パーティ追放
「レンヤお前はパーティにはいらない。今日をもってパーティを抜けてもらう」
白銀色の鎧を身にまとった男はそう言い放つ
「クリード、なんで俺がパーティから追い出されなきゃいけないんだ」
「なんでそんなことも分からないの?どこまでも無能なのね」
不機嫌そうに派手な服を着た女が俺に詰め寄ってくる
「理由は主に2つだ。1つはお前の実力が俺たちよりはるかに劣っているからだ。レンヤ、お前の今のレベルはなんだ」
「32だけど、普通の冒険者より高いじゃないか!」
そう俺がいいかい返すと。
「普通じゃだめなんだよ。俺たちのパーティはなんてったってSランクに昇格したんだからな」
そう、今俺が所属しているパーティの魔狼の牙は、3日前にSランクパーティに昇格することになった。Sランクパーティはこの世界に数組しかなく、一人一人が小さな国1つを落とせるほどの実力があると言われている。
「それにお前のジョブは一体なんだ、言ってみろ」
「……錬金術師だ」
俺は少し言葉を詰まらせながら言った
「そう、それが一番の問題なんだよ。錬金術師この世で一番使えねぇジョブじゃねぇか。やれることと言えば、石を鉄に変化させたり、解毒したり、そんなもん魔道士にだって出来るわ。攻撃できるだけ魔道士の方がまだいいな。今までは荷物持ちとして、てめぇを使ってやってたが、これからは足でまといは要らねぇんだよ」
俺は何も言い返せなかった。こいつの言ってることは正しい。錬金術師が最弱のジョブだってことも知ってるし、できることが少ないのも知っている。だけど、今まで俺がどれだけこのパーティに尽くしてきたことか。こいつらはパーティ内の雑用を全て俺に丸投げし、パーティで使う資金の管理も全て俺がやっていた。
自分たちがミスをすれば全て俺のせいにし、機嫌が悪いと俺に当たる始末だ。正直このパーティに未練の一つもない、だがこんなにもパーティに尽くしてきた俺にそんな言い方ないと思う。
「わかった、そこまで言うなら俺はパーティを抜ける。最後に確認だ、本当にパーティから抜けていいんだな?」
「抜けてもいいって言ってんだろ!目障りだ、さっさと消えろ雑魚野郎!」
「そうか、わかった。じゃあ俺が今までお前らにやった武器や防具を返してくれ」
「武器や防具を返せだぁ?別に構わねぇが、そもそも錬金術師のお前に武器や防具は必要ねぇと思うがな。そもそもSランクになった俺たちならもっといい物が手に入るしな」
クリードはそう言うと俺に向かって武器や防具一式を渡してきた。
「マリル、お前の腕輪も俺がやったものだ返してくれ」
「何よ!そんなにこんなゴミクズに愛着があったの?仲間のよしみでで付けてあげてたけど、前々から美しい私には似合わないと思ってたのよ!こんなゴミ返すわよ!」
俺は自身の作った物を馬鹿にされてイラついたが、これで最後と思い我慢することにした。
「装備は返したんだ、とっとと俺たちの前から消えやがれ、ゴミ野郎」
「あぁ、世話になったな」
俺は足早にその場を去った。
「追放されたけど、これからどうしよう。まずは食い扶持を探さねぇといけないな。とにかく今日は寝るか」
次の日…扉から差し込む陽の光で俺は目を覚ました
「……もう朝か。今日はギルドにでも行って仕事を探さないとな」
俺はさっさと準備をし、ギルドに向かった。
「おはようございます、レンヤさん。聞きましたよ、レンヤさん昨日、パーティを追放させられたらしいじゃないですか」
心配した表情で、ギルドの受付嬢が俺に言い放つ。
「おはようマリンちゃん。なんで知ってるの?俺がパーティから追放されたの広がるの早くね?」
「朝からその話でもちきりですよ。ところで、今日はどうしたんですか?」
「そうだった。なんか手頃な仕事ないかな。出来れば楽で一気に儲かるやつ」
「カジノだったらこの街にはないですよ?」
「いや、真面目な話。本当にお金がないんだよ。だから討伐系の仕事がいいんだけど」
俺は受付嬢に自分の財布を見せながら言った
「本当に無一文なんですね。しょうがないですね〜、他でもないレンヤさんの頼みです。レンヤさんならギルマスも目を瞑ってくれるでしょう」
するとマリンは受付台の下から紙を取り出した
「この依頼なんですけど、あまりにも危険すぎるので表に出せないんですよ。その分成功報酬はなんと10万ゴールド!」
「10万ゴールド、そんなに高い依頼があるのか⁉︎ 10万って言ったら一等地に家が建つぞ!」
俺は驚きながら、依頼書を確認をした。
「間違いない、確かに10万ゴールドだ。一体どんなバケモンを倒せばいいんだ…」
俺は依頼書を確認し、再度驚愕した。
「おいおい、まじかよ。ドラゴン退治って、この街の近くになんでそんな大物がいるんだ…」
ドラゴンはたった1匹で大国の軍隊を全滅させるほどの強さで、さらにドラゴンは頭もよく、人の多い場所には滅多に現れない。
「ドラゴン退治か、相手にとって不足なしだな。それじゃあ、この依頼俺が受けるよ」
「了解しました。ご武運を」
「ああ」
俺は1度宿に戻り、準備をしてからドラゴン退治に向かった。
「ここら辺か、ドラゴンが出没するって言う場所は。さぁ、早く出てこい」
