたのが奴らの宗教でしたから、やはり陛下に不満を持つ人が多くなってきているのでしょう…そうなってはますます我が国の危機でございます…」

「そうだな…そう言えばトロイ7世を尋問した時にこんなことを言っていたな…」

「なにかあったのですか?」


「私の思想は受け継がれている。お前らの行いが間違っているということ、国王の政治はクソだということ、この国はもうすぐ滅びるということは我が信者の心身に刻み込まれている。私を捕まえたところで終わる話ではない。私を牢屋にぶち込んだところで終わらない。むしろ始まりとも呼べるだろう」


「やつは今牢獄に捕えられているが、まだ信者はまだ何人か逃亡中だ。だからマルティンにも調査を行なってほしい」

「なるほど、それなら協力いたしますよ」

「ありがたい。できるならガルナにも伝えておいてくれ」

「わかりました。してその信者たちの特徴は?」

「信者たちの特徴は…」

エドは一通り信者たちの特徴を話した

「最後に、こいつは何がなんでも捕まえなきゃいけないやつだ」

「ほう。さっきまでの奴らとはまた違うのですか?」

「そいつの名は『アストラマス・シュタルヒン』トロイ7世の右腕とも言われるほどの信者で、とにかく頭が良く人望に長けているが、かなりの狂人だ。何度も暴力事件を起こしていて、その度に逃走を繰り返していたやつだ。それに…」

エドが続けた


「やつはあんたの甥っ子と同じ、奇跡の世代だ」


「ほう…」

「アストロイア連邦の貴族のシュタルヒン家で生まれ、高い魔力と特別な魔法が使えるとして次期大臣候補と思われたが、父親に嫌われ捨てられた。そしてトロイ6世に拾われトロイ教の信者になったと言われている」

「かわいそうな過去をお持ちで…」

「同情したいのはわかるが、それでも極悪な事件を起こしていることは間違いない。見つけたら必ず捕まえてくれ」

「わかりました。ガルナ殿にも伝えておきますので」

「頼んだぞ!」

そう言うとマルティンとエドは別れた

マルティンが宮廷に戻るとガルナが血相抱えて走ってきた

「マルティン様!大変です!」

「どうしましたか?ガルナ殿?」

「ベアトリス大臣が…」

「なんと!?」

すぐに駆けつけると、そこには変わり果てた姿の大臣が廊下に横たわっていた

「ベアトリス大臣…どうして…」

「死因は?」

「検死の結果、刃物で身体を複数回刺された後、回復魔法の使用を防ぐ目的か、サイカの毒が使われています」

「そうですか…なんと苦痛を…サーリス…」

「宮廷の中まで実害が及んでいる…第三部隊は何をしているのだ!」

居合わせていたもう1人の大臣、「クリス・エトワール」大臣が声を荒げた

「我々はベアトリス大臣が殺される数分前まで行動を共にしていた!だが気づいたらこのような有様に…」

「死んでしまっては元も子もないわ!これは死刑に値するのでは?」

「そんな…我々はただ…」

「もういいぞ、カノーネ…ここは私が…」

「ガルナ様!私たちがなんとか…」

「クリス大臣…本当に申し訳ありません…大臣を守れなかったこと。これは我々第三部隊の落ち度によるもの…したがって私、ガルナ・メリオストロが部下たちの責任を取り、処罰を受けます」

「そんな!ガルナ様!」

「当然の報いだ。お前たちは罪を犯したのだからな。なら従って処罰を…」


「待ちなさい」


処罰の話を進めるクリス大臣をマルティンが止めた

「なぜ止める?こいつらは重い罪を犯したのだ。処罰をされるべきではないのか」

「確かに大臣を守れなかったという点は重たい罪に見えるかもしれません。しかし、我が国には護衛している相手を守れなかった時、護衛している者を死刑で処罰できる法律はありません。最悪でも禁錮10年が妥当です」

「あ、確かにそうだ!」

「それに、本物のクリス大臣は第三者をあんたやこいつ呼びはしませんよ?」

「ちっ…」

「そして都合のいいように、精神操作魔法でガルナ殿の精神を操るのは流石にルール違反かと思うのですが?そうですよね?侵入者殿?」

「え!?侵入者!?」


「ふっ…なかなかやるじゃねぇかジジイ。俺がこいつの頭いじってるのも見破るとはな!」


変装が解け、クリス大臣の姿から若い少年が現れた

「その服装、トロイの者ですな?」

「ああそうさ!俺はトロイ教の信者、『アストラマス・シュタルヒン』だ!」

「アストラマス…ってあの逃亡中の!?」

「俺はお前らを殺しに来たんじゃない。これから起こる祭りの予告をしに来たんだ」

「ほう。祭りとは一体なんですか?」

「我がトロイ教がこの国を支配する全貌をお前らの死に際に焼き付けてやるからな!」

「それが予告ですか…」

「あ?なんか文句あんのか?」


「あなた様の落ち度は二つ、一つはあなた様の変装を私に見破られたこと。もう一つはその祭りとやらの日程を今日にしなかったことです」

「あ?それはどういう…」


「者ども、ひっ捕らえよ!!」


マルティンがそう言うと、廊下の奥から大勢の警備部隊が突撃してきた

「ちっ…面倒な…」

「絶対に逃すな!!」

マルティン普段からは想像ができないほど、怒りの表情を浮かべた

「ええい!しつこいなぁ!レギューノ!!」

アストラマスは上級闇魔法のレギューノを唱え、エネルギー弾を警備部隊に放った

しかしエネルギー弾を受けた警備部隊は傷一つなく、変わらず追いかけてきた

「なに!?当たったはず…そうか…こいつらは人じゃねぇ。あのジジイの特殊魔法か」

アストラマスは追手を振り払いながら呟いた


魔法には大きく分けて種類が2つあり、1つが呪文を詠唱することによって使える属性魔法

もう1つは魔力が高い者のみ使え、一人一人効果の違う特殊魔法の2つ

マルティンの使う特殊魔法は影を操る魔法であり、形や大きさ、数を自由自在に変えることができる


(厄介だなぁ…あのジジイは魔力が高すぎて俺の精神操作と効かねぇ…どうすれば…)

