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そもそも論



「で、どうだったの? 子どもたちの印象は、良かったんでしょう?」


姉ライラがクラーラに尋ねた。


「ええ。ヴィヴィちゃんは無邪気で可愛くて、レイくんはクールだけど可愛くて……」


「クラーラが、男の子を可愛いって褒めるなんて驚いたわ。クラーラも成長したのねぇ」


姉のしみじみした様子に、


「そうなの。男の子の全部が全部、野蛮で意地悪じゃないって知ってるはずなのに、子ども時代のそういう男の子たちのイメージが強くて。嫌な思いをしたのがトラウマになってたみたい」


クラーラはそう答えた。


「偉いわ、クラーラ。そうやって自己を見つめ直すって良いことだわ。ライオン伯爵家といい感じなのね。婚約するの? 正式に申し込まれたんでしょう?」


「申し込まれた。返事の期限は今月末」


「浮かない顔ね。何が引っかかるの?」


「強いて言えば、……お姉さんかしら」


「おねえさん?」


「帰り際、訪ねてきたライオネルさんのお姉さんにばったり会ったの。私が来ていることは知らなくて、たまたま来た様子だったけれど」


「その人が嫌な感じだったわけね?」


「そうね……好意的ではなかったわ。『あら、子供が1人増えたのかと思ったわ』『さすがに若すぎるんじゃない』って、私をジロジロ見て。ニコニコ笑ってたけど。『まあ全然違うタイプの方が、吹っ切れるわよね』ってのは多分、前の奥様のことだと思うわ」


「ライオン伯爵の反応は?」


「余計なこと言うなって、自分の家に入らせてたわ。聞けば、月に2度ほど甥姪に会いに来るらしいの。自分の一人息子は外国留学しているとかで」


「へえ、なんだか厄介ね」


「でしょ」


「ライオン伯爵のご両親もよく来られるのかしら?」


「さぁ。領地の郊外でご隠居生活を送られてるって聞いたけど、まだお会いしたことがないし……」


正式に婚約すれば紹介されるのだろうが、色々考え出すとますます億劫になった。


ライオネルの言うように、「ただ子どもたちと楽しく暮らしてくれれば」で本当に大丈夫なんだろうか?

ライオネルは仕事で不在のことが多いのだから、留守中は妻が主人の代わりに、親戚や客人の対応をしなくちゃいけないんじゃ?


手慣れた使用人たちがある程度の事はしてくれるだろうが、肝心なことは妻ができなくては困る。

「やっぱり子供が1人増えただけだったわね」と小姑に嫌味を言われる未来が見えるようだ。


「あ〜〜、やっぱり私に結婚なんて無理だわ。ライオネルさんちがどうこう以前に、何もかもが不安だもの。不安しかないわ。ライラはチャーリーとの結婚を決めたとき、不安はなかったの?」


「う〜ん、なかったわね! ワクワクしかなかったわ。この先、ずっとチャーリーと共に生きていけるんだって思ったら、幸せで幸せで。大好きなチャーリーのあの笑顔は私がずっと守って行くんだって、意気揚々としたわね」


「はあ〜〜、ライラらしい。ライラのその強さ、眩しすぎて死にそう。相変わらずチャーリー大好きで羨ましいわ」


そうか、姉のブレない強さは、つまるところチャーリー愛から来ているのだとクラーラは思った。

クラーラがライオネルのことを愛していたなら、不安よりも幸せな気持ちが勝るのだろう。


ちょっと厄介そうな小姑のこともまだ見ぬ義両親のことも、なんとかなると楽観的に思えるのだろう。

恋に浮かれる気持ちもなく、ライオネルとの信頼関係もまだ紡ぎ始めたばかりのクラーラには、心配しかなかった。


「ねえ、別にそんなに無理して、慌てて結婚相手を決めなくていいんじゃない? クラーラはまだ若いんだし」


ライラが言った。


「えっ、でもお父さまに命じられたもの。急いで婚約者を決めるようにって。若いうちじゃないと、私は行き遅れるって。いつまでも実家にいたんじゃ、ライラの将来にも関わるから」


「なぁにそれ、私はむしろクラーラがずっといてくれたら嬉しいわよ。お父さまったら、私のいないときに勝手にそんなことを言って、勝手なことを決めて」


ライラは憤慨した。


「いいわ、クラーラ。お父さまには私から言っておくから。クラーラはもっとゆっくり考えればいいのよ、今はとりあえず学業に専念すべきよ」


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