俺がそう探していると、森の奥から聞き覚えのある声が聞こえて来た。
「なんで、今まではもっと強い威力で出てたはずの技が出ないんだよ!マリル、早く俺に援助魔法を!」
「分かってるわよ!なんでこんなに魔力を練るのに時間がかかるのよ!いつもならもうできてるはずでしょ⁈」
やはりそこには、昨日俺をパーティから追い出した魔狼の牙の2人がいた。見る限り随分とドラゴンに押されているらしい。
「クソ…!今日は調子が悪いみたいだから見逃してやる!今度あった時は覚えていろ!」
そう言うとクリードとマリルは逃げていった。
「逃げたか。敵に背を見せるとはな」
すると、ドラゴンは2人に向かってブレスを出そうとしていた。
「おっと、あいつらに生きて欲しい訳じゃないけど、ここで死なれたら夢見が悪いからやめて貰うよ」
俺はドラゴンに向かって錬金術を繰り出す。
「"属性変化・水"」
ドラゴンの放とうとしていたブレスが瞬く間に水に代わり、ドラゴンはブレスを吐くことが出来なかった。
「久しぶりの実戦だ、魔狼にいた頃はまともに戦ってこなかったからな。来いよトカゲ野郎、軽く捻ってやる」
ドラゴンは天高くに飛び上がり、俺に向かって炎の玉を放ってきた。
「空に逃げればいいと思ったのか?」
(地面よ伸びろ)
すると、たちまち俺のいる地面がせり上がり、全ての炎の玉を避けてドラゴンの元に伸びて行った
「どうだ、これが錬金術師の戦い方だ。この世にある生物以外の全てが俺の武器だ」
再びドラゴンはブレスを放とうとしてきた。
「何度やっても無駄だ。"属性変化・空気"」
今度はブレスが空気に変わった。
「俺の属性変化は、あらゆる物の属性を別の属性に変えることができる。火を水や空気に変えることもできるし、こんなこともできる」
俺は、昨日クリードから返してもらった剣を手に取り構えた。すると、剣の形状が代わり、洋刀だったものが日本刀に似た形状に変わった。
「ドラゴン1つ教えてやる。俺は今まで本当の実力を隠していた。それはあの2人に実力を合わせるためだ。本当の俺の実力を知るのはギルマスと受付嬢のマリンぐらいだ。見せてやるよ俺の本気」
("剣神流"一の太刀・鱗削ぎ)
その瞬間、ドラゴンの翼から血が吹き出し、そのまま地上に落ちていった。
「俺の作ったオリハルコン製の魔法剣の切れ味はどうだ?」
俺は地上に降り、ドラゴンの様子を見に行った。
「死んだのか?このドラゴン」
「まだ死んでないわい」
俺の脳内に直接声が届いて来た。これがある一定の種族の持つ"念話"ってやつか。
「主の太刀筋、どこか懐かしいものを感じた」
「びっくりした、急に話し出すじゃんこのドラゴン。懐かしいものを感じたって、俺の使う剣神流は元々、異族と戦うために作られたもんだから、それで何年か前にくらったんじゃないのか?」
俺はドラゴンに問いかける
「そうかもしれん。300年近く寝ておったから、そこんところはよう覚えとらんの。時に主、名をなんと申すのだ」
ドラゴンは俺に興味が湧いたのかグイグイと聞いてくる。
「俺の名前かレンヤだ。ジョブは錬金術師、最近パーティを追い出されたからソロ冒険者だ」
「そうか、ソロでやっとるのか。ならちょうどよい、私を主の旅に同行させい!」
ドラゴンは俺にキラキラした目で言ってきた
「同行させいって言ったってお前ドラゴンだろ?冒険者は人間とか人型の異族しかなれないぞ」
「それは大丈夫じゃ。なぜなら、大抵のドラゴンは人に化けるための魔法を持っとるからの。見ておれ」
そう言うとドラゴンは光出した。そしてその光が消えると、そこにはドラゴンの姿はなく、素っ裸の白髪の女が立っていた。
「これでどうじゃ。どこからどう見ても見目麗しい、人のおなごにしか見えんじゃろ?」
俺は唖然とした。その姿はまさに人間そのもの、そして容姿に関してはとても美しく整った顔立ちをしている。
「ドラゴンってすごい魔法持ってるんだな」
「これでわしも冒険者になれるであろう?さっさと案内しろ、そしてわしを主の旅に連れて行け」
「わかった、別に形が人間ならそれでいい。だが、まずは服を着ろ。目のやり場に困る」
俺はそいつに自分の予備の服を差し出した。
「そういえば、まだお前の名前を聞いてなかったな。名前なんて言うんだ?」
「わしの名前か。わしは"火炎龍"リンスと言う。よろしくの」
「火炎龍って、昔話に出てくるドラゴンの名前と一緒だけど、まさかお前だったりする?」
俺は恐る恐る聞いてみる。
「人間の昔話などわしは知らんが、火炎龍なんぞ名乗るのはわしだけじゃろうな」
リンスはどこか誇らしげに言う。
「じゃあ、ほとんど確定じゃないか。まさか昔話に出でくるドラゴンと戦って、勝っちまうとは思わなかった」
「勝ったじゃと?あれはわざと負けてやったんじゃ」
「負け惜しみはいいから、さっさとギルドに行くぞ。お前の冒険者試験もあるんだからな」
「うむ、さっさと冒険者とやらになって主と旅するのが楽しみじゃ」
俺の奇妙奇天烈な人生の旅は、このドラゴンとの出会いで大きく変わることになるとは、この時の俺はまだ知る由もない。
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