その時一つの案が思い浮かんだ

「はははは!!逃げてばっかじゃつまらねぇ!ならこっちから行くぞ!マグナ!!」

アストラマスは振り返ると上級火炎魔法マグナを唱え火の玉をマルティン目掛け放った

「なんの!」

マルティンは咄嗟に防御魔法を展開した

しかし火の玉は突然方向を変え部下たちの方へ目掛け飛んだ

「カノーネ殿!危ない!!」

「キャアアアア!!!!!」

マルティンがカノーネを庇おうと動いたその瞬間をアストラマスは見逃さなかった

「今だ!!ダークリム!!」

アストラマスはマルティンが動いたことにより防御魔法が薄くなった一瞬をつき闇の気弾を放った

「しまっ…」

闇の気弾は防御魔法を破壊、そのままマルティンの身体を貫通した

「マルティン様!!」

「へっ!ジジイ如きが手こずらせあがって、じゃあ祭りの日を楽しみに待っとけよ!」

「おい!!待ちなさい!!」

部下のカノーネは必死に追いかけた

しかしアストラマスは逃げ足が早く、すぐに逃げられてしまった

「うぅ…私は一体何を…ってマルティン様!?」

アストラマスの逃亡によりガルナの洗脳が解けた

「うぅ…しくじってしまいました…」

「早く治療を!」

「おいカノーネ!何があった!」

「ガルナ様はクリス大臣に変装していた侵入者に精神を操られて…マルティン様はそいつとの戦闘で…」

「ガルナ殿…ご無事で…」

「マルティン様…なるべく喋らないでください…私が未熟なばかりこんな目に…」

「いやガルナ殿は悪くない…やつの強さは本物でした…」

「今すぐ病棟へ!」

「いや私はもう無理です…もう魔力を使い切ってしまいました…どうあがいても…この傷は治りません…」

「そんな…」

「ガルナ殿…やつは必ず戻ってくる…必ず捕らえてください…」

「マルティン様…」

「この国の安全を…この国の未来を…そしてこの国の平和を守ってください…それと…オルタを頼みましたぞ…」

「マルティン様!!!!!」

そう言い残してマルティンは動かなくなった

そして二度と動くことはなかった


この事件は瞬く間に拡散されて国民全員を不安にさせた

国王ミリムもこの一件を受けすぐさま円卓会議をとり行い不測の事態に対策を練った

「アストラマス・シュタルヒン…オルタと同じ奇跡の世代…」

「陛下、ガルナ殿は?」

「ガルナはこの一件で精神的に病んでしまったそうだからしばらく休養させておる。警備を任されておいて大臣と上司の2人を目の前で亡くしてしまったのだから…彼女の精神的苦痛は計り知れないものだ…」

「オルタ殿も変わらず療養中…仕方がないとはいえ将軍2人も不在とは、ますます我々も不安です」

「くそ…こんな時にオルタがいれば…」

「彼は頭が切れるからこんなことが起きてもすぐ対応できたのだが…」

「改めて思えば本当にオルタさん頼りだったんですね…」

クロエの一言で全員頭を抱えて静まり返ってしまった

その時ミリムはとある決断を下した

「それなら決めた。オルタには変わらず前線で指揮をとってもらう」

「え!?陛下、正気ですか!?」

「みんなオルタ頼りなら、今までと変わらずオルタに力になってもらうしかない」

「ですが、いまだに記憶も魔力も戻らないオルタにそんな大役が任せられるかどうか…」

「これは一か八かの賭けだ。我が国の存続の危機の最中にそんな些細なこと言ってはおられん」

しかしミリムはオルタにそのことを伝えに行ったが

「えぇ〜めんどくさい〜また今度でいい?」

「ダメだ、オルタが象徴になってくれなきゃ我が国は終わりだ」

「なんで僕じゃなきゃダメなの?他の人じゃダメなの?例えばアルカティアとか」

「オルタじゃなきゃダメなのだ。いいか?自分ではもう覚えていないかもしれないが、君はこの国の英雄だったのだ。戦いは全戦全勝、公務は完璧にこなすまさに英雄だったのだ。そんなオルタだからこそ国民はついていく。だから頼む!オルタの力が必要なんだ!」

「そう言われても…」

その時だった

「陛下大変です!!」

「どうした?何があった?」


「アストラマス・シュタルヒンが兵を挙げました!!」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

つづく

ししゃもっこです

早いことでもう4話です

今回の話は今後にかなり響いてくる話になるのでいつもより少し長い文章になってしまいました

さて次の話はさらに展開が大きく進む大事な話になります

お楽しみにしていてください!

ここまでお読みいただきありがとうございます!

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