表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/37

リヴィングストン家の兄妹

そして遂に、――ライオネル・シオドア・リヴィングストン伯爵の自宅へ訪れる日がやってきた。

リヴィングストン家から迎えが来て、クラーラは侍女を伴って馬車に乗りこんだ。

ライオネルの希望で、今回はクラーラの母親は同伴しなかった。


リヴィングストン領には初めて来たが、のどかだが街は栄えていて、大都会ではないが田舎すぎない、程よい地方都市という感じだ。


領主であるライオネルの邸宅は、豊かな緑に囲まれていて、とにかく敷地が広かった。

聞けば、敷地内に野菜畑やフルーツ園があるそうだ。


「名産品の農作物を、ライオネル様も作っておられるのです。より良いものに改良するために、農家と共に研究していらっしゃいます」


案内人は続けて、


「もぎたての桃や梨は特別美味ですよ」と得意げに言い、クラーラの関心はさらに高まった。


自分でもいだ桃や梨にかぶりついてみたい。

それがライオネルの子どもたちと一緒なら、和気あいあいとして、いかにも平和な家族だ。


あり得る?

あり得ない?


それは、ほぼお互いの第一印象で決まるだろうとクラーラは思った。


なんだかんだ言っても、結局人と人の相性というものは、最初に感じた直感が正しい気がするのだ。

だからこそ、初対面は緊張する。

伯爵とは2度目の対面だが、それでも緊張する。


「ようこそ、はるばるよくお越しくださいました」


一月半ぶりに会ったライオネルは、大きな体格ものっそりした雰囲気も、下がり太眉と優しげな垂れ目も変わっていなかったが、大きく印象が変化していた。


「……あっ、髭」


気づいて、思わず声に出してしまった。

ライオネルは両手で頬を包んで、照れくさそうに言った。


「そうなんです、数年ぶりに剃りました。伸ばし放しにしていたら剃れなくなってしまってたんですが、これを機に剃ったほうがいいと息子に言われまして」


「そうなんですか、……あっ、ご、ご挨拶も申し上げず、すみません。この度はお招きいだき、ありがとうございます」


「いえいえ。堅苦しいのは抜きで、どうか気楽に。子どもたちを紹介しますね、どうぞこちらへ」


案内された先には、ご令息とご令嬢がいた。

それぞれ名乗って、貴族式の挨拶のポーズを取った。


もうすぐ8歳になるご令息の名前はレイモンドで、5歳になったばかりのご令嬢の名前はヴィヴィアン。

ヴィヴィアンは金茶色の巻き毛に薄茶色の瞳、下がり太眉に少し垂れ目で、ライオネルによく似ている。


レイモンドは2人に似ておらず、黒髪黒目でキリッとした顔つきだ。

多分母親似なのだろう。


挨拶が済むと、4人でお茶をしながら談笑した。

緊張しているクラーラにライオネルが上手く話を振り、子どもたちとの会話を取り持った。


「そうだ、レイ。ヴィヴィと2人で、クラーラさんに子ども部屋をご案内して。ヴィヴィ、さっき言ってたお人形遊び、クラーラさんに見せてあげてよ」


うんっとヴィヴィアンが元気よく返事して席を立ち、クラーラの手を取った。


「見せてあげる! 行こ」


ぴんと立って、クラーラを見上げる、イキイキとした瞳。全身で「嬉しい!」を伝える子犬のようだ。

か、可愛いとクラーラは思った。


兄のレイモンドはさっさと先に歩き出している。

ヴィヴィアンは無邪気で人懐こいが、レイモンドは無口で淡々としている。


やっぱり男の子は苦手だわ、とクラーラは思った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