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2、陰陽師VS人喰い鬼

 製薬(せいやく)会社(がいしゃ)薬師寺(やくしじ)製薬(せいやく)は明治創業の業界大手である。ただ近年は薬害で訴訟を起こされたりと黒い噂が絶えない。


「ここ、何か出そうよね」


 茜が康彦に体を密着させる。すでに空は夕焼けに染まっていた。


()(づき)神社(じんじゃ)の林の近くで巫女さんが骨を見つけたんですって。怖っ」


 すでに何人もの人骨が島の各地で見つかっている。皆、若い男だ。


 若い男を喰う妖怪。そんな妖怪など康彦は見たことがない。


「薬師寺さん、式神は使える?」


「使えないわよ。まだ入学したばっかりだし」


 そう言いながら(じゅ)()を取り出す薬師寺茜。


「呪符なら使えるんですけどォ」


 少し得意げに言う茜に康彦は笑みを見せる。正直、戦力としては期待していない。康彦は平安朝でも最強と(うた)われたトップクラスの陰陽師だ。それでも式神を得たことはない。この現代世界でも藤原氏の子孫は数多くいる。康彦を罠に嵌めた連中に平安朝の陰陽師が転生していると悟られてはならない。あくまで、学校に入学してから、頭角を現したことにしなければ。


「ギギ。ニンゲンイタ」


 コンクリートに舗装(ほそう)された道にひょっこりと小鬼が現れた。


 小鬼がぽいっとカードを投げる。


「薬師寺さん、下がって」


 康彦は薬師寺茜の前に立った。茜では負ける。康彦はそう思った。小鬼が投げたカードを拾って見る。


「!? これは……!」


 それは学生手帳だった。薬師寺茜の物だ。ということは背後にいるのは……。


「本物はもう殺した」


 耳元で薬師寺茜に化けていた鬼が(ささや)いた。








 薬師寺茜は頭に角を生やしていた。そして獰猛な笑みを浮かべる。


「お前が偽物だと言うことには気づいていた」


「ふーん、じゃ、何でのこのこと来たわけぇ?」


「女の牛鬼が珍しくてな。どうだ。俺の式神にならないか」


 牛鬼。高ランクの妖怪である。基本的には男だが、中には女の牛鬼も存在するとされる。


「寝言は寝ていいなさいよっ」


 牛鬼が棍棒を振り上げる。康彦はさっと身をかわした。


「ちっ、ボンボンのくせにすばしっこいっ」


 牛鬼が舌打ちをする。


「何を勘違いしている。罠にかかったのはお前の方だ」


「何ィっ」


 パァン。牛鬼の側を通り抜ける。矢だ。


「康彦君、助けに来たわよ」


 巫女(みこ)装束(しょうぞく)の肌の白い少女が(りん)とした声で言った。宇月神社の神主の長女・芦原千(あしはらち)()。長い黒髪を持つ美少女は康彦の幼馴染でもあり、その正体は(しろ)(へび)でもある。その弓矢の攻撃力は(すさ)まじいものがあった。


 (ぎゅう)()は悟る。この女の呪力には勝てない、と。


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